蔵書印と書き込み

最近は,いちいち購入した本に蔵書印を押したり,識語を書き込むという人は少ないと思いますが,古書店で古い文庫本を探していると,蔵書印が押されていたり,書き込みのある本によく出会います。いまは本があふれかえってしまったためか,一冊一冊の文庫本を自分の精神的な財産,糧として愛着を感じ,蔵書印を押したり,感…

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単行本はどこに?

書店で,ある作家の小説やエッセイを探すときに,あなたはまず単行本の書棚へ行きますか,それとも文庫本の書棚へ行きますか? 私の場合,明らかに出たばかりの新刊書とわかる場合を除いて,文庫本の方へ行きます。最近のように,単行本から文庫化される時期が早くなると,単行本をレジへ持っていく途中で,念のため……

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発売禁止ならびに削除処分となった岩波文庫一覧

戦前に刊行された岩波文庫の中で,当局により発売禁止,または削除等の処分を受けた書目一覧 「資本論」は岩波が自主的に絶版としたため,ここには無い。 著者書目処分年処分内容 アルツイバーシェフサーニン 上下昭和4年発売禁止 ジイドソヴェト旅行記昭和12年一部削除 田山花袋蒲団・一兵卒昭和13年一部削除 …

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文庫本の定義

ある本を「文庫本」と呼ぶとき,それは内容を示す場合と,判型を示す場合の2通りがある。 わざわざ内容というのは,流行作品の大量販売を目的とした米国のペーパーバックスと異なり,我が国の文庫本が古典的作品の廉価版という特殊な事情から発生したためで,文庫本は単なる安物ではなく,”優れた作品”をいつでも手に入…

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岩波書店略史

岩波書店は,1913年(大正2年),岩波茂雄によって創業された。この岩波文庫の生みの親,岩波茂雄のプロフィールと岩波書店の歩みをまとめてみた。 岩波茂雄は1881年(明治14年),長野県諏訪郡中州村の農家に生まれた。早くに父を亡くした茂雄は,98年,東京遊学の念に燃えて,杉浦重剛日本中学校校長に手紙…

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岩波書店の著者検印

(1998/5/2) 本の奥付に押された著者検印。著者や書店が,”この本の中身は保証しますよ!”といった感じで,本好きにとっては好ましいものだったのですが,最近めったに見かけなくなりました。 そもそもこの検印とは,著者が発行部数を確認するために押す印のことで,ふつうは奥付に,版権所有の文字とともに…

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岩波文庫の書店カバー

文庫本を買ったときに,書店でかけてくれるカバーには,いろいろユニークなものがあり,これを書皮と称してコレクションしている人もいます(書皮友好協会)。 凝ったデザインや,有名人の手になるものなど,数多あるカバーの中に,実は岩波文庫・新書専用のカバーもあります。といっても,岩波文庫・新書だけサイズが違う…

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岩波文庫の小冊子

岩波書店では,ときどき岩波文庫を読むためのガイドとなるような小冊子を作っています。体裁は岩波文庫と同じで非売品。書店でご自由にお取り下さい,というもので,編集部が独自に作ったお薦め文庫リスト(とくに青少年向きが多い)であったり,著名人が私の好きな文庫を紹介したりするものです。(写真は現在店頭で配ら…

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岩波文庫の特装本

岩波文庫の特装本としては,大きい活字の「ワイド版岩波文庫」が出ているが,これはB6判の市販品。それ以外にも特殊な特装本が数種出ていたことがわかっている。 まず,訳者自家用版。本文は通常の文庫本と同じで,本の大きさが天地左右とも文庫本より5mm程度大きい。未断裁で,表紙に模様はなく,白い紙装。通常の奥…

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岩波文庫の装幀

岩波文庫の装幀….といわれて,茶色の地に唐草模様のあの表紙を思い浮かべる人は,残念ながら,かなり古いタイプの読書人になってしまいました。 岩波が薄いパラフィン紙から今のビニール引きのカバーに変えて,すでに10年以上が経過したので,かつて書店の文庫棚が茶色一色だった頃を,知らない人もいることでしょ…

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岩波文庫の赤帯を読む

門谷建蔵著「岩波文庫の赤帯を読む」は,とてもユニークな本だ。著者自身「赤帯限定読書マラソンのような」というように,岩波文庫の「赤帯」(外国文学)を900冊ほど読み,各々に短いコメントを付けたもの。 普通の書評本と違い,購入書店や価格の記録(多くは一般の古本屋で購入)を詳しく記す一方,コメントの方はか…

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岩波文庫の黄帯と緑帯を読む

「岩波文庫の赤帯を読む」に続いて,同じ著者(門谷建蔵)による「黄帯と緑帯を読む」が出た。 今回は,日本文学を中心に,前書で漏れた赤帯も少し拾いながら,類書をまとめつつ,コメントしているのだが,各々の作品の解説ばかりでなく,作家別・年代別に岩波文庫への収録点数をしらべ,各作家の岩波文庫への貢献度をラン…

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岩波文庫1997年の販売成績

「図書」4月号によると,昨年(1997年)の岩波文庫売り上げ好調書目は次の通りでした。相変わらず日本思想がよく売れていて,とくに話題書が無かった赤帯(外国文学)はランク入りしませんでした。 ●1997年岩波文庫売り上げベストテン 1武士道 2代表的日本人 3君たちはどう生きるか 4忘れられた日本人 …

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著者番号Nの登場

岩波文庫3月の新刊をご覧になった方はお気づきの通り,ついにフランス文学(赤帯500番台)の著者番号がフラピエ「女生徒」(赤599-1)で満席となり,新著者番号N501が登場した。 栄えあるN一番乗りは「フランス名詩選」….というのではちょっと盛り上がらないが,とにかく現在の著者番号制をとるように…

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文庫における"古典"

岩波文庫の収録書目選定においては,「読書子に寄す」にもある万人が必読すべき真に古典的価値ある書ということが一つの基準になっているのは確かでしょう。 この古典的という言葉については,いろいろ解釈できるでしょうが,現在の岩波文庫には,第2次世界大戦後の作品も含まれているので(たとえば野間宏),必ずしもc…

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岩波文庫の同名異作

同名異作……同じタイトルで著者の違う作品を収めた岩波文庫はいくつあるでしょうか。ふだん解説目録を眺めている人にはやさしい問題かもしれません。 岩波文庫の場合,基本的には紛らわしい同じタイトルの本を出さないようにしているとは思うのですが,どうしても同じタイトルになる場合,著者名を上につけたり,…

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出版物における文庫本の位置

文庫本が書籍や雑誌など書店で販売されている出版物中に占める位置は,どうなっているのか。日販の出版物分類別売上一覧を見ながら考えてみよう。 この資料によると,文庫本の売上高は全出版物中8%ほどにすぎない。これは一般の文芸書の割合とほぼ同じであるが,書店において点数で勝る文庫本の売上が低いのは,もちろん…

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