ヘンリー・ジェイムズ「アスパンの恋文」

ヘンリー・ジェイムズとヘンリー・ミラーは別段関係ないのだが,なんとなく似たもの同士と思ってしまうのはジェイムズに「デイジー・ミラー」という小説があるせいかもしれない。 それはともかく,200編に及ぶというジェイムズの作品の中で,「デイジー・ミラー」と「ねじの回転」,「ある婦人の肖像」程度しかわが国で…

続きを読む

永井荷風の墨東綺譚

物語-取材のために訪れた向島は玉の井の私娼窟で小説家大江匡はお雪という女に出会い,やがて足繁く通うようになる。物語はこうして墨東陋巷を舞台につゆ明けから秋の彼岸までの季節の移り変りとともに美しくも,哀しく展開してゆく。昭和12年,荷風58歳の作。木村荘八の挿絵が興趣をそえる。 永井荷風,本名壮吉。別…

続きを読む

1998年4月

4月30日 アスキー西社長の退陣は,やはり意外なことなのでしょうか? 毎週読んでいた週刊アスキーのデジタル日記にも景気の良い話はなかったように思うけれど。どちらにしてもアスキーやハドソンはマイコン学生にとって親しみのある名前だったのですから,残念なこと。CSKは大企業かもしれませんが,一般人にとって…

続きを読む

フレア文庫

中学生たちにもう一度,本を読む喜びを知ってほしいー。子供の読書離れが言われる中で,東京の小出版社「フレア」が埋もれた内外の少年少女文学名作の文庫化を始めた。昨年12月に川端康成の作品など4点を出版,9月には第二弾としてロシアの作品など2点を刊行する。 「最近の中学生は,いじめとか,孤独とか,厳しい…

続きを読む

岩波文庫の赤帯を読む

門谷建蔵著「岩波文庫の赤帯を読む」は,とてもユニークな本だ。著者自身「赤帯限定読書マラソンのような」というように,岩波文庫の「赤帯」(外国文学)を900冊ほど読み,各々に短いコメントを付けたもの。 普通の書評本と違い,購入書店や価格の記録(多くは一般の古本屋で購入)を詳しく記す一方,コメントの方はか…

続きを読む

岩波文庫の黄帯と緑帯を読む

「岩波文庫の赤帯を読む」に続いて,同じ著者(門谷建蔵)による「黄帯と緑帯を読む」が出た。 今回は,日本文学を中心に,前書で漏れた赤帯も少し拾いながら,類書をまとめつつ,コメントしているのだが,各々の作品の解説ばかりでなく,作家別・年代別に岩波文庫への収録点数をしらべ,各作家の岩波文庫への貢献度をラン…

続きを読む

角川文庫

 1949年(昭和24年)5月創刊。もっとも最初はB6判という「リーダース・ダイジェスト」と同じヘンな判型で,これをやめて現在のA6の文庫判型で刊行しはじめたのは1950年5月から。  創業者の角川源義は元中学校教諭で,柳田國男,折口信夫の薫陶を受けた国文学者兼俳人。そういう人の出した文庫だから,初…

続きを読む

1998年3月

3月31日 「図書」掲載の千野栄一氏”人はどうやって蔵書を整理するか”によると,かの作家カレル・チャペックは,きちんと整理された書斎をもっていて,「私には物を探すという贅沢な時間はない」と言ったとか。贅沢と縁がないことでは自信がある私も,本だけではなく,整理されていないパソコン内のファイルやブックマ…

続きを読む

オデュッセウスの世界

「邪馬台国」ファンというのは多いようで,遺跡の新発見などがあるたびに,町が観光地化するほどのにぎわいをみせるようですが,身近とは言えない西洋の古代史についても,たとえばシュリーマンの「古代への情熱」などを子供の頃に読み,古代ギリシャへのあこがれを抱いた方も多いのではないでしょうか。 しかしながら,岩…

続きを読む

尼僧ヨアンナ

物語・・・・修道院に悪魔祓いのために派遣されるスーリン神父は,その途中の宿屋で,怪しい噂を耳にする。修道女たちに悪魔が憑き,みな裸で踊り回るなど狂乱状態だ。とくに尼僧長のヨアンナには,いくつもの悪魔が住み着き,どんな悪魔祓いの儀式も功を奏さない。神父の前任者も,このヨアンナの妖気に惑わされ,狂い死…

続きを読む

アランの"幸福論"

世の中,気が利かない人間というのがいる。まわりの人間にとっては,なにかと癪のたねかもしれないが,本人はいたって暢気なものである。 気が利かない人間には,べつにいい加減にやろう,狡賢くいこう,意地悪しよう,などという考えはなく,おそらく一つのことに熱中したり,物事を深刻に考える習慣がないゆえに,気配り…

続きを読む

旧掲示板4

文庫本大好き-掲示板No.4 黒い樽 – 98/02/17 05:44:54 電子メールアドレス:z931051@info.uoeh-u.ac.jp コメント: 本の旅人(角川書店)2月号によると、角川文庫50周年で今秋に海外エンターテインメントの復刊フェアを行うそうです。4月末までアンケートを行っ…

続きを読む