10月の新刊

岩波文庫10月の新刊(10/16発売)
■愛と認識との出発(倉田百三)
■アシェンデン(モーム)
■共同存在の現象学(レーヴィット)
■桜の森の満開の下・白痴 他12篇(坂口安吾)
「愛と認識との出発」は、30年も前に角川文庫版で読んだ懐かしい本。当時、なぜか「これを読め!」と父が買ってくれた。高校生の息子に何が言いたかったのか、いまだによくわからないのだが(単に青年向け必読書として有名だから…というだけだったかも)、本書は立派な中年男となった今の私にとって、ますます難解な書と感じられる。
『私は純潔なる青年に、何よりもこの問題に対して重々しい感情を保たんことを勧めたい。女に対して早くよりずるくなることを警めたい。かの「青い花」を探し求めたハインリッヒのごとくに「永遠の女性」を地上くまなく、いな天上にまでも探し求めることをすすめたい。しこうして「いつまでも愛します」と誓わずに、「いつまでも愛せしめたまえ」と祈り、他人を傷つけずみずからを損わず、肉体の交わりなき聖い聖い恋をしてもらいたい。一度純潔を失いたる青年は、そを惜しみ、恥じ、悔い、その償いに用意したる心をもって女に対すべきである。しこうして夫婦はできるかぎりの貞潔を保たんことを努力すべきである。もしそれいかにしても遊蕩の制し得られざるときは、せめてそのことを常に恥じつつなしたい。みずからを悪人と認め、そを神に謝しつつも、なお引きずられるように煩悩の林に遊ぶ人と、それを当然のことと思って淫蕩する人とは雲泥の差がある。それはじつに親鸞と、ただの遊冶郎との差異である。浄土に摂らるるものと、地獄に堕さるるものとの差異である。』 いや、難解になったのではなく、煩悩に溺れすぎた遊冶郎になっただけかも知れぬ。
それにしても、青森の夜は静かすぎる・・・

コメント

  1. 角川文庫は映画の原作、若い人向けの作品といったイメージが強かったですが、かつては色々な文学作品が収録されていましたね。まだ私は生まれていないころでしたが、そんなときの作品が他社から出ると、作品が埋もれなくて良かったと思いますね。

  2. 角川文庫が方向転換したのは、映画とタイアップして大々的に横溝正史などを出してきてからですね。結局他社も追従して、いまの文庫界ができた感じです。それは構わないのですが、それでもともと文庫本に期待されるスタンダードな作品の安定供給という道が外されてしまったのが問題でしょうね。

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