恋愛指南(オウィディウス)

恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫 赤 120-3)岩波文庫の新刊「恋愛指南 アルス・アマトリア」(オウィディウス,沓掛良彦訳)を読みました。
岩波文庫ファンには「変身物語」で知られているオウィディウスは,紀元前43年,中部イタリアの騎士階級に生まれ,法廷弁論家となるべくローマへ出たがかなわず,文学へ身を投じ,有力貴族の庇護を得て当代一の人気詩人に。しかし,「愛の詩人」として評価が高まるも,40歳の頃に書いた本書などが原因で,皇帝アウグスティヌスより風紀紊乱の廉で国外追放処分となり,僻遠の地で生涯を閉じました。「航海術や馬術のごとく愛にもまた技術がある」と説く本書は,愛の名著の一方で背徳の書とみなされたわけですね。
実際に読んでみると,教訓的な話,詩的な話ばかりでなく,具体的な身だしなみや魅力的に見えるポーズまで,事細かに説明していて面白い。まあ,2000年前から男の考えそうなことは変わっていないと言えるし,男と女の関係も変わらないのでしょう。いつの時代も官能に引き寄せられて,結局手玉に取られるのは男なのですから。
なお,本書には先訳として樋口勝彦訳 「恋の技法」(平凡社ライブラリー,1995),藤井昇訳「恋の手ほどき」(角川文庫,1971) があります。