生命とは何か(シュレーディンガー)

岩波文庫に収録された「生命とは何か」(シュレーディンガー)は,ながらく岩波新書青版として親しまれてきたもの。文庫化されるにあたり,訳者の一人鎮目恭夫氏によるあとがきが追加されました。このあとがきはちょっと風変わりなものであり,新書版を持っている方も,書店でめくってみて下さい。
私は本書を学生時代に新書で読み,今回あらためて新鮮な気持ちで再読したわけですが,中学生,高校生でも,シュレーディンガーの提起する問題には興味をもてるでしょうし,多くの物理学者,生物学者が本書に触発されて研究者の道を選んだという話を聞けば,若い人にこそ薦めたい本ということになりますね。もちろん,私のような物理や生物に縁のない頭のかたい中年男でも読み通せます。
シュレーディンガーは初めに,原子はなぜ小さいのか,逆に言えば我々生物がなぜ原子に比べてこんなに大きくなければならないのか,と問います。そして一方では,遺伝物質は極小で原子自体の激しい運動を無視できないと思えるのに,実際にはその形質を受け継いでいくだけの永続性を持っているのはなぜか。エントロピーが増大しつづけると死に至る。だから生物は生命を維持するために「負のエントロピー」を食べている。負のエントロピーとは何か? 次々と新しい世界が開けていきます。
おそらく本書は読みやすさの奥に,深い謎を潜めているのでしょう。専門家以外そこまで踏み込めないとしても,生命の謎に関心がある人にとっては手に取るべき本だと思います。

コメント

  1. はじめまして。いつも拝見しています。私も岩波文庫を中心に文庫本を集めていますが、最近読むほうに時間を取らず、ただ毎月の新刊を購入するだけとなってしまっています。きちんと読まれているのは尊敬します。
    ところで、今年の2月22日の朝日新聞に「解説付け忘れ発売延期 松田道雄『育児の百科』 岩波」という記事がありました(URLにリンクを貼りました)が、その後発売される気配ありませんねぇ。どうなったんでしょうか・・・

  2. そうなんです まだ出る気配がありません。前日に気がついて・・・なんてどうも胡散臭いですね。

コメントは受け付けていません。