近代日本文学案内(十川信介)

近代日本文学案内 (岩波文庫 別冊 19)岩波文庫の新刊「近代日本文学案内」(十川信介)を読む。
そもそも,岩波文庫の別冊は,岩波文庫を読む上での分野別・テーマ別のガイドブック,アンソロジーまたはデータベースだったはずだが,本書は複数の著者による寄せ集めのガイドブックではなく,一つの作品,平易な研究書といえるので,単なるガイドブックだと思ってスルーされてしまったとしたら,残念。
近代文学作品を年代をおって一つの流れとして解説するのではなく,立身出世の欲望,別世界(他界・異界)の願望,交通機関・通信手段との関わり,という3つのテーマに沿ってまとめた本書は,著者が一種の旅案内というように,視点がなかなかユニークで,読み物として楽しめる。
十川先生は,1936年生まれの学習院大学名誉教授だが,学習院の学生によると,「明治・大正などの近代文学について説明してくれる授業だが,先生の話が脱線しやすく,また板書もしないため,ノートを取るのさえ難しい」とのこと。