フレップ・トリップ (北原白秋)

フレップ・トリップ (岩波文庫 緑 48-7)大正末期,白秋は横浜から船出し,津軽海峡,小樽を経て,樺太横断の旅に出た。そのときの紀行文が岩波文庫の「フレップ・トリップ」(北原白秋)。フレップ・トリップとは,赤い実と黒い実を意味するという。
もっぱらオンボロ自動車に乗って,危険な山道を往ったりしながらも,一読して,ずいぶん陽気な旅だなと感じる。書き出しは,「心は安く,気はかろし・・・」。もちろん,時代背景もあるだろうが,白秋自身,二人目の子供が生まれた直後で,私生活,創作活動ともに充実した時期だった。
白秋は,よく見て,飲んで,食べて,外地(植民地扱い)であった当時の樺太の人々の生活や交通事情を詳述しているのはもちろん,ところどころに詩や子供への手紙を織り込むなど,自由自在な書きっぷりで,レトロな旅気分に浸れる。最後は海豹島でのアザラシの群れを描いたハーレムの王と題する一連の詩で締めくくり。気楽に読める本として,お薦め。

コメント

コメントは受け付けていません。