もともと全集などこつこつ集める柄ではないのですが,荷風全集だけはずっと買い続けてきました。岩波文庫でも古いものがぼちぼち復刊されていますが,明治期の風俗(特に花柳界)がよく描かれているうえ,「あめりか物語」や「ふらんす物語」のような洋行ものには,往事の現地の日本人社会の様子など,興味深い記述が多く楽しめます。
荷風は出版当時,伏せ字が多かったのですが,全集などをみて,どのような場所が問題となったのかを確かめるのも,楽しみのうちです。一人暮らしの部屋で,全財産の入った鞄を脇に,うずくまるように死んでいた荷風の最期の写真は,見るたびに悲しくなります。
(写真は”あめりか物語” 昭和27年刊 臨時定価120円)
☆岩波文庫でこれまでに刊行された荷風の作品
- 地獄の花 1954
- 夢の女 1993
- あめりか物語 1952
- ふらんす物語 1952
- すみだ川/新橋夜話 他1篇 1987
- すみだ川 他3篇 1955
- 冷笑 1951
- 日和下駄 他4篇 1953
- 腕くらべ 1937/1987
- おかめ笹 1938/1987
- 雪解 他6篇 1939
- 花火/雨瀟瀟 他2篇 1956
- 雨瀟瀟/雪解 他7篇 1987
- つゆのあとさき 1954/1987
- 墨東綺譚 1947/1972/1991
- 踊子/勲章/問わずがたり 1956
- 荷風随筆集全2冊 1986
- 断腸亭日乗全2冊 1987
- 珊瑚集 仏蘭西近代抒情詩選 1938/1991