美しい夏(パヴェーゼ)

美しい夏岩波文庫の新刊,久しぶりに読んだパヴェーゼの「美しい夏」,La bella estate。題名がいいですね。美しい夏は,少年少女だけのもの。登場人物は,16歳の少女ジーニア,モデルをしている自由奔放な大人の女性アメーリア,彼女らを取り巻く画家たち。
娼婦的なイメージもあるアメーリアに,ときに反発しながらも,あこがれているジーニア。画家で軍隊に入っているグィードに恋心を抱え,大人への道を歩み出す。女性の場合は,はっきりと大人の女になった自分,というのを意識できるものなのかもしれないな。
第二次世界大戦中の殺伐とした世相を背景に,切なくほろ苦い青春の物語。この作品は1949年に発表され,すぐに大変評判となり,イタリア最高の文学賞ストレーガ賞を受賞。しかし,バヴェーゼは,その直後,「みなを許します。みなに許しを乞います。いいね?あまり騒ぎ立てないでください」との書き置きを残し,1950年に彼のアパートからほど近いトリノ駅前のホテルにて睡眠薬自殺。