5000冊に及ぶ岩波文庫の中で,最も厚い本と薄い本はなにか? これは,岩波文庫ファンならずとも,気になるところ….ではないかもしれませんが,調べてみました。
結果,厚い本は「青年の環」が圧勝! 5分冊合わせて4380ページは文字通り圧巻です。
残念ながら,書店の棚の場所ふさぎと思われたか,あっと言うまに絶版となりましたが….。
上位では「迷路」,「レ・ミゼラブル」,「ジャン・クリストフ」,「戦争と平和」など,昭和60年代に入って,長篇の合本化が急に進んでから出たものが目に付きます。
この時期には,500ページを超える分冊ものがどんどん出ましたが,これも省力化ということでしょうか? 書店にとっては省力化でも,電車読書人にとってはハンドパワーがないと持ち疲れする過酷な状況となりました。
それ以外では,膨大な解説のついたラブレーや,終戦間際・戦前最後の刊行となったファラデーが大健闘といえるでしょう。
一方,薄い本のトップは昔からよく知られている「中臣祓講義」。これぐらい薄くなると背文字が入らなくなるので,特別に厚手の表紙探してきて使ったという話もあります。それでも古い薄い本は背文字が見えないので,書棚でもすぐ行方不明に。トレーシングペーパーなどをかけて書名をハッキリ書いておく必要があります。
第2位は,何度か刊行されているマルクスの「資本論」のうち,第1巻1~5分冊までを出して途絶した河上肇訳。いろいろとトラブルのあった河上訳。岩波にとっては無念の銀メダルといえましょう。
薄い本は,厚い本と違って限度がありますから,「中臣祓講義」の記録はこの先,破られることはないでしょうね。
岩波文庫厚い本(500ページ以上) |
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野間宏 | 青年の環(3) | 920 |
野間宏 | 青年の環(1) | 916 |
野間宏 | 青年の環(2) | 856 |
野間宏 | 青年の環(4) | 848 |
野間宏 | 青年の環(5) | 840 |
野上弥生子 | 迷路(上) | 650 |
野上弥生子 | 迷路(下) | 650 |
ロマン・ローラン | ジャン・クリストフ(2) | 634 |
トルストイ | 戦争と平和(2) | 624 |
ユーゴー | レ・ミゼラブル(4) | 624 |
トルストイ | 戦争と平和(3) | 622 |
ロマン・ローラン | ジャン・クリストフ(3) | 614 |
ユーゴー | レ・ミゼラブル(2) | 612 |
クラウゼヴィッツ | 戦争論 上巻 | 610 |
クラウゼヴィッツ | 戦争論 下巻 | 610 |
ユーゴー | レ・ミゼラブル(1) | 608 |
ユーゴー | レ・ミゼラブル(3) | 598 |
トルストイ | 戦争と平和(1) | 594 |
峯岸義秋編 | 歌合集 | 566 |
石島快隆訳注 | 抱朴子 | 558 |
トルストイ | 戦争と平和(4) | 554 |
トルストイ | 戦争と平和 第1巻 | 546 |
ゲーテ | ファウスト 第2部 | 546 |
ラブレー | 第3之書パンタグリュエル物語 | 546 |
ラブレー | 第4之書パンタグリュエル物語 | 546 |
トゥキュディデーズ | 戦史(下) | 544 |
ロマン・ローラン | ジャン・クリストフ(1) | 540 |
リップス | 心理学原論 | 540 |
笹野堅校訂 | 能狂言(中) | 540 |
松尾芭蕉 | 芭蕉俳句集 | 538 |
次田香澄校訂 | 玉葉和歌集 | 538 |
マルクス | 資本論(2) | 536 |
ファラデー | 電気学実験研究(2) | 532 |
マルクス | 資本論(6) | 530 |
夏目漱石 | 文学論 | 528 |
ハリス | 日本滞在記(上巻) | 524 |
ホッブス | リヴァイアサン(3) | 522 |
マルクス | 資本論(4) | 522 |
羽仁五郎 | 明治維新史研究 | 520 |
ロマン・ローラン | ジャン・クリストフ(4) | 518 |
松枝茂夫 | 中国名詩選(下) | 518 |
ラブレー | ガルガンチュワ物語 | 516 |
小林勝人訳注 | 孟子(下) | 514 |
中原中也 | 中原中也詩集 | 510 |
アダム・スミス | 諸国民の富(3) | 510 |
ローザ・ルクセンブルグ | 経済学入門 | 510 |
シュムペーター | 理論経済学の本質と主要内容(下) | 510 |
スタンダール | 赤と黒(下巻) | 508 |
新村出校閲 | 毛吹草 | 506 |
頼山陽 | 日本外史(下) | 504 |
聖アウグスチヌス | 懺悔録 全訳 | 504 |
ホッブス | リヴァイアサン(2) | 504 |
荒畑寒村 | 寒村自伝(下) | 504 |
朝比奈宗源訳注 | 碧巌録(上) | 504 |
道元禅師 | 正法眼蔵 下巻 | 504 |
アダム・スミス | 諸国民の富(2) | 500 |
シュムペーター | 理論経済学の本質と主要内容(上) | 500 |
峯岸義秋校訂 | 六百番歌合・六百番陳状 | 500 |
岩波文庫薄い本(90ページ以下) |
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竹内式部 | 中臣祓講義 | 62 |
マルクス | 資本論(第1巻第4分冊) | 64 |
芥川龍之介 | 地獄変 | 72 |
鴨長明 | 方丈記 | 72 |
芥川龍之介 | 羅生門・鼻・芋粥 | 76 |
上田秋成 | 春雨物語 | 76 |
カント | 美と崇高との感情性に関する観察 | 82 |
小林一茶 | 父の終焉日記 | 82 |
恩田木工 | 日暮硯 | 82 |
千田憲編 | 祝詞・寿詞 | 82 |
国木田独歩 | 源をじ | 84 |
キケロ | 老境について | 86 |
ウェーバー | 職業としての学問 | 86 |
ストリンドベルク | 令嬢ユリュ | 88 |
毛沢東 | 文芸講話 | 88 |
金子大栄校訂 | 歎異抄 | 88 |