図書「9月号」が届いたのでみてみると,恒例の秋の岩波文庫復刊一覧が載っていました。
今回の復刊では,まず珍しいところで末広鉄腸の「雪中梅」。
この政治小説はなかなか古書店にも出てきませんでした。明治19年,政治家として活躍した末広鉄腸が著した,
国会開設前の政界を舞台にした恋愛もの。当時の政界の様子がよく描かれているほか,複雑なストーリー展開で,
いまなお小説として一読に値するといわれています。
ついで,瀧井孝作の「無限抱擁」。吉原の女との恋愛,結婚,
そして結核のために愛妻を奪われる不幸を描いた涙なくして読めぬ長編小説。背景はレトロながら,その純朴な愛と哀しみに心うたれます。
外国文学では,ジェフリーズの「野外にて」や,シルレルの「オルレアンの少女」
。タイトルをきくだけで,なつかしい感じがしてしまいます。再び絶版になってしまった若松賤子訳「小公子」など,
セドリックが”おっかさん....”なんて言っていますし,明治から大正にかけての外国小説の翻訳は,今とあまりに違うセンスに,
かえって味がありますね。
「カラクテール」は創刊50周年(昭和52年)
のときにオレンジ帯で復刊されて以来15年ぶりの再復刊?だと思います。
この50周年記念復刊40冊のうちいくつかはすでに再復刊されています。岩波自身が復刊をはじめる前には,
神田の古書店でよく絶版本を探していたのですが,1万円近く出して買ったゲーテの「色彩論」がすぐに復刊されてしまい,ガックリきてからは,
あまり高価な絶版文庫には手を出さなくなってしまいました^^;;。