太平洋探検6(クック)

太平洋探検 (6)岩波文庫の新刊「 第三回航海(下)」(クック)を読む。
いよいよ最終巻(6冊セット箱入りも出た)。ハワイ諸島から北米太平洋岸を北上し,アラスカからベーリング海峡を抜けて北極海へ向かったクック船長。ハワイ諸島に帰還したクック船長は,はじめ神のように崇められるも,住民たちとの小競り合いのなか,殺害されてしまう。
クック殺害の理由については諸説あるようだが,『キャプテン・クックという稀有な運命―その「歴史」的な現実は,ある物語の「構造」に還元される。その物語とはハワイ島の人々に伝わる「ロノ神」の神話である。マカヒキと呼ばれる収穫の季節,ロノ神はまず土地の人びとに犠牲を要求するが,世界が次の段階に転じると,ロノ神は自らを犠牲として人々に捧げることになる。1778年末にハワイ島にやって来たクックは,マカヒキの祭りが想定するロノ神に擬せられ,島の人々の特別な歓待を受け,翌年の2月初め、無事に出帆していった。だがその直後,嵐のためクックの船は島に引き返すことになる。このとき神話的世界の符号がマイナスに転じ,今度はクックが人びとの生贄の対象となり,殺されてしまったというわけである。』
『クックの船が帰ってきたことを聞いて,現地の王カラニオプウは不機嫌な様子だったという。またクックの船に対するハワイ人たちの「盗み」―その行為を盗みと考えるのはクックたち,西欧人の表象だが―が増えていく。出帆の前,クックはあたかもロノ神のように特別待遇を受けたように見えたが,今や事態は異なっていた。ビーグルホールは,クックの船が損傷を受けて帰島したことに言及し,「神の船はそもそもダメージなど受けるべきだったのだろうか。ロノの威信もダメージを受けてしまったのだろうか。人々は実際にはクックをロノの化身と信じてなどいなかったのだろうか。それとも,最初は信じたものの,一週間経って,彼らあるいは有力な酋長たちはそのように信じなくなったのだろうか」と書いている』(内田隆三氏による)