ソシュールを読む(丸山圭三郎)

ソシュールを読む (講談社学術文庫)
丸山 圭三郎
講談社
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岩波書店から出ていた「ソシュールを読む」(丸山圭三郎)が講談社学術文庫から刊行された。

「コトバが指す実体はなく、そこには差異しか存在しない。その差異に意味は生じる――ひらかれてゆくコトバの謎」近代言語学の父、フェルディナン・ド・ソシュール。残された手稿と晩年の1906年から1911年にかけて、計3回ジュネーヴ大学で行われた一般言語学についての講義「一般言語学講義」の聴講生のノートから内容を復元し、コトバを手がかりに文化や社会の幻想性を解明・告発する、その思想と方法を精緻に読み解く。20世紀の諸科学、とりわけ構造主義やポスト構造主義に多大な影響を与えた思想の射程と今日的な可能性が、あざやかに甦る。そもそもソシュールの文化記号学とは「読み」の営為なのである。そこで読まれるものは自己完結的な作品ではなくテクストであり、或るテクストを読むことが、既成の思考形式を批判し、これをバネとして変形的実践を行いながらもう一つのテクストを生産するという意味でのエピステモロジーでもある。ソシュールにあっては、「読むこと」と「書くこと」と「生きること」との間には柵がない。丸山は、第三者の手によって恣意的にまとめられた「一般言語学講義」はソシュールの思想を歪めたものであるとし、その原典であった受講者達による講義録・メモやソシュールの残した手稿などをもとに研究を行った。