文庫本の文字サイズ

近眼だからと安心していたら、さすがにこの歳になって老眼も混じってきてしまったため、近くのものにピントが合いにくくなっている。それで、最近出されるの文庫本の文字のサイズが大きくなっているのは歓迎すべきことなのかも知れないが、実際にはパラっとめくっただけで読みたくなくなるようなものが多い。

それは、文庫本のサイズにバランスを欠いた文字の大きさでは美しく見えないからだ。文庫本の文字サイズは、初期は7.5ポイント程度、その後8ポイント~9ポイントとなり、現在では10ポイント以上も使われていいる。いまさら昔の黒々とした活版時代に戻りたいとは言わないが、オフセットになって文字の潰れが無くなったかわりに、版面から受ける力強さは失われた。その上に文字が大きく、間隔までスカスカになってしまうと、文章の内容そのものが薄く見えてしまう。

おなじみクラフト・エヴィング商會では、クラシックな雰囲気を出すために、(脅迫文のように)古い活字本から一字一字切り取って並べ、それを製版しているという。古典、いやスタンダードな作品には、クラシックなスタイルの文字が似合う。

文庫本はあくまで凝縮されたコンパクトさが身上なのだから、大きな字で読む場合は、それなりの判型で読みたいと思う。まあ、電子書籍になれば、文字の大きさはお好みで、ということになってしまうが。

○書体については、もじマガを参照。

ほぼ日刊イトイ新聞 新潮文庫のささやかな秘密。は新旧新潮文庫の実例を記載しています。

(2011年7月13日一部改訂)