横溝正史の文庫本

横溝正史エンサイクロペディアのなかに「横溝本の価格FAQ」という面白い考察があります。それによると,『まず知っていて,損はありません。横溝作品の多くは,現行本で読むことができるのです』とした上で,
・「金田一もの全77作品」は,現行の角川文庫と春陽文庫で相互補完すれば,読むことができます。
・春陽文庫を揃えている本屋は少ないかもしれませんが,注文すれば定価で購入できます。
・「人形佐七捕物帳」のほとんどは,現行の春陽文庫で読むことができます。角川文庫「自選人形佐七捕物帳(全3巻)」収録作品は,現行の春陽文庫に全て収録されています。
・二束三文で仕入れた角川・横溝文庫に,定価以上の値付をし,インターネットオークションなどに出品している輩がいます。また横溝作品の本質に全く関連のない表紙図案の違いだけで,数万円で取引している輩もいます。嘆かわしい限りです。そういった輩に,「横溝正史」を語る資格なしと考えます。
・横溝正史・探偵小説→角川文庫化は,周知の事実です。「横溝作品」を数多く読む近道は,角川文庫の入手です。角川書店の他にも,各社より「横溝本」が刊行されていますので,入手できたものから順に読み進めましょう。
・角川文庫では,黒地に緑色文字背表紙の「緑304」「よ5」シリーズは,確かに絶版です。2,3の例外を除き,定価の半額程度までで購入するのが妥当な線でしょう。上限はどんなにがんばっても定価までです。なにせ総計5千万部以上流通した文庫シリーズですから,古本屋(インターネットを含む)を丹念に廻れば,見つかると思います。「レア」や「絶版」という言葉につられて,入札する必要など微塵もありません。ブックオフをはじめとする,古本屋の100円コーナーやワゴンセールなどで,ほとんど揃えることが出来るはずです。初版や帯付にこだわる必要が,ありますか?
・角川文庫『横溝正史読本』。定価は300円です。内容は小林信彦との対談がメインで,横溝・探偵小説は未収録です。「初版赤色カバー」「重版黒色カバー」などと記載されて,取引されているようです。カバーの有無や違いがあっても,中身は同じものなのですが…。一部でこの文庫が,5千~1万円という異常な高値で取引きされています。確かに絶版ですが,高くても千円以内が妥当なところでしょう。