ル・クレジオ「悪魔祓い」

悪魔祓い (岩波文庫)
悪魔祓い (岩波文庫)

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ル・クレジオ
岩波書店
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岩波文庫の「悪魔祓い」(ル・クレジオ)。まず,カラー図版がたくさんあるので,本文用紙がいつもと違うことに気づく。

ル・クレジオは1940年生まれのフランスの作家。1963年に「調書」でデビュー,1966年からタイ、メキシコに滞在し,1970年から74年までパナマの密林に住むインディオに混じって生活しながら本書の執筆を行なった。2008年にはノーベル文学賞を受賞。その間,日本の大学でも講演し,アイヌ民族の人々と交流をもった。

本書は,ヨーロッパ文明とインディオ社会のヴィジョンの対立を描く現代文明批判の書。ル・クレジオは,インディオとの生活により,世界や芸術に対する考え方や人との付き合い方,歩き方,食べ方,愛し方,眠り方,夢に至るまで,人生がすっかり変わったとし,インディオとの生活が「自分がこの地上でもっとも愛するもの」とその傾倒振りを語っている。ル・クレジオはインディオの生活の中に,人間と自然との調和,人間と人間との絆を見て,これとヨーロッパ機械化文明の断絶や孤独とを対比させているのだ。