僕のマーチン君

僕のマーチン君以前から気になっていた,えい文庫「僕のマーチン君」(田村十七男)を読む。有名ミュージシャンが楽器との出会いを語る,などという企画はよくあるが,本書は学生時代からギター好きだった「無名」ギタリストの編集者が,憧れのギター「マーチン」を40歳にして初めて手に入れるまでの心の葛藤を綴ったもの。
いい歳した男なんだから,高級ギターであれ何であれ,金があるなら好きなように買いなさい,というご意見もありましょう。しかし,そこは実用というエクスキューズのない趣味物,自ずから自制心が働き,オレには未だ早い,これを手に入れてしまったら夢が消えてしまう,といった屈折した気持ちは,私のような貧乏人じゃなくても,共感できるのではないでしょうか。
マーチン・アメリカ工場見学記もあり,ギターに限らず,楽器に興味のある人にはお薦め。しかし,マーチンて意外に安かったのね。