新潮文庫の新刊「第二阿房列車」(内田百間)を買う。1000円近い文庫本も多いこの頃,400円というのは得した気分。もっとも,書棚にあるはずの旺文社文庫を探すのが面倒だからという理由なので,たとえ損はしても,もちろん得したわけではない。百間先生は,相変わらず気の向くままにぶらりと汽車の旅。着いた先でも,名所旧跡などもちろん巡らず,何となくぶらぶらと旅館にこもって酒盛り。
とは言っても,有名人の先生のこと,あちこちで記者に追いかけられ,つまらないインタビューを受け,国鉄のお偉いさんからの接待を受けなければならぬ。めんどくさいと思いつつも,結構付き合いのよいところを見せ,鉄道マニア臭さを払拭している。昭和28年,戦後の復興が進み,再び輝きを取り戻しつつあった鉄道の記録として,楽しく,また興味深く読むことができる。