2004年2月

2月27~29日
ハッキリしない天気が続いています。27日にポケモンセンターよりゲームボーイアドバンス・フシギバナバージョンが出るというので,さっそく注文させられる羽目に。新潮文庫の新刊「ボタニカルライフ」(いとうせいこう)を読む。ガーデナーならぬベランダーと自称する著者が,都会での園芸生活を綴ったもの。チャペックの「園芸家12ヵ月」に影響をうけて,とあるように,その観察眼はなかなか鋭く,しかも無用な力の抜けた植物たちとのコミュニケーションが楽しい。読むと自分もやってみたい!と思うこと間違いないが,著者は「いい加減」といいながらも,実にマメな人なので,実際に真似をするのは厳しそうだ。

2月26日
新潮新書の新刊「関西赤貧古本道」(山本善行)は,毎日古書店の店頭均一台を覗いては,掘り出し物を探している著者による貧乏古本道指南。もちろん文庫本もターゲットとなっており,稀少な手帳文庫や山本文庫など絶版文庫の話題も豊富。ほかに,古雑誌や古書目録,ネットオークション,検印紙!まで,著者のこだわりは高価な稀覯本ではなく,あくまで惚れ込んだ作家や作品の収集にあり,関西風のノリの良さとも相まって,楽しく読みました。

2月24~25日
引き続き,岩波文庫の新刊「ダブリンの市民」(ジョイス)を読む。ユリシーズで知られるアイルランドの作家ジョイスの初期短篇集。息詰まるような救いのない話ばかりだが,私にとっては,ディケンズより遙かにインパクトがあった。その物語の時代背景やさまざまな場面に込められた意味が要領よくまとめられている「解題」がよくできているので,それを読むと,もう一度ディテールに気を付けながら本文を読み返したくなる。本書は,古くは世界文庫,最近では福武文庫や新潮文庫からも別の訳で出ていたが,現在はいずれも絶版の模様。

2月20~23日
岩波文庫の新刊「ボズのスケッチ 短篇小説篇(下)」(ディケンズ)を読む。ディケンズ若き日の短篇集だが,非常に話の運びが巧くて感心させられる。ただ,物語の背景がクラシックなこともあり,スイスイと読ませるものの,純粋にお話しを楽しむのは難しいかなと思った。(ちょっと見た「嵐が丘」も同様だったが)文字はゆったり組まれていて読みやすい。ディケンズに関しては,ディケンズ・フェロウシップ日本支部に詳しい資料がある。

2月20~22日
少しずつ,春が近づいて来たような暖かい週末でしたが,私は家に持ち帰っての徹夜仕事などあり,疲れました。岩波書店から出た「ウジェーヌ・アジェ写真集」,欲しいのですが,8400円というのは,ちと痛い。アジェは,19世紀から20世紀初頭のパリとその郊外を撮影した写真家。アジェ以後の100年間に写真の何が進歩したのか?と思わせるような,完成度の高い印象的な写真を数多く残しています。また,今月の岩波文庫新刊は,「ダブリンの市民」(ジョイス),「嵐が丘(上)」(エミリー・ブロンテ),「ボズのスケッチ 短篇小説篇(下)」(ディケンズ),「嬉遊笑覧(二)」(これのみ2月24日刊行とのこと。2年振りの続刊ですな)と,なかなか読みでがありますね。どれからいこうかな。

2月18~19日
本棚をかき回していたら,たまたま河出文庫創刊の頃のパンフレットなどが出てきました。普段,岩波文庫を読んでいると,河出文庫などは新参者という感じをもっているのですが,創刊からもう24年も経っているのですね。記念にそのとき出た「時刻表2万キロ」を再読。これは昭和53年の作品ですが,当時私はもう大学生だったのです。歳とるわけだ。

2月17日
林真理子はビジュアル系作家なのだという。本来の意味ではなく,太った・痩せたでこれほど本の売れ行きが左右されるのは珍しいということで(本人談)。また,林真理子著よりも林真理子推薦の方がよく売れるので,自分で帯の推薦文(惹句)も書いてしまおうか(これも本人談)。などという話がいっぱいの文春文庫新刊「ドラマティックなひと波乱」。エッセイ集としては第15弾だそうで,ガングロ学,雅子さま懐妊騒動,美女完成,料理学校,ダンナ,そして勿論ダイエット,と数年前のネタではあるが,相変わらずの大騒ぎをニヤニヤしながら読む。ハヤシマリコなんて生理的に受け付けないなぁ・・・などと酷いことを言う人もいるが,怖いもの見たさということもあるのよ。

2月16日
光文社文庫江戸川乱歩全集「三角館の恐怖」を読了。謎解き自体はあまり面白みがないが,最後の真っ暗な地下室での待ち伏せなど,さすがに恐怖感をうまく盛り上げてくれて,結構はまって読んでしまった。クラシックな見取り図や,もともと雑誌に連載されていたときに何回か出された犯人当ての懸賞のうちの一つも収録されていて,当時の雰囲気が偲ばれる。子供の頃,乱歩を読んだような気がする・・・もう一度読んでみようかな,という方には,この光文社シリーズがお薦め。

2月13~15日
江戸川乱歩全集の続き,「断崖」と「三角館の恐怖」を読む。「断崖」は戦後初の短編。正当防衛と見せかけた殺人を,女と男の会話だけで描く。本作,乱歩自身は,新味を出そうとしたがうまくいかなかったと言っている。たしかに,なるほどと思いつつも,余りインパクトがなく,印象に残らない作品だ。「三角館の恐怖」はまだ途中ですが,海外作品の翻案にもかかわらず,なかなか引き締まった筆はこびで読ませてくれる。先が楽しみ。ちなみに,この光文社の全集の第7回配本は「続・幻影城」と予告されていたが,注釈や各版の相違点などを調査,リスト化する作業が難航しており,先に第8回配本予定の「三角館の恐怖」を出したとのこと。

2月12日
鼻づまりでヒーヒーいいながら,江戸川乱歩全集の続き,「虎の牙」を読む。「虎の牙」は連載当時のタイトルで,のちにポプラ社で単行本を刊行する際,怪盗ルパン全集に同じタイトルの本があるので「地底の魔術王」に改題された。魔術王というより怪しい手品師に扮する怪人二十面相と,明智探偵や少年探偵団との戦い。二十面相は身代わりのゴム人形に空気を入れたり抜いたり苦労したあげく,明智に化けて明智夫人騙そうとするも先回りされて遁走,待ち受けていた小林少年の乗るタクシーに飛び込むなど,貧乏くさいトリック連発で面目丸つぶれ。子供の頃に戻った気分で楽しんだ。

2月10~11日
光文社文庫の新刊,江戸川乱歩全集「三角館の恐怖」より「青銅の魔人」を読む。これは乱歩の戦後最初の連載(1949年)で,「怪人二十面相」もの。二十面相は珍しい時計を手に入れるため,機械仕掛けや風船タイプなど,いろいろな魔人をせっせと作ったのだが,やはりお子様向けの書き様で,ハラハラドキドキというわけにはいかない。おなじみ明智小五郎,小林少年のほか,少年探偵団がわりに宿無しの少年達による「チンピラ別働隊」が活躍するなど,当時の世相をよく反映しているので,それを読むべき本か。

2月9日
岩波文庫1月分で残っていた「対訳 シェイクスピア詩集-イギリス詩人選(1)」を読む・・・といっても,これは「詩」として楽しんで読むのは難しかった。ウィリアム・シェイクスピアなどというサイトも参考に見てみたが,いかんせん当方の語学力と基礎知識が不足しているらしい。しかし,訳詩の場合,日本語の詩としても素晴らしく思えるものはたくさんあるわけで・・・今回は私の想像力不足ということにしておきたい。

2月6~8日
読書の話が出なくて申し訳ありません。土・日はカミサンの妹の結婚式へ行ってきました。まあ,結婚式や披露宴は主催者も出席者もいろいろと大変ですけれど,皆幸せな気分になれて,よいものですな。息子は,新婦から花束贈呈係をつとめたお礼に,欲しがっていたポケモン・リーフグリーンのソフトを貰って,大喜び(我々のヤラセですが)。これで,我々の世代の結婚式も一通り終わって,次は姪や甥の世代になるかと思うと,さすがに歳を感じますね。

2月3~5日
超忙しくなってしまい,電車読書でも古い本を引っ張り出して読み直すばかりで,停滞気味です。岩波書店のHPで,バレンタインに相応しい?本特集をやっていました。(1)「星の王子さま」ポストカード&オリジナル日記セット,(2)ヌードル,(3)おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく,(4)クマの名前は日曜日,(5)醜い花,(6)古武術に学ぶ身体操法,(7)これなら作れる男のごはん,(8)愛のことば-岩波文庫から,(9)中原中也詩集,(10)侏儒の言葉といったセレクトなのですが,そもそもバレンタインにチョコレートと一緒に本を貰ったら,かなり深読みしてしまうのではないかな。

2月1~2日
岩波文庫新刊キケロの「老年について」は,同「老境について」の改訳ということで,Amazonなどでも若干混乱があるようですが,傍観者的な感のある「老人・・・」よりも,達観した「老境・・・」のほうがピッタリくると思いました。綿矢りささんのインタビュー。読書のスピードは早いほう?ときかれて,『けっこう早いですねえ。でも自分の本(インストール)だと,30分もあれば終わっちゃうから,短いなあと。こんな分厚くなってますけどね。実は紙も厚いんですよー。』面白い。