岩波文庫の食の本

世はグルメ本ブーム。代わりばえのしないグルメガイドなど捨てて,岩波文庫のちょっと変わった「食」の本はいかがですか? 今夜のデートには間に合わないかもしれませんが,俄食通のネタにどうぞ。

随園食単 (岩波文庫 青 262-1)
袁 枚
岩波書店
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まずは気楽なところで中華から。中国清代の詩人,袁枚の「随園食単」(絶版)で伝統的な中華料理の知識を得たら(食単とは料理メモのこと),青木正児の「華国風味」(絶版)で紹興酒の実践を。

華国風味 (岩波文庫)
華国風味 (岩波文庫)

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青木 正児
岩波書店
売り上げランキング: 226292

酒飲みの話題には同じく青木正児「酒の肴/抱樽酒話」(絶版)で河豚を肴に飲み比べ。飲み過ぎてバッカスならぬ馬鹿ッスと浮き世離れしてしまったら,ギリシャ時代の健啖家が集い,食べまくり飲みまくるプルタルコス「食卓歓談集」(絶版)とアテナイオス「食卓の賢人たち」(絶版)がおすすめ。卵と鶏どっちが先か,ユダヤ人はなぜ豚を食べないのか,水割りの美味しいレシピ,などなどをめぐって喧々囂々大議論。ギリシャの酒場(どんなところだ?)のうんちく話が満載。

食を語るには,農業の達人たちの声にも耳を傾けたい。古島敏雄校注「百姓伝記」 (絶版)は,お百姓さんの「でんき」ではなくて,「つたえぎき」。古くからの体験に基づいた農業のノウハウが事細かに示されていて,縁側で古老の話を聞くような楽しみがあります。もっと体系的な知識を得たい方には,有名な宮崎安貞の「農業全書」(絶版)を。

茶の本 (岩波文庫)
茶の本 (岩波文庫)

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岡倉 覚三
岩波書店
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意外に少ないのは茶道に関する本で,岡倉覚三「茶の本」あたりしか見あたりません。岡倉が日本の茶の精神を西洋人に紹介するために1906年に英文で刊行した書。単なる茶道の紹介ではなく,ユニークな日本に関する文明論となっています。

おまけで古来,食物と貨幣は経済の根幹なりということで,「漢書食貨志」(絶版),「旧唐書食貨志」(絶版)で歴史のお勉強を。これらは「読む本」ではないかもしれませんが,レアな書目なので,持ってるだけで自慢できます。古書店で見つけたら買っておきましょう。おっと,肝心な「美味礼讃」が抜けてしまった。これは次回に….。