2002年3月

3月31日
岩城宏之の新刊「オーケストラの職人たち」(文藝春秋)を読む。コンサートを裏で支える人々,ステージマネージャー,作曲家が書いた譜面を清書する写譜屋,ピアノやハープなど大型楽器の運送屋,世界的なピアニストから依頼されコンサート用のピアノを調律する調律師,会場で配られるあの膨大なチラシを印刷し配るチラシ屋など,岩波新書「オーケストラの風景」とダブる部分もあるが,演奏家としての視点から,興味深い話を楽しく読ませてくれる。もちろんいつもながら日本のオーケストラや聴衆の現状についての厳しい視点もあり,とくにクラッシック音楽とは何か?という考察は面白い。
3月26~30日
天気には恵まれませんでしたが,とりあえず無事に神戸から戻ってきました。前回神戸を訪れたのはずいぶん前,大震災の直前でした。あれだけの被害から,よくここまで復旧してきたと感心すると同時に,関係者の方々が口々に,神戸が活気を取り戻すのはまだまだ,と話されるのをきいて,傷跡の大きさをあらためて痛感しました。「嘘」をずっと持ち歩いていたのですが,結局最後まで読めず仕舞い。
3月25日
今週は神戸へ出張しています。また戻りましたらよろしく。
3月20~24日
久しぶりに実家の方の書庫を整理していたのですが,70年代の岩波文庫パラフィン紙の変色が著しいので,交換しなけりゃいけないな,と思いつつも,時間がないので,そのままに。学生時代は,カバー付きの文庫本でも,その上からトレペまで被せていたのに….。ちなみに,古い文庫本に被せてあったのはグラシン紙(Glassine Paper)で,昔は紙にパラフィン(ろう)を染み込ませてつくったので,パラフィン紙(Paraffin Paper)とも呼ばれていました。ケーキとかチョコレートの包装用にも使われています。
岩波から貰った付け替え用のパラフィン紙残り1000枚ほども変色しかかっているので,どうしようかなぁ。いまは,ブールジェの「嘘」を読んでいます。
3月19日
Watermanのクルトゥールという廉価版万年筆。色が綺麗なのと,書きやすさで人気があるらしい….ということで,遅ればせながらボディ色が青と茶の2本を買ってきました(本体1400円,コンバータ400円程)。たしかに,使い捨て万年筆ほどチープじゃないし,普通のカートリッジや(コンバータを使えば)インクボトルから吸い上げることも出来るので,普段使うのには便利。いわゆる「ポケモン」で見栄はっている人には,とくにお薦め^^。ただ,キャップの密閉度がいまいちで,若干書き出しが濃くなる傾向あり。いまは,WatermanのブルーブラックとMontblancのボルドーを入れています。
3月18日
キャスリーン・バトルや佐藤しのぶがよく歌っているヘンデルの”Ombra mai fu”。『緑の木陰よ 輝く陽に きらめく木の葉よ 風よ雨よ この平安乱すな すずかけの樹の 平安を この木陰で憩う 慰め 喜び 安らぎよ』というこの清浄な歌が,「緑の木陰」から聞こえてくる。ハーディといえば,「テス」や「日陰者ジュード」など,苛酷な人生とか,愛憎劇とかいった雰囲気がある。しかし,本書は,教会音楽団の愁いを帯びた旋律が通奏低音のように流れるなか,緑あふれるイギリスの田園地方で繰り広げれられる穏やかな恋物語。ということは,通勤電車の中で,多少眠りに誘われることはやむを得ない。
3月15~17日
「二人の女の物語」を読み終わり,次は復刊のうち「嘘」か「緑の木陰」を取り上げようと思ったのだが,土・日に幼稚園の終了式や卒業式などがありバタバタしていたため,まだ手がついていません。ところで,神奈川県書店商業組合は,読者が1冊本を読み終われば書店でスタンプを押し,100個たまると神奈川新聞紙上に氏名を掲載するという「読書ノート」の取組みを進めています。主催は神奈川県組合,神奈川新聞社,神奈川県図書館協会の3団体とし,県内の図書館80館にもスタンプを置いて,読書ノートに押印する。書店には3月末頃,読書ノート120冊とスタンプ1個を無償配布する。追加の読書ノートは1冊50円,スタンプは1個150円とのこと。大人は駄目なのかしらん?
3月14日
「二人の女の物語」は,進捗して中巻から下巻へ。ボビィが亡くなり,店の経営権がコンスタンスの手を放れ,息子は絵の勉強のためロンドンへ。独りぼっちになったコンスタンス。そこで突然,時間が戻され,ソファイアのパリへの出奔場面へ。パリでのつかの間の贅沢な暮らし。亭主が行方不明となり,場末の下宿屋に運び込まれたソファイアだったが,次第に経営の才覚を現し,ホテルの経営者として成功。30年振りに故郷へ戻ってコンスタンスと再会。ギロチンによる公開処刑やプロシア軍によるパリ包囲など,戦火に動揺するフランスを舞台に描かれた「女の一生」。だいぶ調子が出てきたので,明日中に読み切る予定。写真はベネットのお墓(Burslem Cemetery)。ベネットに関するサイトはこちら
3月13日
「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(井上トシユキ,文芸春秋)を読む。かの2ch管理人ひろゆきとは誰なのか,「2ちゃんねる」の歴史,匿名性,運営上の問題点など,インタビューを中心にまとめたもの。「ひろゆきに聞いてみよう!」では,田原総一朗・糸井重里・山形浩生・宮台真司との対談があるが,なにかみんなピントがずれているように感じるね。2チャンネルは,ひろゆきというまめな管理人によって発展してきたが,フィルターのかからない当事者の生の声が聞こえるところが魅力なのだ。
3月12日
いろいろ読み散らかしているせいもあり,「二人の女の物語」が意外に進まず,ようやく上巻が終わった。話で言えば,姉のコンスタンスと番頭のボビィが結婚,新しい店の体制ができ,ソファイアと胡散臭いスケールスは駆け落ちし,いまはパリにいるらしい…というところ。しかし,こういう小説を読んでいると,まだ自分の「読書力」も無くなってはいないな,と安心しますね。学生の頃,卒業して社会人になって家庭を持ったら,本なんて読まなくなるのではないか,読んだとしても,経済だの政治だのといったビジネス本ばかりになっているのではないか,という漠然とした不安を抱いていましたので,それから20余年経って,普通の「小説」(あえて言えば,役に立たない)を楽しく読むことができるというのは,ちょっと嬉しいわけです。逆に言えば,未だ学生気分が抜けきらないサラリーマン落第生ということかも….。
3月11日
新橋駅前で恒例の「大古本市」をやっているので,帰りに覗いてみました。残念ながら文庫本はありきたりのものばかりで,古いものはほとんど無し。雑誌のバックナンバーや料理・家庭本,映画のパンフが比較的充実していますが,それでもあえて酔っぱらいの巣窟,新橋駅でやるほどのものかな,とこれは毎年思うのですが。
3月9~10日
週末は気温20℃を超えて,ほんとに暖かかった。いよいよコートなしで通勤できそうです。復刊されたベネット「二人の女の物語」を読んでいます。岩波文庫としては,戦前に出た「老妻物語」の改訳で,1963年刊,ベネットの代表作といえる本書は,「五つの町」を舞台に,仕立屋を営むベインズ夫人とその2人の娘コンスタンスとソファイアの2代にわたる女の生涯と栄枯とを描いたもの。モーパッサンの「女の一生」を凌駕すべく2人の女を主人公に据えたと著者の序にある通り,なかなかユーモラスで楽しい作品。アーノルド・ベネットは,やたらに幅広い執筆活動をしていたので,我が国で訳されているものの中には,処世術や人生訓みたいなものも多く,肝心な文学作品があまり出ていないのは残念。
3月7~8日
掲示板の過去ログを整理して,話の流れが多少分かるようにしてみました。タイムスタンプまで書き換える時間と手間がなかったため,投稿日は変になっていますが,投稿の順序は正しくなっていると思います。
3月6日
最近,掲示板の方にもいろいろ書き込みを頂き,また,過去ログも相当たまってきたので,新しい掲示板を作成中です。今度は,投稿された方が修正可能で,なお,記事検索できるような形にするつもりです。
3月4~5日
週刊アスキー連載「カオスだもんね」やミズグチJAPANで知られるイラストレーター水口画伯(本名水口幸広)ショックが冷めやらぬ….。朝,アスキーを買い,風邪で不調なので座れる電車をまち,さあておもむろに「カオス」を読むかぁ….もうそのあとはずっと涙目。あの豪快な夫人と,「付けない派」を標榜し3人もの子持ちであったミズグチ氏。子育て奮闘記を読みながら,同志として多大なる共感を得ていたのに。別に亡くなったわけではないが,詳しくは週アスで。
3月2~3日
岩波文庫新刊「ドーミエ諷刺画の世界」(喜安朗編)を読む,というより見る。オノレ・ドーミエ(1808~1879)はマルセイユ生まれの画家。風刺画家として生涯に約4000点もの石版画などを制作。当時の新聞紙シャリバリに社会諷刺画(カリカチュア)を発表。本書にはそのうち109点を収める。ドーミエの作品は,日本の美術館等でも収集しているところが多く,とくに伊丹市立美術館は,2000点を超える諷刺版画,46点の彫刻,4点の油絵を所蔵している。とにかく滑稽であったり残酷であったり,描かれた人々の生き生きとした表情が見事。
3月1日
昨日のコンドルセの件は,やはり誤りでした。岩波書店のホームページの発行年が間違っていたそうです。ここのところ,はっきりしない天気が続いていますが,これもいよいよ春の訪れということなのでしょう。相変わらず我が家の息子は,スマブラことニンテンドースマッシュブラザーズに夢中で,相手をさせられる私はいい加減勘弁して欲しいと泣いています。