夫が多すぎて

夫が多すぎて引き続いてモームの「夫が多すぎて」(岩波文庫)を読みました。
亡き夫の親友と再婚した妻のところに,戦死したはずの夫がひょっこりと戻ってきて一騒動,というとよくある話のようですが,友情のためにどちらかが泣く泣く身を引いて….とならないところが面白い。そもそも妻のわがままと浪費癖にうんざりしていた2人の夫は,友情と愛情をひけらかしながらも,これ幸いと互いに妻の押しつけ合い。ところが,肝心の妻は,彼女に言い寄る別の大金持ちの男のところへ去ってしまうというドタバタ劇。
このうち,第三幕では,不貞も暴力もない2人の夫と,いかに離婚したらよいのか,弁護士を交えて4人で馬鹿馬鹿しい作戦を練ることに。当時のイギリスの法律における,夫側が離婚を申し出るときの要件として妻の不貞だけでよいのに,妻が申し出るときには夫の不貞だけでなく暴力行為などの証拠がいる,
という不平等さを嘲笑したもの。とにかく楽しいお話でお薦め。