宝島社文庫

宝島….ときくと,真っ先に思い浮かぶのは,月刊「宝島」。植草甚一氏責任編集の雑誌「ワンダーランド」(晶文社)が誌名を「宝島」と変え,JICC出版から出たのが1973年(1985年終刊)。いわゆるサブカルチャーという言葉が流行り,片岡義男氏らが人気を得ていた。私にとっては懐かしい学生時代の話。いまだに書棚の奥にずらりと揃った角川文庫の片岡義男が,その頃の名残をとどめている。その後,今に続く「別冊宝島」シリーズがスタートし,社名も宝島社となった。

私と同様,かつての「宝島」を愛読した諸兄は,現在の週刊「宝島」をみるたびに,義憤の念に駆られるかもしれないが,マニア入門書シリーズともいえる「別冊宝島」の方は,なかなか面白いタイトルを揃えていて人気がある。もっとも品切れが多く,判型も災いしてか,きちんと揃えている書店が少ないのは残念に思っていた。

そんなわけで,かねてより文庫創刊を検討し,マーケット調査も行ってきた宝島社が,1998年7月24日に「Cの福音」(楡周平著)初版12万部をもって創刊した「宝島社文庫」は,既に自社単行本ベストセラーと「別冊宝島」シリーズを再編成したものなど80点ほどを刊行しており,品切れに悔しい思いをしていた人,もっぱら電車読書派の人にとっては歓迎すべきことだ。

最近刊行された文庫本としては,キワモノ的なタイトルの割には,造本もしっかりしており好感が持てる。