11月30日
「罪と罰」上巻が読み終わったので,講談社学術文庫の新刊「パリ風俗誌」に手を出しています。本書は,
美術評論家ヴァルノによる中世から1930年までのパリの歴史(風俗史)。豊富な図や写真とともに,
普通のフランス史では表に出てこないファッションや建築物,時代時代の流行など,
王侯から市民に至るまでパリにおけるさまざまな生活を描いています。大革命から世紀末,
ベルエポックに至るパリの華やかなりし時代についてはとくに調子が良く,そのいきいきとした書きっぷりが見事。
結びとなる1930年におけるパリの未来都市計画も興味深いところ。
11月29日
いや~寒くなりましたが,お元気ですか? やっと書店の店頭で見かけるようになりましたね,岩波現代文庫の見本。
あまり派手な造りじゃなくて,好感は持てます^^。かつては岩波文庫も同時代の作家の作品を入れていたわけですから,
あえて現代文庫をつくらずとも,本家岩波文庫の守備範囲を広くすればいいだけだとも思いますが,やはり(読者も含めて)岩波文庫に対する
「思い入れ」が強いのでしょうか。
11月26~28日
週末は横浜へ行きましたが,デパートは大変な混雑。グッタリ疲れました。12月1日創刊の集英社新書,
初回10点で創刊というのは,地道というか目立たないというか,予定されている書目もあまりそそられませんね。いまどき新書を出すからには,
文庫本では出せない新しい企画でなければ意味がないと思うのですが….。久しぶりに配信されてきました読書猿96号が,
原子力にまつわる諸本を取り上げています。
11月25日
岩波文庫「世界文学のすすめ」で「罪と罰」について語っているのは,五木寛之氏。『ふり返ってみると,
若い頃にドストエフスキイを読みながら,私はいつも誰にも言えない或るうしろめたさを感じつづけていた。それは
「自分にはここまで深く悩むことはできない」という脱力感だった。….いまでも私がひそかに思うことは,
或る真摯な心の病を病んでいる者だけが,ドストエフスキイに本当に深く共感できるのではないか,ということである。』 現代人は
「病んでいることを自覚できない」という病を病んでいる病人であり,
この小説がいまだに我々を震撼させる力をもっている理由のひとつはたぶんそこにある,と言っています。
11月24日
新刊「罪と罰」を読み始めました。旧版岩波文庫「罪と罰」を読んだのは,20数年前。ずいぶん昔のことのようですが,
なにか古い文庫本ばかり漁っていると,2~30年前の岩波文庫など,「最近出た本」のような気がしてしまいますね。でも,
冒頭のマルメラードフの身の上話が,ずいぶん身にしみるようになっただけ大人になったのかも….。とにかく,今回は「じっくり読む」
をテーマに頑張ってみたいと思います。(江川訳,ちょっと漢字が少なくて読みにくい^^;;)
11月23日
「踊る地平線」。上巻はあまり熱心に読まなかったのですが,スペイン,ポルトガル,帰国編の下巻は結構楽しみました。
闘牛に熱中するスペインの人々,リスボンに集まる船乗り達の怪しげな生態,日本とヨーロッパを行き交う船の乗客達。昭和初期,
つかの間の平和を満喫する古き良き時代を,あの不思議な文体で味わうことができます。
11月22日
いまさらなんですが,映画「タイタニック」を見ました。事故自体には大いに興味があるものの,ディカプリオが子供に見えて,
感情移入できない^^;;。まあ,当方が歳だということかしら。新刊「踊る地平線」(下)を読んでいます。
11月19~21日
毎年恒例,駅前のツリーの飾り付けなども始まり,はやくもクリスマス気分ですね。
結婚式の日一日だけしかクリスチャンの経験がない私も,なんとなくウキウキ(現実逃避ともいう)。
フィッツジェラルド「バビロンに帰る」は,かつて景気のいいアメリカ人で溢れていたパリ・リッツ・ホテルの,
いまは閑散としたバーから物語が始まる。当時,リッツ・ホテルを贔屓にしていた人の中には,プルースト,ヘミングウェイ,
そしてフィッツジェラルドがいた。ヘミングウェイを,このホテルのカンボンバーへ最初につれてきたのもフィッツジェラルドだった。そして,
私もリッツ・ホテルを愛する一人….。いや,ヴァンドーム広場の片隅から,そっと覗いただけなのだが。朝日文庫「金のホテル銀のホテル」
は,由緒あるホテルを百ばかり集め,それに纏わるストーリーを楽しむ本。これは読むだけでは済まされない。
11月18日
しし座流星群は残念でしたね。当地はそもそも曇っていて,星が一つも見えませんでした。
一応願い事など考えていたのに….あんなことや,こんなこと。まあ,口に出しては言えませんが^^;;。週アスでおなじみ,
「カオスだもんね-DJ編」を読んでいます。
9月21日にパーカーから発売された「パーカー・ミレニアムペンシリーズ」の発売を記念して「20世紀を代表する作家は誰でしょう」
というアンケートを募集中。対象となるのは、今世紀に活躍した国内外の作家。ヘミングウェーやコナン・
ドイルにも愛されたパーカーらしいアンケート企画。 応募方法は、はがきに「20世紀を代表する作家」1人とその理由、住所、氏名、
年齢を明記し、11月20日(当日消印有効)までに〒100―8668 東京中央郵便局私書箱1560号PAパーカー
「20世紀を代表する作家」日刊ゲンダイ係へ。応募者の中から抽選で5人に「ミレニアムソネットマットバーガンディボールペン」
(8000円)などをプレゼント。あ,もう締切だな。
11月17日
新顔のザ・テレビジョン文庫。書店で手に取ったとたん,捻挫しそうになりました….あまりに軽くて。本文用紙が白い,軽い,
かさばる・・・の三拍子揃った文庫は,どうも読む気がしませんね(集英社文庫程度でも,ちょっと敬遠したい)。まあこの場合は,
内容相応という考えがあったのかもしれませんけど^;;。
11月16日
Book MLにいのうえさんから面白い投稿があったので,ちょっと転載。(ご本人の了解は得ていません)『昨日近くの本屋にいくと、
日本書紀の宇治谷さん訳(学術文庫)が全5冊並んでいました。後書きなど、コマメニ調べた後、岩波文庫の日本書紀全5巻と見比べました。
その結果、断然、岩波文庫を選択しました。理由:○読みやすい。 1994年頃の出版なので文字が大きい。右頁に読み下し文、左頁に注、
というスッキリした構成。○ほとんど、総ルビといっていいほどの ルビの多さ(したがって、約半分字数にすれば遥かにそれを上回る分量の注。
この注が又面白い)。○宇治谷さんの訳も、この岩波思想体系本をかなり、参考にしているようだ。○わたしは、
漢字と大和言葉に興味があるので700年以前に出版されたこの本の 読み下しには大いに興味がある。これは大野晋さんの担当。当時、
読み下しは当然大和言葉で為されるわけで、どういうふうなことばが 当時存在したのか、一目瞭然となる。・・・わたしにとっては、
この岩波本はもちろん、史書では断じて無く漢字とやまとことば、のテキストである。しかも、辞書を読むのでなくまとまった、
歴史話でそれが得られると言うのだから、たまらない。。。と、いった調子で たった一頁だけからも得られる文字情報にはすごいものがある。
ために 岩波文庫を買った次第です。ただし、この岩波文庫の日本書紀のツクリはとくに例外的にすぐれているのではないだろうか? 万葉集や、
古事記とかはかなり読みにくいものであった、と記憶する。』
11月12~15日
土曜日。所用でお台場へ行って来たのですが,ものすごい人。お菓子フェアみたいなのをやっていたのですね。ところが,
昼間はあれだけ人であふれていたのに,夜になると,この人工島は,文字通り陸の孤島と化し,歩くのが怖いくらいに寂しい….。
お隣とはいえ,夜も活気あふれる銀座新橋とは別世界です。
それから,ケーブルテレビを導入しました。我が家は海のすぐそば,塩害が酷い地域であるためアンテナがもたないのです。さすがに,
映りは良いようです。将来的にはインターネットの常時接続を目論んでいるのですが,カミサンには内緒。
11月11日
中公文庫新刊「フィッツジェラルド バビロンに帰る」(村上春樹訳)は,表題作を含む5つの短編と,
訳者による短いメモからなる嬉しい一冊。バビロン・・・なら岩波文庫にもあるけど,と思って調べたら,「フィッツジェラルド短篇集」
(佐伯泰樹編訳 1992年)は,あっさり品切れとなっておりました。フィッツジェラルドの短篇集は,どれも売れ線だと思っていたので,
これは不思議。しかし,何度読んでもこの短編はすばらしいですな….。久しぶりに学生時代に買ったナンシー・
ミルフォードのペーパーバックス版「ゼルダ」なども取り出し,スコットの世界に浸っておりました。
11月10日
「入門!美術コレクション」(宝島社新書)は,現在の美術市場の動向と売買の基礎知識を解説したものですが,文字通り入門編であって,
人気作家の名前ばかりズラズラ並べられても….といった感じ。著者の室伏哲郎氏は,美術館長を務める傍ら,
日本パチンコ学会やカジノ学会を主催するヘンな人。宝島社新書のカバーには,本文DTP:××社なる標記があり,なるほど新しい新書
(変な言い方だけど)だなぁと感心。
11月9日
角川文庫「本屋でぼくの本を見た」は,人気作家61名が作家としてデビューした頃の想い出話を短くまとめたもの。もちろん,
書店で処女作を見たときの感動,ではなく,その作品を書くまでの経緯を語っているわけですが。名を連ねている作家は,
いわゆる今風の選択ではなく,柴田 翔,落合恵子,高橋三千綱,渡辺淳一….といった面々。みな淡々とした語り口で,
読んでいる方がちょっと照れる。もう少し馬鹿話で盛り上げてほしいものです。
11月8日
誕生日。これでめでたく大台に。まあ,子供の頃は,自分がオジサンと呼ばれる歳になるなんて,想像もしなかったのですが,実際,
なるときにはなるものですね….。我が親も,孫の誕生日は大騒ぎするのに,子供(私)の誕生日は,まったく音沙汰無しです^^。
11月6~7日
11月8日に「岩波文庫秋の一括重版」(30冊)があります。ヴェブレン「有閑階級の理論」や荷風「腕くらべ」,「旧事諮問録」,
「音楽と生活」など,あまり古いものではないですが,他の文庫で読めないものばかりです。16日に重版予定の,柳生宗矩「兵法家伝書」
(新陰流兵法指南書)もお薦めです。
11月5日
書棚にあったセントジェームズ「人生を複雑にしない100の方法」。私が買ってくるわけがないので,カミサンの本らしいのですが,
なかなかいいことも書いてありました。テレビを見ない,雑誌の定期購読をやめる,新聞をとらない(理由は気が滅入るから),
電話が鳴ってもとらない,玄関でベルが鳴っても出ない,クリスマスカードは出さない,時間つぶしの仕事をやめる,よく笑う・・・
さっそく実行しましょう^^;;。
11月4日
養老孟司さんは,「私が岩波文庫をよく利用するのは,翻訳を信用するからである」と言っています。
岩波文庫でしか手に入らない翻訳書もあるから,比較が難しいこともあるけれど,「読み物」としてみるならば,
私はかなりヘンなものもあるような気がしています。「とくに理科系の本では,読んで論理が通らない訳文は,誤訳である可能性が高い」・・・
文字通り,筋の通らない訳文は文芸書にもありますね。
11月3日
戦前の文庫本は,名の知られたものでも,完全な書目リストを把握できない場合が多いようです。青弓社「文庫博覧会」(奥村敏明著)
を繙くと,こんな文庫が出ていたのか!という驚きとともに,本書が単に著者が入手した古い珍しい本の紹介に終わることなく,
実物や文献を丹念に当たりながら,それら文庫の生い立ち,行く末をあきらかにしようとしているところに,とくに興味を惹かれます。
奥村氏にしても,まだまだ未調査のものが沢山残されているという絶版文庫の世界。本書により,蒐集・研究に興味を持つ人も多いでしょう。
わたしは,ちょっと他の青弓社文庫関係本と装丁が違うので,書店で迷ってしまいました^^;;。
11月2日
古書店に関する本というのもいろいろ出ていますが,読んで面白く,極めて実用的という点で「東京古書店グラフィティ」(池谷伊佐夫・
東京書籍)をお薦めします。東京の主立った古書店の棚構成や特徴ある在庫本を細かいイラスト(俯瞰図)で描いたもので,
各店の特徴が一目瞭然。馴染みの無かった店にも,行きたくなること請け合いです。
11月1日
神田古本まつりも,きょうの大雨で水を差された感じ。それでも三省堂書店内の会場の方には,結構人が集まっていました。そんな中,
あの国宝重文級古典籍を取り扱っていた弘文荘の目録「待覃古書目」がCDROM化され発売中です。一番有名な古書目録というわけですが,
12枚+索引のセットで28万円也。欲しいけれど,おまえが買ってどうする???という声も^^;;。