夜明け前 第二部

夜明け前 第二部(上) (岩波文庫)
岩波文庫新刊「夜明け前 第二部」(島崎藤村)を読みました。本書は,木曽路の庄屋である青山家当主の二代にわたる生涯を,維新前後の激しく揺れ動く世相を背景に描いたもの。旧世代,すなわち封建制の中でそれなりに秩序ある安定した生活を送っていた父と,新世代,新たな時代の到来とともに民衆のために立ち上がろうとしたが理想と現実との間で苦しむ息子。そんな世代間の対比と,次第に濃くなる焦燥感に,いたたまれない気になるものの,一読陰惨な感じを与えず,常に読者に一筋の希望を持たせることができるのは,主人公半蔵の純粋一徹な気持ちに,同じ息子世代として,大きな共感を得られるからでしょう。