平田篤胤「霊の真柱」

霊の真柱我が家(平塚市)から見える山といえば,第一に富士山,第二に大山(おおやま)。大山は雨降山とも呼ばれ,古代から信仰の山として崇められてきました。江戸時代には庶民に「大山詣で」が流行し,明治には「神仏分離令」により,阿夫利神社と大山寺とに分離しましたが,国学者の権田直助が神主となり阿夫利神社として確立し,いまでも参拝客や,遠足の小学・中学生で賑わっています。それで,なぜ突然大山なのかというと,この権田直助は,今月岩波文庫より出た「霊の真柱」の著者平田篤胤の弟子なのです。
「霊の真柱」は,古事記や日本書紀などをもとに,真の「世界創世記」を構築しようとした書で,神々の系譜や,宇宙の開闢,天・地・泉の生成を10個の図により説明したもの。学者篤胤曰く,とにかく我が国が世界の中心であり,世界の創造も我が国の神々によりなされたものだから,中国や西洋諸国にあまたある創世記は,その方言に過ぎない。アダムとイヴは,もちろん伊弉諾尊と伊弉冉尊が流れ流れて現地化?したものである….。
現代語訳ではないので,見た目は取っつきにくいですが,篤胤の態度が極めて明解なので,言いたいことは解った!結構面白かったよ,といった感。ついでに,日本の神話に出てくる神々を知るには,日本や西洋の神話を集大成した「神話の門」がお薦めです。
解説によると,「古学の徒は大倭心(やまとごころ)を堅固にもつことが肝要であり,そのためには「霊(たま)の行方の安定(しずまり)」を知る必要があるとして,宇宙の開闢から天・地・泉の生成と形象を,10箇の図と古伝により説明し,その過程を貫いている神々の功業を明らかにして,霊魂の行方を論じた書。篤胤の幽冥観を確立し,国学的宇宙論に新たな展開をもたらした重要著作」とのこと。