文庫化の時期

文庫化のサイクルはどんどん短くなっている。少し待てば文庫本になりそうだと思うような本は,新刊の単行本が出ても,
つい買うのを控えてしまう。果たして単行本が文庫化されるまでの期間は決まっているのだろうか。
いくつかの出版社に聞いてみた。

河出文庫

文庫化のサイクルは基本的には単行本発刊の2年後。映画化,
テレビ化などで場合によっては1年ぐらいで文庫にするということもありますが

朝日文庫

単行本の文庫化は,自社のもので3年。他社のものでも2年半ぐらいたってから。業界の一般常識に準じて,
というところです。

光文社文庫

うちの場合,カッパ・ノベルスからの文庫化が主ですが,基本的には3年の期限を守っています。ただ,映画化,
テレビ化などで,それより早く文庫化する場合もありますが。

徳間文庫

文庫化のサイクルは約3年。自社のものならそれより早い場合もあります。

中公文庫

文庫化にあたっては,だいたい3年の期間を置くことにしている。ただ著者によっては2年ぐらいで出したものもある。
現在月に8点刊行しているが,そのうち3点は自社の刊行物から,その他はよその出版社のもので,
他社のものはとくに3年を守るようにしている。

岩波文庫

文庫化の時間はとても長い。和辻哲郎「古寺巡礼」など,単行本の初版が出てから何十年もたって,
やっと文庫化しました。原則的に単行本の廉価版ということで文庫化するのではなく,
あくまでも長い期間を経て名著としての地位を確立したものを文庫にして,多くの人に読んでもらうと考えています。

新潮文庫

3年以内で文庫にするのは原則としてやらない。

☆のんびりしていると,すぐに他社が文庫権を横取りしてしまうので文庫化のサイクルはどんどん短くなっていますね。
何しろ,文庫にするかしないかは,著者がOKを出せばいい,という世界ですから,他社の単行本であろうと,
みんな虎視眈々と狙っているんです。著者側の考えは,流行作家は薄利でも多売できるから喜んで,それ以外の人たちは,
もう少し単行本でじっくり売ってほしいと思っているようですよ」(業界関係者)