巴里の空の下オムレツのにおいは流れる(石井好子)

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)
石井 好子
河出書房新社
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昭和38年以来、版を重ねてきた「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」が河出文庫から今月発売される。

本書は昭和27年にフランスに渡り、シャンソン歌手として活躍していた石井好子が、パリでの生活やフランスの料理について、昭和35年から雑誌「暮しの手帖」に連載していたエッセイをまとめたもの。出版以来、名随筆として親しまれてきた。

まだまだ海外渡航が夢であった時代、シャンソンの本場に乗り込み、臆することなく、よく歌い、よく食べ、料理研究にも打ち込み、何事にも精力的な著者の屈託の無い姿は、なかなか痛快である。

タイトルとなっているオムレツは、当時の日本ではまだ馴染みの少ない食べ物であり(私の子供の頃の話だが、そうだったかな?)、読者は食を通じてまだ見ぬパリの香りを感じようとしたに違いない。文庫化を機会に未読の方にはお薦め。