岩波文庫復刻版をオンデマンドで刊行している一穂社「名著/古典籍文庫」シリーズが12月までに43点と順調に伸びているが,本シリーズの刊行について,一穂社代表の古谷先男氏は,情報誌「アクセス」330号(2004年7月号)にて次のように語っている。
『本企画は,先ず,岩波書店のご許可を得て,「岩波文庫」の品切れ本に焦点を当て,そこからスタートを切ろうと考えた。周知のように,岩波文庫はこれまで5,000点余を刊行してきた世界有数の文庫である。しかも多くが紙価の定まった名著・原典・文献でもある。にも拘わらず,重版が見送られてきたのである。ことに岩波文庫の場合には,新版を出しつつ旧版に入れ替えてきたわけであるが,旧版に遜色があるわけではない。何十年も売り続けて行くうちに,旧漢字や旧かな使いといった制約が出たために,やむなく新版に移行したものが数知れない。ところが,それが,今日に至れば,返って貴重な旧字本として,文献的な価値を生んでいるとさえ言える。』
『しかし、これまでは大方が旧版という理由で消えつつあり、また、事実消えて行ったのである。そんな状況の中に登場したのが、「オンデマンド出版」というノウハウである。オンデマンド出版は、旧版をそのまま画像化し,書籍データとして固定化するもので,従来本の印刷の質的な面から言えば,重版を重ねて多少活字が太った本という印象しか異質観はない。』
『小社の意図するところは,1.埋もれた名著・原典・文献の復活,2.各社が所有する類書を糾合,グループ化し,「名著/古典籍文庫」を確立,3. 併せて,それらの電子データから電子図書館を設立し,公開を果たす。具体的には,先ず,岩波文庫100点を以てスタートを切る。100点の主なジャンルは思想・哲学・宗教並びに古典文学である。さらに,読者の希望に沿う形で、漸次増やして行きたい。判型は文庫版の2培のA5判とし,読み易くという方向に配慮する。定価は2,000円前後を中心に値付けし,買い易くをモットーにする。』
実際には,3000円~6000円と当初の目論見より高額にならざるを得なかったようだが,どこまで蓄積することが出来るのか注目をしている。