外国文学の復権

最近,外国文学が読まれないという。ミステリやSFなどは別として,いわゆるかつて「世界文学全集」
に収録されていたようなスタンダードな名作がダメだという。そういうものばかり並んでいる岩波は「危機感」を感じているかもしれないが,
名作が読まれないというのは,別に岩波の責任ではないし,今に始まったことでもない….。

今回(97年10月14日),岩波文庫よりシリーズとして販売される「わが心の世界文学」40点は,もっぱら「名作」
をラインナップしてはいるものの,なかには他の文庫では読めない面白いものが2点ある。久々の復刊だし,買っておこう!

トリストラム・シャンディ

プルーストやジョイスらの「意識の流れ」派の先駆的作品といわれている。プルーストを読んでめげた人でも,
時の流れがゆったりした遙か昔の物語だから多少は安心。このユーモアは現代人には笑えないが….。変わった小説が好きで,
これといったストーリーなしに1000ページ読み切れる自信のある人にはお勧め。

聖アントワヌの誘惑

フローベールがブリューゲルの名画を見て書くことを思い立ったというオカルト・ナンセンス・ハチャハチャ小説。
砂漠の真ん中で修行を続ける聖アントワヌの前に,地獄の帝王サタンをはじめ,シバの女王,魔術師シモン,仏陀,キリスト,ヘラクレス,
アポロ,バッカス,ポセイドン,一角獣,スフィンクス,その他大勢が続々と登場して戦う妖怪大戦争。

また,この企画に連動して,10月新刊として次の5点が発売される。

世界文学のすすめ(大岡 信ほか)読書のすすめ(岩波文庫編集部)読書案内(モーム)世界の十大小説(モーム)書物(森 銑三,
柴田宵曲)

またモームか….という感じはするが,このモーム2冊のように岩波新書から文庫へ成り上がったケースは少ない。
電車読書には役立ちそうだ。

ついでにそのパンフレットの中で,新渡戸稲造「武士道」や内村鑑三「代表的日本人」がブームである(「私の好きな岩波文庫101」
フェアが貢献したらしい)といっているが,これは本当^^? 私は全然知らなかった….。