シュティフター「水晶」

水晶 他三篇―石さまざま (岩波文庫)
シュティフター
岩波書店
売り上げランキング: 166494

「クリスタル」というのは,我が家では頻繁に出てくる言葉で,数字を199まで数えると,次がなんだか悩んでしまう4歳の息子でさえ,「クリスタル,ゲットだぜぃ!」などと叫んでいる。そう,すべてSONIC(とSONIC2)のおかげである。ドイツ語では「Bergkristall」。シュティフターのあの名作「水晶」だ。

と,強引に今月重版される「水晶」に話を持っていったところで,この本がいま重版されることには意味がある。この作品はもともと「聖夜」というタイトルであり,短篇「石さまざま」に収録される際,「水晶」と改題されたのだ。一応岩波書店もクリスマスに気を遣っているわけ….。

山深い村の幼い兄妹が,クリスマスの前日,山を越えて祖父母のある町に出かける。その帰り道,激しい吹雪に見舞われた二人は,道しるべを見失ってしまい,青白い雪と氷の世界をさまよう。厳しい自然に翻弄されながらも,健気に助け合う幼い子供たちの姿が,なんともいじらしい。岩波文庫の中でも,とくにお薦めの一冊。(※原文は,http://www.gutenberg.aol.de/)