私の好きな岩波文庫

早くも6月。雨が上がったのはよいのですが,海からの南風が強く,部屋の中がジメジメ。夜には叔父の通夜に行って来ましたが,蒸し暑くて参りました。さて,「私の好きな岩波文庫」で上位になった書目から,どれか1冊ということになると,私の場合,「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)でしょうか。これは,私が中学に入った頃,主人公と同年代ということで,熱心に読んだものです(もちろん岩波文庫版ではありませんが)。主人公のコペル少年が,何日も学校休んでいる貧しい友の家を訪れたとき感じたこと,上級生とのいざこざで友が殴られたとき,他の同級生が立ち向かっていったのに,自分は勇気がなくて出て行けなかったこと・・・いまでもいろいろなエピソードが思い出されます。1937年に書かれた本書。私が読んだ1970年までに戦争を挟んで33年経っていましたが,当時物語の背景にはさほど違和感を感じませんでした。そしてそれから再び33年経った今,中学生達は本書を読んで,どのような感想を持つのでしょうか。物語の最後で,主人公と共にいろいろなことを考えてきた読者に対して,著者はこう呼びかけます。「君たちはどう生きるか」。