2000年8月

8月31日

「君は書店員に嫌われていないか?」
は,「カバーは結構です」は最初に言いましょう,無理に手渡ししようと思わないでください,
平積してる本の上にモノを置かないでください,エロ本買いたいなら堂々と買いましょう・・・
などなど投稿も含めて書店員の立場からの要望がいろいろ書かれていておもしろい。でも,最近はカバーをおかけしますか?ときかれて,
お願いします,というと,いかにもめんどくさそうに作業する人が多いのではないかな。

 

8月30日

marina以前から買い置き?していた「満里奈の旅ぶくれ-たわわ台湾」(渡辺満里奈,新潮社)をようやく読む。
夏休み前に読んでしまっては,台湾行きたい病が再発することは確実とみて,自重していたのだ。台湾大好きな渡辺満里奈が,
台湾各地の料理を食べ歩き体験ガイド。特に中国茶については詳しい。最近,アフリカをはじめ,あちこち出歩いて,
いかにもレポーター然とした姿がファンにはちょっと寂しかった満里奈。ここではさすがにハマっている台湾だけあって,ノリがいい。
お茶好き,台湾好き,満里奈好き(すなわち私)にとっては,嬉しい楽しい本。
昨日書店に山積みされているのを見たら早くも5刷だった。売れてるな~。★★★☆☆

 

8月29日

新刊「カオスだもんね」第6巻サイン会編を読む。今回のネタは,アイドルお宝鑑定団,プラモで再現!日本の風景,
東京コレクション通信,はじめてのサイン会,天晴!!日本の編集長,などなど。週刊アスキーを買うと真っ先に読む「カオスだもんね」
の単行本化第6弾。ということは,ネタはすべて読み込み済だが,それでもまとめて読めて嬉しい^^;;。「パパはつらいよ(浦和市死闘編)」
など,三人の子供を抱えて締切に追われまくる日常を描いていて,涙なくして読めません….。著者・水口画伯のプロフィールは,
ここ!
★★★★☆

 

8月28日

角川文庫の新刊,いとうせいこう・みうらじゅん「見仏記3 海外篇」を読む。国内シリーズ2作に続き,いよいよ見仏ツアーは海外へ。
韓国,タイ,中国,インドへ,ひたすら仏像を求めて男二人の珍道中。韓国の仏像にぴかぴかなものが多いのは信仰が生きているから,
日本の仏像が古ぼけてもやたらに手が加えられないのは仏教に対しても舶来崇拝精神があるから,と考察するも,韓国の人々はみな,
古い仏がないのは,秀吉に始まる日本侵攻のせいだと語る。それでもめげずに,キッチュな観光みやげを漁り,
ホモカップルと間違えられぬよう気を遣う。ちなみに,出版記念いとうせいこう・みうらじゅんサイン会が9月3日14:00~15:
00に紀伊国屋書店新宿本店で行われます(あ~,もう整理券配布は終わってしまったようです)。★★★★☆

 

8月26~27日

夏休み最後の土日ということで,近くの海浜公園プールは大にぎわいでした。8月19日,角川春樹事務所より新シリーズ「ハルキ・
ホラー文庫」が創刊された。初回は19点書き下ろし。角川ホラー文庫に対抗し,強力な執筆陣を揃え,刊行ペースは3ヶ月に4~5点,
書き下ろし中心でいくとのこと。「ホラー」という言葉は角川春樹社長が角川書店時代に日本で初めて使用したという(ホント?)。

 

8月25日

新潮文庫と角川文庫の編集者対談によると,角川文庫は最低ロット3万部だという。
学術系も入っている角川文庫ソフィアは定価設定を少し高めにして,少ない部数でも重版できるような形にしているが,
エンターテインメント系の小説なら最低でも3万部でスタートしたいとのこと。一方,新潮文庫の海外ものは4万部が目標ライン。
『各社の刊行点数が増えてますからね。ほとんど月刊誌を作っている感覚ですから。平台に並んでいるうちにどれだけ出すかで決まってしまう。
海外ものは特に足が早いので,棚に入ってしまうとなかなか動かない』,『単行本と文庫の読者は違うと思うんです。
常に文庫の新刊が供給されているから,文庫の読者は単行本の新刊コーナーに行く必要がない。
それに棚まで行って探そうという奇特な読者は少なくなっている。平台が勝負なんですよ。平台で見て,ぱっと買う』,『だから,
編集者も作ればいいというんじゃなくて,どうプロデュースするかを考える時代になっていますね。書店をまわって,
どこに配置されどうやって売れているのかまで目配りしなければならない』,『うちでも去年あたりから編集者が全国の書店をまわっています。
編集者が作って営業にバトンタッチするやり方はもう古いですよ。でも,具体的な話はしにくいですよね。どこも厳しい状況だから』。
岩波文庫は厳しくないのかな。

 

8月24日

デジカメの出荷台数・金額が銀塩写真(変な言葉ですな)カメラのそれを上回ったという。いずれ,
現在のフィルムを使ったカメラは姿を消し,すべてデジタルカメラとなり,街角のミニラボのデジカメデータを持ち込んでプリントしてもらう
(あるいは,もっと簡易で性能の良いデジカメ専用プリンタで自分ちで印刷)….というのが普通になるのでしょうか。
暗いところではデジカメのほうがコンパクトカメラより明るく写るのは確かで,レンズ口径が大きいコンパクトカメラより受光部の面積が小さい
(35mmフィルムの1/9)デジカメの方が 小さいところに光を集めるから,
レンズ口径が小さくても明るいレンズができるという理屈ですね。それなら,デジカメの方がいいじゃん,ということになりそうですが,
いまのところ最高クラスのデジカメでも334万画素各色8bit。35mmフィルムだったら,
だいたい2000万画素各色12bitだそうですから,プリントで大きく伸ばす際には,まだ相当差があるようです。
私自身は四切程度で差がなくなれば,デジタル一眼レフを使ってもいいかな,と思っているのですが,数年のうちに実現されるでしょうか。

 

8月23日

あまり話題にならなかったが,ことしの岩波文庫のフェア「岩波文庫で1000年を読む」。読者プレゼントの「特装版岩波文庫手帳」
(岩波文庫の装丁で,中身が白紙)に当選された方はいますか? 500本限りなので,
将来プレミアがつくかも….山陽堂に持ち込んでみたらいかが^^;;。いや,ちょっと欲しかったりして。

 

8月21~22日

高野悦子さんにつづいて,「青春の墓標」がどうなっているのか調べてみたら,私が読んだ文春文庫版(1974年刊)
はすでに絶版のようです。60年代は私の高校でも,激しい学生運動があり,退学者を多数出した….ということを聞きましたが,
これはさすがに当時でも,ずっと昔のことと感じられました。古書店ではよく見かけますので,興味のある方は探してみてはいかが。
そこには当時の読み手による『熱い言葉』が書き込まれているかもしれません。

青春の墓標:マル学同中核派の活動家であった奥浩平(1943~1965)の遺稿集。原潜寄港阻止闘争,
日韓会談反対闘争などに参加するが,1965年に羽田で展開された外相訪韓阻止闘争で警棒により鼻の骨を折られ入院。同年3月6日,
敵対党派と恋人への愛に悩み,「ああ,生きることはかくも厳しく闘うことなのか。かくも激しく分断されることなのか。それ故の確かさよ」
という言葉を残して,プロバリン三百錠を服用し自殺。享年二十一歳。奥浩平は中核派,
高校時代の同級生で恋人であった中原素子は早大生で革マル派に属していた。自殺の前年,革共同が中核派と革マル派に分裂し,
敵対しあっていたことが,彼の自殺の動機の一つになったようだ。(全共闘時代用語の基礎知識より)

 

8月17~20日

さてさて,火曜日まで夏休み中です。連日プールに行っているので,背中の皮がボロボロです。

ISIZE BOOK連載の『永江朗ホンとの話』。第31回は
「どうして岩波書店の本はない?」
。これは,みなさんよく御存知の岩波書店買い切り制の説明だ。もっとも,
新聞の広告を見て書店に探しに行っても,岩波に限らず,多くの本は見つからないと思う。そして書店に注文しても,いつくるかわかりません,
なんて言われるだけだから,店頭で見つかりそうもない本は在庫豊富なオンライン書店に注文する,というのが普通になるだろう
(もうなっているか)。だから,岩波書店も中途半端なことはせず,すべての出版物を受注制またはオンライン販売とすればよい。
岩波書店に限って言えば,それでも大勢に影響なし,と思うのだけど….^^;;。

ところで,最近またぞろ写真雑誌など読みふけっている。そこでよく使われているのが,ハイアマチュアなる不思議な言葉。
写真好きの人って,アマチュアとか初心者とか言われると逆上するらしいので,メーカーが気を遣ってこういう言葉を編み出したのか^^;;。
まあ,普通にベテランとでも言えばいいのに。カメラのカタログなどで,プロまたはハイアマチュアの方にお薦め,
などとまじめにかいてあるのを見ると,気持ちが悪くて,笑ってしまう。

 

8月16日

私の学生時代,1970年代,学生運動はすでに過去のものであった。入学式はまだ復活したばかりだったし,下宿での勧誘は激しく,
それなりの緊張感はあったとしても,キャンパス内は静かだった。2ちゃんねる掲示板で,高野悦子「二十歳の原点」が話題となっていて,
この本が今年から「新潮文庫の百冊」に洩れたことを知った。学生運動にかかわり挫折した一人の女子学生の記録として読んだときには,
たしかに時代背景がわからないと馴染みにくい。しかしそれを除いても,高野さんの孤独感,率直さなど,一人の若者,
学生として純粋に共感を得られるところが多いのではないかと思う。

旅に出よう
テントとシュラフの入ったザックをしょい
ポケットには一箱の煙草と笛をもち
旅に出よう
出発の日は雨がよい
霧のようにやわらかい春の雨の日がよい
萌え出でた若芽がしっとりとぬれながら
そして富士の山にあるという
原始林の中にゆこう
ゆっくりとあせることなく
大きな杉の古木にきたら
一層暗いその根本に腰をおろして休もう
そして独占の機械工場で作られた一箱の煙草を取り出して
暗い古樹の下で一本の煙草を喫おう
近代社会の臭いのする その煙を
古木よ お前は何と感じるか
原始林の中にあるという湖をさがそう
そしてその岸辺にたたずんで
一本の煙草を喫おう
煙をすべて吐き出して
ザックのかたわらで静かに休もう
原始林を暗やみが包みこむ頃になったら
湖に小舟を浮かべよう
衣服を脱ぎすて
すべらかな肌をやみにつつみ
左手に笛をもって
湖の水面を暗やみの中に漂いながら
笛をふこう
小舟の幽かなるうつろいのさざめきの中
中天より涼風を肌に流させながら
静かに眠ろう
そしてただ笛を深い湖底に沈ませよう

長い日記を読み続けてたどり着く,この静謐な詩。1969年6月23日未明,高野さんが鉄道自殺する前の絶筆である。

 

8月15日

朝日文庫の新刊「ライカとその時代」(酒井修一)を読む。 第1次世界大戦後のバルナック型ライカの誕生から,
第2次世界大戦後のライカM3の出現まで,日本製を含め数多く作られた小型カメラの歴史をも含め, 同時代の社会現象との関連のなかで,
歴史を考証するという真面目な本。それまでプレスでは使えないカメラと考えられていたライカを,2・
26事件で朝日新聞社が急遽導入した話など,話題は豊富。もう少し図版があれば,と思うが,普段チョートク本ばかり読んでいる私には,
なかなか勉強になった。★★★☆☆

 

8月10~14日

さて,遅ればせながら,私も夏休みモードに入りました。とはいえ,帰省先もない我が家のこと,
近くの海やプールで普段の休日と変わらぬ日々を送っています。

 

8月9日

岩波文庫の新刊(といっても7月分ですが)「フランス革命についての省察」 (上)についてのメモ。著者エドマンド・バーク
(Edmund Burke 1729-1797)は,イギリスの政治家,政治哲学者。ダブリンに生まれ,
法律家を目指してロンドンに出たが,「自然社会の擁護」や「崇高と美の観念の起原」が評判となり文壇へ。その後,ウイッグ党貴族の秘書,
下院議員となる。国王の金権的専制による憲政の危機に際して,近代の政党政治の原理を唱えた。アメリカ独立戦争の際には,
「アメリカの課税に関する演説」,「植民地との和解決議の提案に関する演説」などを唱え,植民地への軍事介入の非を熱烈に説き,
アメリカの抵抗を支持した。フランス革命における民主主義と平等の理念に不信を感じていたバークは,革命が勃発するや,
これをヨーロッパ秩序への挑戦と受けとめて本書を執筆した。政治思想史上,本書は保守主義の聖典と称され,大きな影響を与えた。
有名な書だけあって,原文もあちこちで読めるが,
とりあえずここを
。★★★☆☆

 

8月8日

林真理子の新刊「美女入門Part2」を読む。ほかの女性作家のものは全然読まないのに,林真理子に限って必ず読む,
というのも我ながら不思議。以前,読書猿で『ほんとうにこの人は何をやっても大間違い。金にアカして何百万の着物をバカのように買うのだが,
バカ丸だしというより,何か新興宗教にはまって何億とつぎ込む(ほかにやることない,おもいつけない)成金ババアのよう。ときどき,この
「バカで豪快な金遣いを見るとスッとする」という手取り16万くらいのOLの人がいるが,ご用心ご用心。』というのを読んだが,
ライカオヤジとかニコンオヤジが大好きな私としては,金持ちっぽく,バカっぽく見せるのも芸のうちと感心。それより,
手取り0万円の専業主婦なのに,バカスカ使いまくる林真理子教のカミサンをどうにかしてくれ。★★★★☆

 

8月7日

いやいや,通勤電車が若干空いていて嬉しいです。ふだんは,立ったまま文庫本を広げるもの大変なんですよね。
いつになったら夏休みがとれるのやら….。

岩波文庫新刊,トロツキー「ロシア革命史」(1)を読み始める。トロツキーについては,スターリン批判の「裏切られた革命」
がすでに岩波文庫から出ており,今回いよいよ本命の登場というわけなのだが,「ロシア革命史」自体は,すでに角川文庫版で出ているので,
こちらで読んだ人も多いだろう(わたしはその復刻版で読んだ)。というわけで,いまさらながらトロツキーの紹介。★★★★☆

※レオン・トロツキー(1879~1940年) ウクライナのユダヤ人農家出身のロシア革命指導者。本名レフ・ブロンシュタイン。
1902年トロツキー名の偽造パスポートでロンドンに亡命。1917年の「10月革命」
でペトログラード(現サンクトペテルブルク)のソビエト議長となり,「ソビエト政府」成立後は外務・
陸海軍人民委員として赤軍の創設を指導した。革命指導者の中で最も知的とされながら敵も多く,世界革命の必要性を説く「永久革命論」は,
ソ連一国だけでも社会主義は建設できるとするスターリンの「一国社会主義論」と激しく対立した。
レーニン死後の権力闘争に敗れて29年に国外追放。38年にはソ連主導の第3インターナショナル(コミンテルン)に対抗する国際左翼組織
「第4インターナショナル」を結成して,ソ連批判を続けた。

※レーニンが1924年に死去したとき,後継指導者になりうる人物の中で,
革命理論と実践の両面でレーニンに次ぐ権威をもっていたのは当時44歳のトロツキーであった。しかし,
トロツキーのあまりの鋭さと果断さが古参のボルシェビキ革命家らを恐れさせた。トロツキーより若いが,
古参党員としての権威はあったジノビエフとカーメネフはトロツキーを警戒した。そして,
それ以上に強い敵がい心を抱いていたのはトロツキーとほぼ同年齢のスターリンである。
スターリンは明晰な理論や華やかな活動歴ではトロツキーらに遠く及ばない。しかし,スターリンには「権威」よりも「組織」があった。
そのころ,スターリンは党内事務を統括する書記長として,しだいに拡大する党官僚機構を掌握することで基盤を固めはじめていた。
レーニンが発作で倒れる直前の1922年4月に新設された書記長にスターリンが就いたとき,
ほかの最高幹部らはこのポストをあまり重視していなかった。最初に事態の重大さに気づいたのはレーニンだった。彼は遺書となった
「大会への手紙」でスターリンの権限拡大と独善的な権力行使への懸念を表明して,書記長解任を求める。
スターリンがレーニン死後も書記長にとどまることができたのは,トロツキーを警戒するジノビエフ,カーメネフがスターリンと組んで,
指導部内で多数派を形成したからだ。トロツキーは孤立した。レーニン亡きあとの最高権威と目されたトロツキーを抑えることで,
スターリンの立場はいっそう強固になった。スターリンに主導権を握られ,
思惑の外れたジノビエフとカーメネフは一転してトロツキーとともに反スターリン闘争を開始したものの,時すでに遅かった。
3人は政治局から追われて失脚するが,スターリンはこの反抗をけっして忘れることはなかった。ジノビエフとカーメネフは,
それから10年後にスターリンが始めた大粛清のなかで銃殺され,そのさらに数年後,
メキシコに亡命したトロツキーもスターリンの指令で暗殺される。(産経新聞ほか)

 

8月4~6日

夏休み真っ盛りという感じですね。週末は買い物で新宿へ行き,やはりますます暑苦しい思いをしてきました。あんまり暑いので,
ヨドバシカメラに寄った帰り,歌舞伎町の方で涼んでいこうか…とも一瞬思いましたが,なんとか踏みとどまることができたのは,
我ながらエライ!と思いました^^。

岩波文庫新刊「一遍聖絵」を読む。我が町藤沢市には一遍を宗祖とする時宗総本山「遊行寺」があり,
国宝一遍聖絵もここに納められている。本書は,鎌倉仏教の祖師たちの中で,とりわけ行動的な一遍(1239~89)の伝記で,
弟子聖戒が絵師と共に師の足跡をたどって全国を行脚して執筆,師の没後10年に成ったもの。画図は当時の生活風俗を伝え,社会経済史・
民衆史の史料としても貴重である。若杉準治氏によると,『一遍の絵伝は,聖戒の「一遍聖絵」と,
他阿真教の弟子宗俊が徳治2年(1307)以前に撰述した「遊行上人絵」の2つがある。聖戒本は一遍の生涯の足跡を克明に追い,
それを再現するところに特色があり,祖師絵伝通有の誇張や神聖化は殆ど見られない。それに対し,宗俊本は多くを他阿真教の伝にあて,
時宗における他阿真教の正統性を特筆するところに特色がある。聖戒本の成立は,その意図に関らず,
真教を祖とする遊行派にとって1つの脅威であり,
一遍の継承者は聖戒ではなく真教であることを明言する必要に迫られて宗俊本は撰述されたのである。
そして聖戒本の流布の範囲が限られるのに対し,宗俊本が広く流布していることは,その後の遊行派の拡大を示すものであり,
また宗俊本を転写することが,遊行派の正統性を継承する意味を持っていたことを示している。
時宗の祖師絵伝はこのように派閥意識が顕著であり,また逆に宗派の宣揚のために“絵巻”
という形式の有効性が強く意識されているところに特色がある。』★★★★☆

 

8月3日

光文社文庫の新刊,小町文雄「趣味は佃煮」を読む。ロシア語専門家の著者が,無趣味を脱すべく,なぜか佃煮(や乾物,干物,薫製など)
の自家製造に手を出し,面倒だけど意外になんでもできた,というお話。佃煮の作り方,なんて普段あまり考えたことがなかったが,
これを読んで,やっぱり大変なんだ,とわかった。少なくとも手間と時間はかかる(あたりまえか)ので,やっぱり「趣味」の範疇だな,これは。
★★★☆☆

 

8月1~2日

岩波文庫新刊「アイルランド短篇選」(橋本槇矩編訳)を読む。18世紀のエッジワースから現役のオブライエンまで,
年代を追って15作家の短篇を取り上げており,なかには,アイルランドの解放運動の歴史に関係する作品も多く,
その背景を知らないとわかりにくいところがある(解説で比較的詳しく説明されている)。
もちろんすべてが政治的な問題や荒涼とした自然だけを題材としているわけではなく,
ダブリンという特徴ある都会に生きる人々を描いたジョイスの作品など,ヴァラエティーに富んだ楽しい作品も多い。★★★★☆

アイルランドに関しては,近代作家を紹介した
「ロレンスと読むアイルランド文学」
や,文学・風土などを広く紹介した
「アイルランド文学の歴史」
が参考になる。