芸術におけるわが生涯(スタニスラフスキー)

芸術におけるわが生涯 上 (1) (岩波文庫 赤 629-1)私はサーカスが好きで,とくに空中ブランコが大好き。先日もまた,ボリショイサーカスを見に行ってきました。もっとも,私はただ口をぽかーんとあけて,眺めているだけですが,最近,岩波文庫から出た,モスクワ生まれの演出家,スタニスラフスキーの自叙伝「芸術におけるわが生涯」を読むと,彼がサーカスやオペラ,バレエなどに親しんだ子供の頃から,その観察力の鋭さ,精緻さは,既に充分発揮されていたという感じを受けました。
本書は,旧岩波文庫本(3巻本)で親しく,「はしがき」によると,旧本は江川卓が全文を翻訳し,蔵原惟人がそれに手を入れて,出版の都合で蔵原訳として出されたとのこと。その後,改訳して単行本として出されたときに,両者の共訳となり,今回はその文庫化となります。
幼少期はもとより,演劇学校時代や駆け出しの俳優だった頃の思い出話が面白く,演劇に日頃親しみの無い人でも,一読の価値があります。
※正確には,岩波文庫のスタニスラフスキー「芸術におけるわが生涯」は今回が3度目の岩波文庫入り。最初が島田謹二訳「スタニスラフスキー自伝」(1932年)。ただし,上巻のみ。2度目は,生前最後のロシア語版をもとにした蔵原惟人訳「芸術におけるわが生涯」(全3巻,1953~56年)。その後,1983年に単行本として出た蔵原惟人・江川卓訳(上下2巻)を今回,岩波文庫に収録,となります。