けものたち・死者の時(ピエール・ガスカール)

仕事がテンパっているので,少々めげ気味ですが,そんな気分をますます鬱々とさせる岩波文庫の新刊「けものたち・死者の時」(ピエール・ガスカール)を読みました。
本書は1953年に出版されてすぐ,55年に岩波書店から翻訳が出ていますから,そちらで親しんだ方も多いかと思いますが,私は初めて。暗いなぁ・・・と思いながらも,その陰鬱な世界にひきこまれてしまい,止めることができない,悔しいけれど。
短篇集「けものたち」は,ふつうの動物物語と全く違い,人間と動物との惨めな戦いを描いていますが,そこでは人間も一つのけものであり,他の動物を虐待することで,自ら辱められていく存在だと感じさせられます。ただ,人間にはそこに強烈な苦悩があるんですな。
また,中篇「死者の時」は,作者の捕虜経験に基づく自伝的作品で,第2次大戦でドイツ軍の捕虜となり懲罰収容所で墓堀に従事した日々を描いたもの。こちらも当然ながら絶望的な気分に充ち満ちています。