最新世界周航記(上)(ダンピア)

最新世界周航記 上 (1)岩波文庫「最新世界周航記(上)」(ダンピア)を読む。
本書は17世紀のイギリスの海賊ウィリアム・ダンピアの航海記。ダンビアは海賊と呼ばれるものの,3度の世界周航に成功した探検家であり,訪れた各地の自然や風俗を詳細に記録した博物学者兼作家でもある。もちろん,敵国の海賊たちの裏をかきながら,敵船を拿捕したり,村々を襲ったりという暴力的な収奪の記録もあるのだが,実際に印象に残るのは,現地の人々の暮らしぶりや未開の地の荒々しい自然であり,航海記というより,一人の冒険家の物語である。
もっとも,ひとくくりに海賊としてしまうのがいけないのかもしれず,ダンビアのような私掠海賊は,国王が発行した免許状を持っていた。ダンピアの手記はイギリス海軍省に注目され,1699年にはオーストラリア,ニューギニア探検の指揮もとっているから,国家公認海賊,または軍人といってもいいのだろう。
いかにも「パイレーツ・オブ・カリビアン」絡みで宣伝できそうな本なのだが,この時期に出しながら別にそれをしていないのも岩波らしい中途半端さだな。