アフリカ農場物語(下)(シュライナー)

アフリカ農場物語〈下〉岩波文庫の新刊「アフリカ農場物語(下)」(シュライナー)を読む。
上巻は正直なところ,私にとって楽しく読めるようなものではなかったが,下巻はかなり持ち直してきた。4年間の空白を経て突然帰ってきたリンダルが,当時の社会における女性問題について喋りまくるのだ。そのため,本書はタイトルからすれば美しい自然の中で楽しく暮らす人々の物語・・・といった内容を想像するが,実際には著者の主張が前面に出た,なかなかシビアな話となってくる。
リンダルの主張は真っ正直で明快だが,周囲からは浮いてしまう。会話としては堅苦しい訳のせいかもしれないが,生意気な感じも受ける。しかし,読み終わってみると,彼女自身は憎めない,かわいい人に思えてくるのだ。それに,ここで主張されている生活上の問題は,いまでも我々を悩ましている身近なものに他ならない。
シュライナーは女性解放や平和運動などで早くから日本でも知られており,古くは1917年に神近市子訳で出た「婦人と寄生」などがある。