オフセットは必要悪か?

活版で印刷されていた古い文庫本が,最近のオフセット印刷されたものより読みやすいという話をきくことがあります。たしかに,活版は版面が黒々としてコントラストが高く,紙面の凸凹も好ましく^^,オフセットの薄くのっぺりした印刷より読みやすいと思うことがあります。
しかし文庫本のように頻繁に増刷を繰り返す場合は,活字の摩耗が著しく,ひどいものは,ツブレて判読不能となります。岩波文庫でも,再三増刷した名作にツブレが多く,戦前に一度出たきりで,50年振りに復刊!などというレアな作品は,かえって綺麗だったりしました。
それでも活版命!という人は稀少となりつつあり,私の担当している雑誌が先年オフセットに移行したときも,「オフセットは綺麗で見やすいね」という編集者がたくさんいました。年輩の編集者は笑っていましたが….。実際問題として,活版印刷ができる印刷所がなくなりつつあるので,活版の復権は不可能になり,他社の文庫に遅れをとりましたが,岩波文庫も(一部の特殊な復刊を除き)すべてオフセット化されています。