山本文庫(昭和11年)刊行書目一覧

山本文庫は、1936(昭和11)年、山本書店から刊行された四六判半裁、60ページほどの文庫シリーズ(全57点)。海外文学を当時の新進の文学者、作家の訳で収めており、定価は10銭。もともと山本書店は、堀辰雄や立原道造などの出版物を手がけており、この文庫シリーズの訳者も、堀、立原、堀口大學、岸田国士など、錚々たる面々を揃えている。

小冊子ゆえ、他の文庫シリーズに比べて古書店で見かけることは少ないが、戦前文学資料として取り上げられることが多く、古書価は高値で安定している。とくに「新しいイブと古いアダム」は稀覯書として名高く、八木福次郎「古本便利帖」によると、一冊しかないともいわれており、ほとんど市場に現れたことがない。

刊行書目一覧(いずれも昭和11年刊)
■青年文学者への忠言(ボオドレエル、中島健蔵、佐藤正彰)
■小散文詩(ボオドレエル、三好達治)
■地の糧抄(ジイド、辻野久憲)
■アリサの日記(ジイド、山内義雄)
■青春(ジイド、山内義雄)
■ゲーテの言葉(石中象治)
■従軍日記(カロッサ、片山敏彦、竹内道雄)
■謝肉祭(ハウプトマン、大野俊一)
■真珠嬢(モーパッサン、岸田国士)
■ヴェニス物語(レニエ、草野貞之)
■ゾグープ大尉のお茶(ケッセル、草柳瑞穂)
■田園詩(トルストイ、平井肇)
■小鳥の英文学(ジェフリズ、戸川秋骨)
■百花村物語(佐藤春夫)
■愛人への手紙(チェホフ、湯浅芳子)
■ロオレンスの手紙(織田正信)
■ランボオ詩抄(中原中也)
■アムステルダムの水夫(アポリネエル、堀辰雄)
■ドニイズ・花売娘(ラディゲ、堀口大學)

■蜜月・幸福(マンスフィールド、平田禿木)
■雄鶏とアルルカン(コクトー、佐藤朔)
■ターニャ(セイフーリナ、湯浅芳子)
■獅子狩(フィリップ、堀口大學)
■恋する人(リルケ、茅野蕭々)
■ポオ論(ボオドレエル、小林秀雄)
■夜の歌(ニーチェ、登張竹風)
■エピキュルの園(フランス、草野貞之)
■博物誌抄(ルナアル、岸田国士)
■千載一遇(ジェームズ、平田禿木)
■病中日記(ドストエフスキー、中山省三郎)
■愛と死の歌(リルケ、笹沢美明)
■鋸山綺談(ポオ、戸川秋骨)
■北京の菓子(周作人、松枝茂夫)
■ララビアタ(ハイゼ、生田春月)
■晩秋(ダウスン、平井呈一)
■魔法の馬(不詳、日夏耿之介)
■銀の指抜(コペ、大野俊一)
■鏡影綺譚(ホフマン、石川道雄)
■乙女らは何を夢みるか(ミュッセ、戸川エマ)
■婚約(ヘッセ、植村敏夫)
■馬車(ゴーゴリー、平井肇)
■アンジュールへの手紙(ジイド、山内義雄)
■抒情挿曲(ハイネ、阪本越郎)
■勝ち誇れる恋の歌(トウルゲーネフ、神西清)
■午後七時(モルナアル、鈴木善太郎)
■娘への手紙(トウルゲーネフ、神西清)
■愛の封印(デレッダ、岩崎純孝)
■狂癲院(ポオ、内藤吐天)
■鳩の夫婦(マンスフィールド、崎山正毅)
■街々の隅から(カルコ、内藤濯)
■ヒアシンスと花薔薇(ノヴァリス、田中・服部)
■キャンタヴィルの幽霊(ワイルド、西村孝次)
■希臘の舞姫(シュニッツレル、管博雄)

■林檎みのる頃(シュトルム、立原道造)
■二十六人と一人(ゴリキイ、湯浅芳子)
■吸血鬼(バイロン、佐藤春夫)
■新しいイヴと古いアダム(ロレンス、原百代)