ふたすじ道・馬(長谷川如是閑)

ふたすじ道・馬 他3篇 (岩波文庫)
長谷川 如是閑
岩波書店
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岩波文庫の新刊「ふたすじ道・馬」(長谷川如是閑)を読む。

長谷川如是閑は岩波文庫で青帯扱い。ということは、思想、文明評論として区分されているわけだが、本書は明治から大正期の雑誌に掲載された小説集であり、内容も堅苦しいものではない。

「ふたすじ道」は21歳の時の処女作。孤児の不良少年が姉と慕う女性に諭されカタギの道を歩もうとするが、その女性が父親の借金と引換に売られてしまうのを引きとめようと店の金に手をつけ、再び悪の道に戻ってしまうという話。ほかに、軍隊時代かわいがっていた軍馬が退役となり曲馬団に売られたことを知った元少佐が、その馬を買い戻すこともできないので、曲馬団入りを志願する話、美しい女性であることより美しい私であることを求め、その美しさを永遠のものとした叔母の思い出話など、当時の世相を反映した小説5篇を収録。