ブリギッタ・森の泉(シュティフター)

ブリギッタ・森の泉 他1篇 (岩波文庫)
シュティフター
岩波書店
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岩波文庫の新刊「ブリギッタ・森の泉 他一篇」(シュティフター)を読む。

岩波文庫に収録されているシュティフターの作品は、旧版の「水晶 石さまざま 他三篇」(422-1)、改編された「みかげ石 他2篇」(422-2)、「水晶 他3篇 石さまざま」(422-3)、「森の小道・二人の姉妹」(422-4)、「男やもめ 他1篇」(422-5)、そして初期短篇集である本書(422-6)となる。

いずれも長く親しまれた短編集で、私も学生時代に水晶・・・を読んでから、淡々と読み進むうちに意外なドラマに引き込まれてしまうシュティフターワールドに魅力を感じて、ここまで読み継いできた。

表題作「ブリギッタ」は、語り手の私が、以前旅の途中で親しくなった大佐と称する紳士に招かれ、彼の領地ハンガリーをひとり訪ねる。そこで少佐はたくさんの使用人を抱えながら、見事な農場経営手腕を見せているのだが、それには隣人であり、その土地の農場経営の先輩である有能な婦人ブリギッタとの協力関係が大事なのだ。

ある日、ブリギッタを紹介された私は、かつて浮気により夫が出奔し息子を一人で育てている彼女と、経歴不詳な独り者の少佐との関係に微妙な雰囲気を感じるものの、二人はあくまで親しい友人としての付き合いを超えてはいない。

そんな時、農場へ狼の群れが侵入し、応戦して負傷したブリギッタの息子が少佐の屋敷に運ばれてくる。ずっと息子のそばで看病を続け、翌朝、意識がはっきりした息子に安堵するブリギッタ。そんな母子を見て涙を流す少佐に、どうしたんですかと訊くと「わたしにはね、子供がないんですよ」 その言葉を聞いたブリギッタは少佐に近づくと…. ここにも意外な結末が待ちかまえていた。