1997年秋の復刊

1997年 秋の復刊

11月は岩波文庫恒例「1997年秋の復刊」が発売されました。本来であれば,その発刊の精神からして,これは岩波書店贖罪の日にならねばならぬハズですが,「待望の復刊」などと読者を有り難がらせるというのは怪しからんことです^^;;。そこで,いまさら買うものなど無いと言えれば格好いいのですが私には残念ながら買わねばならぬものがありました(クーッ!)。

哲学概論

ヴィンデルヴァントの著作は岩波文庫に何点か入っており昔は広く読まれたようなのですが,最近はみな絶版。この「哲学概論」も久々の復刊です。初版や改版の発行日はすぐわかりますが,復刊される書目が,いつ絶版になったのか?を調べるのは大変です。(正確には古い解説目録を順番に当たるしかないでしょう) ただ,大ざっぱにいって,「創刊70周年解説総目録」で 著者番号(青234-1とかいうヤツ)がついていない書目はここ20年以内には再版,復刊されていないと考えられます。以前は復刊書目に「戦後初の復刊」とかマークがついていたのにいつのまにか無くなってしまったので,珍しい書目かどうかはこれであたりをつけるしかないようです。

というような能書きを書いてきたのは,まだ本書を読んでいないからなんですが^^;;。

安愚楽鍋

なんか居酒屋のチラシみたいなタイトルは,相変わらず人を食った戯作者・仮名垣魯文の鍋小説。鍋料理が庶民の暮らしの中に入ってきたのは明治2年に江戸市中に牛鍋屋が相次いで開店してから。新しもの好きなら誰にも負けない魯文のこと。さっそくこの流行の風俗を小説に仕立て上げたのが本書。魯文は「士農工商,老若男女,賢愚,貧福おしなべて,牛鍋食わねば開化不進奴(ひらけぬやつ)」と,鼻持ちならぬグルメ評論家ぶり。まあ,牛鍋こそが,明治初期の庶民にとって一番身近な文明開化であったかもしれません。

☆ ☆ ☆ ☆

これだけでは何なので,ほかに注目の書をあげてみましょう。
ここのところ”再復刊”ばかりで面白みが無かったけれど,今回はなかなか渋い選択なので,注文はお早めに!

未来のイヴ

「掲示板」でも話題となった注目の奇書。解説目録の「人間性に対する深き洞察と峻厳なる批判とその芸術境から生れ出る豪華典麗な夢想とが,渾然として融合し,
絢爛たる唐草模様の絵巻物となったのがこの作」ってのは,まったく紹介になってないんじゃないか?

天草本 伊曽保物語

切支丹本まで入れてしまうところが岩波文庫ですが,ほかにも「どちりな・きりしたん」などが出ていて,キリスト教伝来直後の我が国での布教の様子がうかがえるほか,当時の”日本語”を知るための文献として重要。

妻への手紙

ロシアの借金王ドストエフスキーの妻への「清らかな」手紙。モームの「十大小説」ドストエフスキーの部を読んでからこれを読むと,深い味わい^^;;あり。

ブヴァールとペキュシェ

「ボヴァリー夫人」や「感情教育」の不倫王フローベールによるブルジョワ社会批判の書。自己批判はどうした?

こんなとこかな….