2003年3月

3月31日

扶桑社より「リアルロマンス文庫」が創刊。自立した大人の女性のためのロマンス小説シリーズ,とのことで,これは読みそうもないな。
あと,もうすぐ鉄腕アトムの誕生日2003年4月7日ということで,元祖ロボット,岩波文庫のチャペック「ロボット」
が3月14日に復刊されました。

 

3月25~30日

先週はずっと,長崎へ出張していました。40年振りの長崎は,仕事の合間にちょっと覗いただけでもいろいろと感じるところがあり,
有意義な旅でした。路面電車に乗ってたどり着いたグラバー邸は,すっかり修学旅行客相手のように観光化されてしまい,
隣の歴史ある大浦天主堂には少々お気の毒な感じ。平和公園と浦上天主堂は,子供頃の写真がいろいろ残っており,ぜひもう一度と思い,
日曜日早朝のミサの際に訪れました。今にして思えば,前回,母に連れられて平和公園を訪れた際には,
まだ原爆投下から10数年しか経っていなかったはずで,この歳になってもう一度ここに立っていることに,不思議な感じがしました。また,
浦上天主堂では,土地に根付いた信仰ということを感じずにはいられません。ほかに,移動の途中で垣間見た早岐駅は,終戦直後,
大陸からの引き揚げ者でごった返した往時を偲ばせる堂々とした構えで,これも感銘を受けました。子供がもう少し理解出来るようになったら,
もう一度訪ねてみたいと思います。

その間,何冊かの本も読んだのですが,新刊はこれだけ。「一枚のはがき スローメールのおすすめ」(金平敬之助,PHPエル新書)。
最近流行の携帯Eメールは,気楽に出せて早くて安い。しかし,相手のことを思い,本当に伝えたい気持ちを届けるには,
手書きのぬくもりを込めた一枚のはがきがよい。言葉やEメールでは伝えきれない「スローメール」の書き方を紹介。私も最近,
つとめてハガキを書くようにしていますが,肝心なのは,常に手元にハガキと切手を用意しておくことですね。

 

3月24日

岩波文庫「デイヴィッド・コパフィールド」最終巻を読了。足かけ9ヵ月かかっての完結でしたが,
おかげでじっくり読むことが出来ました。学生時代,一気呵成に読んだときには気付かなかった細かい描写に惹かれたところもありましたが,
正直なところ,あまりに話が都合良く運びすぎて,感動したか?と問われると・・・。まあ,30年も経てば,こちらもだいぶひねくれた,
ということなのでしょう。あまたある長大な作品中では読みやすい本書,読書における達成感を味わいたい中学生や高校生に,ぜひお薦めします。

 

3月21~23日

週末は,イラク戦争勃発で,なんでも自粛・・・とはならない日本の我が町では,
郊外型の大きなショッピングセンターが賑々しくオープン。さっそく息子と二人で覗いてきたが,代わり映えのしないショップばかりで残念。
我が町は人口40万の東京の典型的なベッドタウンなのだが,こういうのができるところをみると田舎なんだ,と痛感。
そもそもクルマじゃないと行くのが大変なのだ。ちなみにCDショップに比べて小さな書店も一つ入っていた。

こういう質問をいただきました。『書店でもサイトでも調べてみましたが,結局見つからず,困り果てていたところ,
もしやご存知ではないかと思い,メールさせて頂きました。内容はこれまた,なぞなぞのようなんですが。岩波文庫。20年前に読みました。
ロシアの話しだったと思います。革命家の話しだったと思います。「進んでる夫婦」で各自自立して別居して(家庭内)いました。
あ~これしか覚えてないんですが,その当時とてもあこがれては読んだのは覚えています。また読みたいのですが・・・・
こんな曖昧な記憶なんですが,もしお分かりでしたら教えてください。宜しくお願いいたします。』 お心当たりの方は,掲示板へぜひ。

 

3月20日

久し振りに「チップス先生さようなら」(ヒルトン)を読んだ(CDROM版新潮文庫で)。腕白な生徒たち,出征した生徒の戦死,
若い教師との確執,若く美しかった妻・・・隠退生活を送る英国パブリックスクールの中学教師チップスが,
過ぎ去った60年あまりの学園生活を回想する。我々がイメージする古き良き英国の学園生活そのままに,
教師と生徒の心温まるふれ合いを描いた本書は,映画化もされ,たくさんの人の笑いと涙を誘った。学生時代,本書を読んで感動したときには,
自分の精神が老成している(というか老人趣味がある)のかしらとも思ったが,それからずっと,ときどき読み返してみる本の一つとなっている。
チップスは決してとびぬけて優秀な教師ではなかったが,誰が見ても立派な教師である。学生生活で,こういう立派な教師に出会えた人は,
幸せだと思う。

 

3月19日

私は整理整頓が苦手である。その言い訳として,「乱雑な部屋は落ち着く」と言い張ってきたのだが,ちくま文庫の新刊「Tokyo
style」(都築響一)を読むと,狭い部屋の雑然とした心地よさ,モノに囲まれた安心感をつくづく感じる。本書は,
10年ほど前に12000円の大判写真集として出たものの2度目の文庫化(それでも1200円の「大著」だ)。著者によると,『
「誰がこんな普通のアパートの部屋の写真を見るだろうか?」という考えも少しありました。というのも,
通常メディアで取り上げられる家や暮らしというのは,すごく美しいものや伝統的なもの,豊かなもの,あるいはその逆の貧しいものだったから。
けれども本を出してみたら,そのリアリティに共感する人が意外に多かったのです。みんなが高価なインテリアの部屋で暮らせるわけじゃない。
「勇気がでました」という反響の手紙もたくさんもらいました』。我が家はカミサンの尽力で,私の部屋以外は綺麗である。
無い物ねだりではないが,学生時代の本やレコードに囲まれた風呂無し,共同トイレの一間のアパートに,もう一度戻ってみたいと,
ときどき思う。

 

3月18日

昨夜は,また雨になり,古書市も店じまい。このまま幻の古書市にならねばよいが….。3月分の岩波文庫新刊をAmazonに注文。
最近は,書店に長居できる時間がないので,もっぱら通販頼りだ。それなら,衝動買いが少なくなったかというと,
逆に関連書籍まで芋蔓式に頼んでしまうので,かえって出費が嵩んでいる。クレジット請求にカミサンのチェックが入らなければ,
もっと買いまくっているな,きっと。

 

3月17日

新橋駅恒例の大古本市開催中。ここのところ,毎回雨にたたられているが,昨日は夕方から雨も上がり,
なんとか店を開くことが出来たようだ。帰りに文庫本や雑誌で面白いものがないか,覗いていくつもり。

 

3月12~16日

土曜日は,息子の卒園式。あいにくの雨模様でしたが,みんな元気で卒園できたのはなにより。仲のよかった友達ともお別れ,
とはいっても,ローカルな幼稚園なので,また4月になれば小学校で一緒になるのですね。その夜は,幼稚園の父母の懇親会が,
なぜかニューハーフ・クラブで。参加者は,父親より母親の方が圧倒的に多かったのですが,こちらは異様な盛り上がりでした。

えい文庫の新刊「のんびり自転車の旅」を読みました。ロードバイク,MTB,電動自転車など,いろいろなスタイルでかけよう!
という自転車小旅行ガイド。行き先は,天城山,清里高原,奥多摩などの林道から,横浜やお台場などの街乗りまで。
ツーリングに役立つアイデア・コラムもあります。

 

3月11日

白水社の本棚No.107齋藤美奈子「愛書狂」に『先日,5歳の幼稚園児と『クマのプーさん』のことで揉めた。このクソガキは「あ,
ティガー」などと生意気な口をきくのである。「トラーでしょ」「ティガーだよ」。『クマのプーさん』
なら石井桃子訳の岩波少年文庫版に決まっていると思っている私は,トラーをティガー,コブタをピグレットと発音する彼が気に入らない。
聞けばディズニー版の『プー』では(たぶん原作でも)そう呼ぶのだそうだ』という一文があった。私も石井桃子版を読んで育った世代だから,
最初は違和感があったが,ディズニーランドに日参するうちに消えてしまった。齋藤氏はディズニーランドには行く気がないという。
『ディズニーというアメリカ資本に支配された児童文化のグローバリゼーションは放置し難い』からだ。しかし,
かつてそのような考え方の塊であったフランスに作られたユーロディズニーランドは,大方の予想を裏切り,ディズニーリゾート・
パリと名前まで変えて健在である。

 

3月10日

今月号のラピタ「「粋な万年筆」の見どころ」を読む。お手軽なボールペンやシャーペンが筆記具の主流となった今,
万年筆はいかにしてその存在感を示していこうとしているか,というのがテーマ。ファッションアイテム,コレクターズアイテム
(モンブランの限定品コレクションのような)となりつつある万年筆を,自分の手に馴染む道具として使っている作家やデザイナー,建築家,
画家を紹介している。各地の万年筆工房やショップ案内もあるので,自分だけの1本を探している人にも役立つ。万年筆の効能の一つは,
私のような筆無精かつヘタヘタ字の人間を救うことにあるのだ。すべてを「味」ということにして….。

 

3月7~9日

「林芙美子随筆集」のなかに,「わが装幀の記」という小文があり,これによると林さんは,
豪華版や限定本といった少数の人に限られた愛玩本は,数寄屋造りに西洋人でも住んでいるように何となく寒々しいとし,本を装幀するには,
なかの紙や活字と融け合わない布ではなく,紙にまさるものはない,と言っている。また,真っ白い紙の装幀が好きで,
しかも心にボール紙を入れない柔らかい表紙がよく,何処でも読める本として成功している本は岩波文庫のあの装幀だと思う,とのこと。
これは同感。

週末は,子供の体操クラブの試技会なるものに行ってきた。小学生でも選手クラスの生徒は,なかなか見応えのある演技をしていたが,
園児クラスは歳相応で,演技というよりお遊び。それでも,子供達なりに結構緊張しているようで微笑ましい。結果は,本人もビックリしたよ,
と言っていたが意外にも園児の部で優勝。金メダルを貰って帰ってきた。めでたしめでたし。

 

3月6日

シュティフターの続き,本邦初訳「二人の姉妹」を読む。「森の小道」と比べて,訳文のトーンが異なる(逐語調というか)ので,
違和感あり。しかし,旅先で親しくなった男を探し求めて,はるばると山に囲まれた彼の家を訪れた主人公は,
大らかな自然と音楽を友とし両親とひっそり暮らす美しい娘達と出会い,その生活に親しむ….といういかにもシュティフターらしい物語,
私自身は「森の小道」よりも楽しめました。

 

3月5日

岩波文庫シュティフター「森の小道」を読む。お金持ちだが孤独な変わり者といわれていた主人公ティブリウスは,
自分があらゆる病気を背負い込んでいると思いこみ,田舎の温泉に湯治に出かける。温泉地で周囲の森や山を歩き回るうち,
素敵な散歩道を見つけ,あるときそこで,美しい少女と出会う。毎日少女と出会うことが楽しみとなり,
ついに二人は結ばれる….というメルヘンチックなお話。シュティフターらしい自然描写が美しく,ほのぼのとした気分にはなりますが,
当時の厳しい社会情勢や,晩年,養女の自殺後,自らも神経症を病んで自殺したシュティフターの生涯についても思いを馳せてみたい。

 

3月4日

岩波文庫の新刊「林芙美子随筆集」を読む。はやくも重版中とのことで,なかなか売れているよう。著者自身
「安らかで愉しい気持ちで綴った」というとおり,ほのぼのとした書き振りが心地よい。が,
林芙美子を女流文壇の長老であったと思っていた人間にとって,ここでの若々しさと47歳で急逝したということは實に意外だったのだ。

 

3月3日

宮脇俊三氏が亡くなった。学生時代に読んだ国鉄完乗の記録「時刻表2万キロ」(1978年)以来,
ほとんどの作品を読んできたつもりですが,マニアックな話題を扱いながらも,けっして独りよがりにならず,淡々と,
しかも余裕のある語り口には,いつも感心させられました。かつては「中央公論」編集長として「どくとるマンボウ航海記」などを手がけたほか,
鉄道紀行を文芸の一ジャンルとして確立した功績で菊池寛賞も受賞しました。ご冥福をお祈りいたします。

 

3月1~2日

岩波文庫の新刊「森の小道・二人の姉妹」(シュティフター)を読んでいます。が,こういう上品な作品は,
花粉で鼻づまりの季節には辛いですな。というわけで,これは読み終わったらまた。