電子書籍化

音楽CDの売上げがここ数年漸減し,8cmCDなどは前年比25%にとどまったという。これには,レンタルやネット上での音楽データの配信や交換(違法なものも含めて)の影響が大きいといわれている。かつてFM放送をアナログテープデッキで録音していた頃は,オリジナルのレコードとは明らかに音質の差があったのだから,どうしてもレコードで持っていたい,という気持ちが働いていたのに,デジタル化の進歩によって,CDはオリジナルと遜色のないコピーが手軽にできるのだから,売れなくなるのも当たり前か。
それでも,アーティストを応援する意味も含めて,高いお金を出して買って手元に置いておきたいと思うCDがたくさんあればいいのだろうが,製作会社の熱心なPRに比べて,最近はそういう気をおこさせるCDが少ないように思える。お手軽になった分だけ,中身も薄く感じられるのだろうか。そもそも「アルバム」といった形式が馴染まなくなってきているのかもしれない。あるアーティストのオリジナル曲を10曲程度1枚のLPやCDに集めて,といった形式は,LPレコードが出てからずっと続いてきた。それでも,かつてはシングルレコード3,4枚がヒットすると,それを中心にアルバムを製作していたので,シングルはほとんど買わない人でも,まとまったので買ってみようか,という気にさせられることがあった。それがいつの間にか,シングル1枚(あるいはシングルなし)につきアルバム1枚というのが当たり前になり,アルバム毎月連続×枚リリース,などと話題作りをするようになった。そうなると,抱き合わせ販売ではないが,中身の濃い(あるいは親しみやすい)アルバムがなくなり,MDやCD-Rに自分の好きな曲だけを集めて聴くというスタイルが一層すすむことになる。
翻って,書籍の場合は,未だ電子書籍化が進まず,読むためには購入するのが普通だ。それでも最近,Web上の掲示板等をプリントアウトして通勤電車の中で読んだりしている。A4用紙をガサゴソとめくるのは面倒なのだが,文章を読むこと自体は,慣れればそれほど問題がないかな,という気もしてきた。「青空文庫」のような電子化活動が進展し,クラッシックな作品はすべてWeb上にある,といった時代がきたとき,岩波文庫は,単なる電子化のためのネタ本になってしまうのだろうか。