「探偵」傑作選

光文社文庫の新刊,幻の探偵雑誌シリーズ「探偵」傑作選を読む。
このシリーズも早9冊目。のこりは「新青年」1冊となった。本書には,「探偵」,「月刊探偵」,「探偵・映画」から各々数点を収録。中心となる「探偵」誌は,昭和6年創刊。甲賀三郎,横溝正史,浜尾四郎などの豪華な執筆者を擁し,クリスティの翻訳物なども取り上げていたが,その年のうちに「犯罪実話」という扇情的な猟奇誌に姿を変えてしまった。
甲賀,横溝,木蘇穀,城昌幸,橋本五郎,角田喜久雄,海野十三などの諸作に加え,J・D・カーの密室犯罪の研究,探偵小説の本質的要件,探偵小説に於けるフェーアについて,など興味深い評論も収めた本書は,B級と開き直った勢いで,意外に時代を感じさせない。