1999年8月

8月30,31日

高城剛氏によると,CD時代になってから,曲は頭サビが普通になったらしい。CDでは,曲を途中から聴かず,
最初の部分だけをサーチしたりするため,一番の聴きどころを最初に持ってくるようになったということですが,もし電子本が普及したとしたら,
やはりそうなるのではないかという予想があります。オンライン書店からダウンロードする場合など,いまの紙の本を書店で品定めするように,
この辺が盛り上がりそうだな,とか,最後から読んじゃえ,とかまず解説を….などということがしにくくなるためです。
最初からいきなり盛り上げておいて,一転回想風になるというパターンですかな~。

 

8月29日

また新しい書籍・CDなどの通販サイトJBOOKがオープンしました….と思ったら,
これは文教堂書店の運営するものなのですね。迅速な配達と安い手数料が売り物のようです。書籍の検索を試してみましたが,
林真理子で160件余と結構ヒットしました。メールによる情報サービスもあります。

 

8月28日

最近,「ジュニア音楽図書館」なる子供向けの音楽家の伝記本シリーズを読んでいます。ベートーヴェンやモーツアルトは別として,
音楽ファンでもドビュッシーやフォスターの生涯を詳しく知っている人は少ないんじゃないかしら。このシリーズ,松本零士がワーグナー,
砂川しげひさはドヴォルザーク,ほかに江間章子や立原えりか,やなせたかしなど,ヴァラエティーに富んだ執筆陣で楽しめます。
現役で出版中かはわからないんですが….。

 

8月27日

「銀河の世界」は,ハッブルが1935年に大学で行った講義録に補足したもの。宇宙の膨張や変光星,
銀河の分布など高校の授業で取り上げられるような内容ですが,なによりそれらの発見者自ら易しく語ってくれるところが嬉しい。本書には,
ウィルソン山天文台の当時世界最大級だった100インチ反射望遠鏡により撮影された写真もいくつか掲載されています。

その後の観測技術の進歩は目覚しく,かつてハッブルが「正しい知識を10億倍に広げた」
と賛美したこのウィルソン山の望遠鏡と同程度の径を持つ宇宙望遠鏡が,1990年にスペースシャトルによって打ち上げられました。
その宇宙望遠鏡の大活躍により,ハッブルの名は現代の我々にも特に親しいものとなっています。

 

8月26日

「なんでも鑑定団」ではないが,明治時代にも玩具の収集に一家言持つ人がいました。「梵雲庵雑話」の著者淡島寒月で,趣味人,
江戸人としての意気を示したこのエッセイ集は,玩具コレクターの正体や,失われてしまった懐かしい江戸の風物,
明治初期の文士らとの交流を生き生きと描いていて,どこからでも楽しく読むことができます。ウクレレ弾いてジャワ土人の踊りを踊ったり,
オカリナでスペイン音楽などもたしなむんだそうで….恐れ入りました。

 

8月25日

紀田順一郎氏ひさびさの古書ミステリー「第三閲覧室」(新潮社)がでました。専門の読書論のほかに,「鹿の幻影」,
「古本屋探偵の事件簿」などの創作物がある紀田氏ですが,今回は大学の図書室で,稀覯本をめぐり女性司書が殺されるというストーリー。
他の作家の稀覯本や偽本にかんするミステリー作品は安直すぎる!という著者の意気込みは読みとれます。

 

8月24日

今月の岩波文庫復刊の中に「難波鉦」がありますね。色道諸分,遊女評判記という副題が示すとおり,これは,
江戸初期の大坂を舞台にした「遊び」の指南書です。『難波の鉦(どら)息子が親の目を盗んで遊里へ出かけ,馴染みの遊女に「遊び」
の指南を受ける。遊女達は客の問に応じて,遊里での作法から客と遊女の心理的駆引まで,その手練手管をつぶさに語る』….どうです,
読みたくなったでしょう^^。

 

8月23日

「葛飾北斎伝」を読んでいます。近くの書店の平台でも,新刊4点のうち本書のみほとんど残りがない状況。これまで手に入れにくかった
(らしい)本だけに,結構売れているのではないかしら。脚注の入れ方などが黄帯風だし,明治20年代の文章は,
一見読みにくい感じを受けますが,内容は平易に書かれており,たくさんの資料や関係者の話などをもとに,
北斎の生涯を明らかにしていく過程は興味深く,浮世絵史に疎い私でも,どんどん読み進んでしまいました。

 

8月17~22日

ご無沙汰しております。先週後半より夏休みをとり,出かけていました。といっても,東京のホテルに泊まって,
近くの東京ディズニーランドやキャンプ・ディズニーなど,もっぱら子供のお相手です。まあ,ディズニーランドなど日帰りでもいいのですが,
この暑さの中では参ってしまいます….。そんな猛暑の中,頑張って14アトラクション/dayという記録を達成いたしました^^;;。
カミサンはもっぱら涼しいショップ内でお買い物。普段の罪滅ぼしだと思って,我慢我慢。

そんなわけで,読んだ文庫本は「四十歳からのバイクライフ」(小学館)。
SF作家の豊田有恒氏が熟年ライダーの心得やツーリングのノウハウを楽しく解説しています。
自分はバイクやクルマ自体には大して関心がないのですが,読むのは好きなんですね。

 

8月16日

インターネットの海外通販でとくにメジャーなAmazon.com。わたしもときどき注文しているのですが,注文や配送,
キャンセルの対応など,さすがに良くできていますね。気軽に注文できるので,ついつい買いすぎてしまうのが困りもの….。20年ほど前,
学生時代に書店経由で注文したペーパーバックスの恐ろしい値段を考えると,10数ドルの運賃などかわいいものです^^;;。

 

8月12~15日

ようやく夏休みモードに入った感じですが,とくに遠出する予定もないゆえ,荒俣氏の博物図譜などパラパラめくりながら,
のんびりと過ごしています。そんな中,飛び込んできた往年の天才ヴァイオリニスト渡辺茂夫氏の訃報は,大きなショックでした。最近,
CDや本で,少年の頃の演奏や記録が取り上げられ,関心が集まっていたところだったのに….。渡辺さんは,父親からヴァイオリンを習い,
7歳でデビューリサイタルを開き話題を集め,54年に来日したハイフェッツにも絶賛され翌年渡米。
ジュリアード音楽院で最年少の奨学生となりましたが,3年後に睡眠薬の飲み過ぎで寝たきりとなり,58年に帰国していました。詳しくは,
「神童」(山本茂著・文芸春秋)を。

リンク集に,岩波文庫の赤帯に関するサイト「Dear Mr. Iwanami…」を追加しました。

 

8月11日

鎌田さとし「トヨタと日産」(講談社文庫)は,「自動車絶望工場」につづく自動車工場ルポですが,その中に,「自動車絶望工場」
が大宅壮一ノンフィクション賞を逃した経緯が書かれていて,選考委員の一人が「・・・絶望の裏に希望がなければ,告発になり,
それでは問題解決にならない」と言ったのに対し,鎌田が「会社の広報部に行ってPR記事を書けというのか!」と反発したとのこと。
実際に工場に潜り込んで書き続ける鎌田さんのレポートには,なかなか迫力があります。

 

8月10日

カミサンは林真理子ファンなので,新作をマメに買っています。私自身は,文庫本になったのを時々読む程度。どちらにしても我が家では,
イタリアのブティックで棚ごと買い占めるようなマネはできませんが,お金のある人がいろいろ買いまくる話というのは,結構好きです^^;;。
(また新しい Ukulele “PLINZI” made in USA を買ってしまった。
カミサンには6万円だったと言ってあるが….。)

 

8月7~9日

夏休みの宿題として,「文庫本」に関する参考図書一覧を作っています(まだ途中です)。手元にある本を中心に,
書影とコメントをつけて一覧にするつもりですが,ほかにこんな面白い本があるよ!という方は,ぜひ教えて下さい。

 

文庫目録・カタログ
総合文庫目録 総合文庫目録刊行会 1998
便利な文庫の総目録 柿添昭徳編 1996 文庫の会(日本出版販売)
ニッポン文庫大全 紀田順一郎ほか編 1997
岩波文庫解説総目録 岩波文庫編集部編 1997 岩波書店
角川書店図書目録 昭和20-50年 角川書店編 1995 角川書店
文庫本学
雑誌「文庫」 岩波文庫の会 1997(復刻) 岩波書店
文庫本雑学ノート 岡崎武志 1998 ダイヤモンド社
文庫そのすべて 矢口進也 1979 図書新聞
文庫本繁昌記 矢口進也 1984 日本古書通信社(こつう豆本)
文庫の整理学 紀田順一郎 1985 講談社
岩波書店 岩波茂雄 栗田確也編 1968 栗田書店
ブックガイド
絶版文庫交響楽 近藤健児 1999 青弓社
岩波文庫の黄帯と緑帯を読む 門谷建蔵 1998 青弓社
岩波文庫の赤帯を読む 門谷建蔵 1997 青弓社
絶版文庫の漁誌学 すずきゆたか 1988 青弓社
絶版文庫発掘ノート 岩男淳一郎 1983 青弓社
文庫一番煎じ 柿添昭徳 1995 世界文化社
文庫本の快楽 安原顕編 1992 メタローグ
文庫中毒 井狩春男編 1992 ブロンズ
文庫へのみち(正続) 小田切進 1981 東京新聞出版
この文庫が好き! 小説トリッパー編 1998 朝日新聞社
文庫新書で読む日本の書物「古代編」 小山田和夫 1997 笠間書院
ザ★文庫快説001(ゼロゼロワン) 遊工房編 1992 メディアパル
風の文庫談義 百目鬼恭三郎 1991 文藝春秋
活字中毒養成ギプス ぼくらはカルチャー探偵団編 1998 角川書店
ジャンル別文庫本ベスト1000 安原顕編 1995 学研
私の好きな文庫本ベスト5 安原顕編 1994 メタローグ
立川文庫の英雄たち 足立巻一 1987 中央公論社

 

8月6日

文学作品をWeb上で読むためのプロジェクト「青空文庫」に,文学関係のコラム,テーマ別アンソロジー,新登録作品の紹介など,
なかなか読みでのある青空文庫読書新聞が開設されました。

 

8月5日

インターネットラジオの中でも,文学系のサイトがあります。インターネットラジオでは,「草枕」など9作品の朗読と
「源氏物語」の講演が。すばる文学カフェでは,作家が自作を朗読する
「自作朗読会」が流されています。

 

8月4日

緑陰読書などと気取ってみても,あまりの暑さでダウンしそうです。やはり,
現代は緑陰ならぬクーラーの下での読書が適当なようで….。いや,一年中空調完備のオフィスで働いていると,昔の人は偉かった!
とつくづく思いますね。まあ,ウクレレでも弾いて,気楽にいきましょう。1万円も出せばヤマハのウクレレが買えるし,
数多ある教則本の中では「いつでもどこでもウクレレ弾こうよ」というのが,お薦めです。高木ブーのでもいいけど….。

 

8月3日

新橋駅前で恒例のバザーをやっていましたので,文庫本の箱を眺めたところ,残念ながら古いものはあまりありませんでした
(クオヴァディス第2巻のみなんて,なんで出てくるの???)。あいかわらず,ファンタジー系の文庫は,たくさん出ていましたが。いや,
ファンタジー・ノベルに読み返す価値のあるものが少ないなんていう気はないんですよ。岩波文庫だって,
二度三度読み返すものは限られてますから….。

 

8月2日

暑い日が続いていますが,お元気ですか? 書評PUNCH!を読むと,将来,
紙の本がすべて電子本に置き換わるような勢いですね。

 

8月1日

岩波文庫8月の新刊は,「葛飾北斎伝」,「ハッブル 銀河の世界」,「平家物語 2」,「梵雲庵雑話」という面白そうな4点。
(紹介文は,いずれも岩波書店による)

  • 「葛飾北斎伝」・・・直接北斎を知る人からの聞書きや北斎自身の書簡などを素材に,
    極貧のうちに生きた画狂人の生涯を浮きぼりにした伝記。北斎の日常生活,著作,門人のことなどが詳細に記され,ゴンクール「北斎伝」
    にも影響を与えている.北斎にかんする基本文献といわれている貴重な書。
  • 「銀河の世界」・・・ハッブルが一般向けに行なった講座をもとにまとめた,現代宇宙観の典拠とも言える著作。
    単位などの基礎的事項から銀河の分類,性質,分布,後にハッブルの法則と呼ばれる,
    銀河までの距離とその後退速度との関係について述べられている。ウィルソン山天文台の巨大望遠鏡で撮影の写真を多数収録。
  • 「梵雲庵雑話」・・・西鶴再評価の契機をつくったことで知られる明治の文人淡島寒月の文集。幕末維新期の江戸・東京の回想,
    仮名垣魯文・高橋由一・ワーグマン・下岡蓮杖らの人物スケッチ,玩具の収集のことなど,
    名利を求めず趣味に生きたといわれる寒月の全貌を伝えてくれる1冊。梵雲庵は寒月の号である。