岩波文庫の装幀

岩波文庫の装幀….といわれて,茶色の地に唐草模様のあの表紙を思い浮かべる人は,残念ながら,かなり古いタイプの読書人になってしまいました。

岩波が薄いパラフィン紙から今のビニール引きのカバーに変えて,すでに10年以上が経過したので,かつて書店の文庫棚が茶色一色だった頃を,知らない人もいることでしょう。

最近岩波文庫を買っていない古い人の中には,この”表紙”に気づかず,「最近の本屋には岩波文庫が置いていない。怪しからんなぁ」などと言っている人もいます….。

あのパラフィン紙。古くなるとたんだん濃い茶色になってきて,書店でも目をくっつけるようにして目当ての本を探したものです。いまでも本棚の奥や古書店で古くなった文庫を探したりすると,目が痛くなってきますね。

「いやおまえ,それを言うなら,新潮だって角川だってみんなパラフィンだったじゃないか!」という声も聞こえてきましたが,かなりお歳の方とお見受けします^^;;。ついでに,「旺文社文庫の箱は,いつからなくなったんだぃ?」
と言っていただければキマリです。それで,カバー付きの岩波文庫しか持っていない,という方は,まずそのカバーを外してからこの先をお読み下さい

岩波文庫の装幀は岩波茂雄が平福百穂画伯に依頼しました。画伯は自分が描くよりも,良いものをパクった,いや使わせていただいた方がよいと考えて,正倉院御物の古鏡(海獣葡萄鏡)の模様を模写し,角形と丸形の鏡の模様を適当に組み合わせて,
あの図案を作り出したようです。たしかに著作権の問題はなさそうですし….。ただし,裏表紙のマークは平福画伯のオリジナルです。