H.G.ウェルズが岩波文庫にある,というと奇異な感じがしませんか。しかし,岩波文庫にウェルズが入ったのはずいぶん昔のことで, 昭和28年「トーノ・バンゲイ」が最初です。その後,しばらく音沙汰がなかったのですが,ここ数年, ようやく代表作のいくつかがそろってきました。
モロー博士の島,またの名を改造人間の島,を久しぶりに読み直し,やはりウェルズは面白い,と思いました。改造人間というと, 普通は人間自体を改造し(フランケンのような)怪物を造り出すのですが,生物学者ドクターモローは, 孤島で猿や牛を人間に改造するという異様な研究に打ち込みます。改造人間たちには掟を教え込み,自らを神とし, 従順な社会を作り上げていた博士の身に起こったことは....。
そのほかにも,未来の新聞が突然配達されてきた男の困惑(ウェルズが1970年代をどのように予測していたかがわかる)や, 肥満に悩む男がインドの秘法を試したところ思いがけない結果が....(肥満解消ではなくて重さをなくす秘法だったからですが), などなど本邦初訳も含めて楽しく気持ちの悪い話ばかりです。
☆トーノ・バンゲイ☆
SFの父,ウェルズの代表的長篇。一人の若者が「トーノ・バンゲイ」なるインチキ強精剤を発明。儲けに儲けて巨万の富を築くが, やがてそのインチキ性が暴露され,破滅と転落の道をたどる,という物語。社会派ウェルズの資本主義社会告発小説だが,随所にSF的発想, 科学ペダントリィが見られる。
岩波文庫で読むウェルズ
岩波新書で読むウェルズ