ゴマブックスから11月7日に「ゴマ文庫」が創刊される。
自社書籍や書下ろしを中心に,初回12点。12月,来年1月には各10点を刊行予定。以後毎月7~10点を刊行し,年間100点を目指す。
初回刊行分は,「アホでマヌケなアメリカ白人」(マイケル・ムーア),「眺めのいい人」(伊集院静),「90日で幸せな小金持ちになるワークブック」(本田 健),「一生の幸せにつながる一日の過ごし方」(船井幸雄),「幸せな奇跡を起こす本」(佳川奈未),「彼があなたとセックスしない理由」(中村うさぎ),「図解 起業力のつくり方」(内田雅章),「クロスロード―あの日の約束」(泉 忠司・晴香葉子),「彼女たちの日々と底上げブラ1」(キャシー・ホプキンス),「セレブな犬のしつけ方」(タマー・ゲラー),「体験コミック ご出産1」(まついなつき),「人生を変えたイイ言葉」(萩本欽一)。
新幹線内などで見かけるビジネス誌「Wedge」。その出版元ウェッジ(JR東海の子会社)より,ウェッジ文庫が10月22日に創刊される。
初回は,「日本人の忘れものI」(中西進),「清朝十四王女-川島芳子の生涯」(林えり子),「変化の時代と人間の力-福原義春講演集」,「余はいかにして鉄道愛好者となりしか」(小池滋)。キヨスクの販売力に期待するとのこと。
ちなみに,ウェッジではこれまで,「東京駅はこうして誕生した」,「東海道の旅」,「折れたレール」(英国鉄道民営化ドキュメント),「満鉄と東インド会社,その産声」,「車窓発見101番勝負」などJRらしい単行本を出しており,ほとんどが入手困難となっているので,文庫での出版を望みたいところ。
アキバBlogによると,2ちゃんねる新書が発売になり,秋葉原では店頭に並んでいたとのこと。発売元は,ぶんか社。
キャッチフレーズは『毎月読める,1000万人の本音』,『残しておきたいスレもある』。今回発売されたのは,「恥ずかしくて死ぬかと思った体験」,「自分がスケベだと思う瞬間」,「朝勃ち時の排尿方法」,「嗚咽」,「アツアツご飯に何を乗っけて「わしわし」する?」の5冊。
ぶんか社によると,今後毎月発売されるらしいが,これらのスレをそのまま転載したような本の著作権について,2ちゃんねるでは投稿する際に「著作権をすべて譲渡する」という了解を得ているとの説明。だが,そもそも著作権者たる2ちゃんねるの実体とは何なのか,個人?法人?あるいは・・・一投稿者たる私には,どうもハッキリしない。
2007年秋に,日本初のケータイ小説文庫レーベル「魔法のiらんど文庫(仮称)」の創刊が決定。
携帯電話向け投稿小説サイト「魔法のiランド」を運営する魔法のiらんどによると,ケータイ小説をより多くの方に親しんでいただきたいという想いから,ケータイ小説を文庫化して定期刊行する「魔法のiらんど文庫」(仮)が今秋創刊される。創刊時は5作品程度,以降は毎月3作品程度を発刊。1冊の価格は530~570円。「電撃文庫」を発行するメディアワークスと提携し,角川メディアパブリッシングから発売予定。
魔法のiらんどは1999年12月にスタート。これまでに投稿された小説は100万タイトルを超え,うち27タイトルが書籍化され,累計701万部を売り上げたという。累計会員数は520万,月間ページビューは19億以上。
HJ文庫,7月1日創刊!
といわれても,HJて何ですか? これがなんと,ホビージャパンなのです。ホビージャパンという雑誌は知っているけれど,文庫本を出すとは思わなかったでしょう。
創刊の挨拶としては,『ジャンル,新旧に捕らわれない,おもしろい物語を世に送り出したい!! そんな想いを込めて,株式会社ホビージャパンは文庫レーベル「HJ文庫」を創刊します。現代社会から架空世界,学園ラブコメからハイファンタジーまで,さまざまな舞台の上で紡がれる,胸おどるような物語をお届けします! 第1弾タイトルの発売は7月1日。以降毎月1日に、5~6作ずつの刊行予定となっています』ということで,要はライトノベルの新顔ですね。
そのあとが面白くて,『「気軽に読める」ための構造がより特化し,逆にオタク文化のルールを踏まえていないと読めないもの,一般小説とは別の読み物としての「ライトノベル」という呼び方が定着しつつあります(そうなんですか)。しかし,世の中では古典的なファンタジーの記号である,エルフやドワーフといった種族がその中の一種族にすぎない「人間」と冒険を繰り広げたり,魔法学校の少年が成長する物語が受け入れられています。世界の中心で叫ぼうとも,宇宙の彼方で叫ぼうとも「愛」は「愛」です。私たちは,良い意味での「手に取りやすさ」を追求した上での,普遍的な面白さを発信してゆきたいと考え,ここにHJ文庫を創刊することにいたしました』。
とりあえず,意気込みや良し。私には縁がなさそうですが。
小学館では,2007年春に,ライトノベル文庫2シリーズを創刊する。
少年向けエンターテインメントの「ガガガ文庫」と少女向けファンタジーの「ルルル文庫」。
創刊を記念して,「ライトノベル大賞」を創設。「ガガガ文庫」「ルルル文庫」の2部門で,ティーン向けのエンターテインメント小説作品を募集する。条件は,ビジュアルが付くことを意識したエンターテインメント小説であれば,ファンタジー,ミステリー,恋愛,SFなどジャンルは問わず。商業的に未発表作品であること。
大賞受賞作は200万円+文庫化。締切は9月末日,発表は2007年3月下旬。応募要項は同賞公式サイトを参照。
ちなみに小学館発行の文庫シリーズとしては,激写文庫[B2判](1982年),こどもカラー文庫(1984),文庫判昭和の歴史(1988),パレット文庫(1991),スーパークエスト文庫(1992),新・激写文庫,キャンバス文庫(1993),コロコロ文庫[新書判](1994),小学館文庫(1997),小学館文庫の絵本(2002)がある。
ハーレクイン社初の試みとして,日本人作家によるオリジナルの恋愛小説シリーズ。5月刊行の「恋のプリズム」は,ハーレクイン社主催「第1回ショート・ラブストーリー・コンテスト」受賞作品6篇を収める。
ちなみに,第2回ショート・ラブストーリー・コンテストは現在作品募集中で,大賞賞金30万円,入賞作品は短編集として出版される予定。第1回コンテスト」には全国より176通の応募があり,大賞1名,優秀賞5名が選出された。
2006年3月,「ソフトバンク新書」が創刊された。
さおだけ屋とかバカの壁とか,新書の勢いが良いせいか,ここにきて新規参入をはかる出版社が増えてきている。実利的な,あるいは奇をてらったタイトルが目立ち,いまさら新書の教養主義を持ち出してもしょうがないが,軽装本のカッパ××や××ノベルスとどこが違うのか・・・と思ってしまう。
ちなみに,ソフトバンク新書のコンセプトは,「自分を広げていくための,好奇心の扉」とのことで,初回6冊のタイトルと執筆陣は,以下のとおり。
・畑 正憲『人という動物と分かりあう』(001)
・島田裕巳『宗教としてのバブル』(002)
・杉江 弘『機長が語るヒューマンエラーの真実』(003)
・岡留安則『編集長を出せ!』(004)
・児玉光雄『なぜモチベーションが上がらないのか』(005)
・高田純次『適当論』(006)
高田純次の適当論・・・「なぜ人々は彼に憧れるのか? 彼のこれまでの発言とインタビューから,適当に,かつ楽しく生きる方法を学ぶ。本当の「生き方上手」」。 ちょっと気になりますな。
今後は各月2冊で刊行予定。
朝日新聞社では,10月創刊「朝日新書」のブックカバーコンテストを実施中。
今秋創刊予定の「朝日新書」シリーズ。『21世紀にふさわしい先進さ,だれもが幅広く「知」を楽しめるわかりやすさ,いつでもどこでも読める手軽さが身上の,もっとも新しい新書です。このニューフェース「朝日新書」の顔,ブックカバーのデザインを募集します。通勤電車の行き帰りに読む,カレ氏待ちのカフェでページをめくる,背広のポケットにすっぽり,旅のバッグにしっかり・・・そんな「朝日新書」をイメージして下さい。』とのこと。
賞金100万円で,応募締め切りは6月10日。詳しくはこちらをご覧ください。
大和書房といえば,「愛と死をみつめて」や「しあわせづくり」,「ふぞろいの林檎たち」などのベストセラーを出している老舗(1961年創業)。
だいわ文庫は「簡潔,おもしろい,役に立つ」をコンセプトに毎月10点前後を出版予定。創刊のラインアップは,佐伯チズ「35歳からの美肌カウンセリング」,池上彰「これで世の中わかる! ニュースの基礎の基礎」,有森隆ほか「秘史『乗っ取り屋』」,寺島靖国「JAZZピアノ・トリオ名盤500」など。
サブカル系でもビジネス系でもないし・・・生き方模索系ですか。隙間系・・・言い過ぎか。
1月15日,ソフトバンク クリエイティブからライトノベルの新シリーズ「GA文庫」が刊行される。
ファンタジー,SF,アクション,ラブコメと,若い作家による同世代のライトノベルファンのための小説だという。ソフトバンクらしさ・・・は格別感じられないが,「時代が,アキバが,ファンが待ち望んだ,新たな物語「GA文庫」登場っ!!」っていうのがらしいといえば,らしい。
ちなみに,12月にはコミケのカタログに登場,アキバの書泉ブックタワーの街頭ディスプレイに神奈月昇描く「神曲奏界ポリフォニカ ウェイワード・クリムゾン」(榊一郎)のキュートな女の子のイメージイラストのB1パネルが展示されているなど,その方面でのPRには余念なし。アキバ系って,文庫本代に金をかけるのかは疑問だが,表紙のイラストだけでも欲しいのか???
今後は毎月15日刊行予定。
近眼だからと安心していたら,さすがにこの歳になって老眼も混じってきてしまったため,近くのものにすばやくピントが合いにくくなっている。それで,最近出されるの文庫本の文字のサイズが大きくなっているのは歓迎すべきことなのかも知れないが,実際にはパラっとめくっただけで読みたくなくなるようなものが多い。
それは,文庫本のサイズにバランスを欠いた文字の大きさでは美しく見えないからだ。
いまさら昔の黒々とした活版時代に戻りたいとは言わないが,オフセットになって文字の潰れが無くなった代わりに,版面から受ける力強さは失われた。その上に文字間隔までスカスカになってしまうと,文章の内容そのものが薄く見えてしまう。
おなじみクラフト・エヴィング商會では,クラシックな雰囲気を出すために,(脅迫文のように)古い活字本から一字一字切り取って並べ,それを製版しているという。古典,いやスタンダードな作品には,クラシックなスタイルの文字が似合う。
文庫本はあくまで凝縮されたコンパクトさが身上なのだから,大きな字で読む場合は,それなりの判型で読みたいと思う。
○書体については,もじマガのページにいろいろ話題があります。
全国書店新聞2月1日号より
『出版再販研究委員会は1月24日午後6時から神楽坂の志満金で新年懇親会を開催、約50名が出席した。祝辞を述べた雑協白石勝理事長は、デパートの書籍売場でポイント・カードが使えず憮然とした女性客を紹介して「再販がどういうものであるか読者は知らない。再販制度がなくなれば日本の文化は危うくなるという点を得心いくよう説明していくことが重要だ」と述べ、読者の理解が必要なことを強調した。』
日書連萬田会長によると,「現在の再販契約書は、担当者が公取委に日参して2年間かけて作ったもの。出版業界は三者が一体になってやっていかなければならない。他業界は景況感を実感している中で、出版業界は遅れをとっている。今年こそは積年のポイント・カードを含めた再販問題に決着をつけると同時に、新たな制度や仕組みを同じテーブルで胸襟を開いて話し合う年にしたい」とのこと。
蔵書印といえば,「・・・蔵書」のほかに何か気の利いた言い方?があるかしら,と考えたときに,蔵書印・はんこ解説が参考になります。「祕笈」など愛書家の執念を感じますね。
たとえ文庫本でも愛着のある本には,しっかりと蔵書印を押して,将来,息子が売り飛ばしたり捨てたりしないよう対策を!
そんな大げさなものじゃないけれど,いつも文庫本くらいしか買わないから貰わないのね。今回は堂々4500円のお買いあげで遠慮なく。
なかなか可愛くて,我が家でも好評。コンビニ袋と同じような物しかくれない他の書店に比べて,これは嬉しい。
ちなみに,書泉の栞については,本屋のさんぽ径で紹介されています。
『・・・さて.皆さんは「生活人」という言葉を聞いてどのような人々をイメージされるでしょうか。時代の先端で忙しく活躍するエリートサラリーマン。家計のやりくりで頭を悩ます家庭の主婦。外国語の習得に余念のない若きO L 。キャンパスでメールや携帯と首っぴきの大学生。さまざまな像が浮かんでくるにちがいありません。・・・要するに,一人の社会人として,人生の喜怒哀楽を感じながらたくましく生きている心の自由人――。そうした人々を私たちは大いなる共感を持って「生活人」と呼びたいと思います。そして,その生活人に向けて私たちの新書を発信していきます。』
そのために,取り上げるテーマが広いこと,家庭の誰でもが手に取れる新書にしたいとのこと。いわゆる教養主義ではなく,男性中心でもなく,『父親の新書を娘が読み,娘の新書を母が読む。家庭の中で行き交うような新書,そうした新書を作りたいと私たちは考えています。』
別に岩波新書が教養主義的で男性社会中心だと言っているわけではないのだが(言っているかな),誰でも手に取れる本は誰にも読まれない,といったことにならないことを祈る。
1945年,終戦直後に創業された光文社は,「頭の体操」「冠婚葬祭入門」「日本沈没」など,
多くの話題作を送り出してきた「カッパの本」(1954年創刊)で知られ,ミステリー,エンターテイメント系の「カッパ・
ノベルス」(1959年創刊)でも,「三毛猫ホームズ」シリーズの赤川次郎,「鉄道ミステリー」シリーズの西村京太郎など,
ベストセラーを輩出している。
「光文社文庫」も,はや創刊16周年をむかえ,総発行部数は2億7千万部超えるという。現在流通しているのは700点余りで, 毎月十数点を刊行中。最初はギラギラ光る帯が書店の文庫棚では異質に感じ,下品で恥ずかしいと思っていたのに, いまでは格別目立たなくなってしまったのは,岩波を含めほとんどの文庫がテカテカな表紙に変わってしまったせいか。この6月には新シリーズ 「知恵の森文庫」もスタートする予定。
宝島....ときくと,真っ先に思い浮かぶのは,月刊「宝島」。植草甚一氏責任編集の雑誌「ワンダーランド」
(晶文社)が誌名を「宝島」と変え,JICC出版から出たのが1973年(1985年終刊)。
いわゆるサブカルチャーという言葉が流行り,片岡義男氏らが人気を得ていた。私にとっては懐かしい学生時代の話。
いまだに書棚の奥にずらりと揃った角川文庫の片岡義男が,その頃の名残をとどめている。その後,今に続く「別冊宝島」
シリーズがスタートし,社名も宝島社となった。
私と同様,かつての「宝島」を愛読した諸兄は,現在の週刊「宝島」をみるたびに,義憤の念に駆られるかもしれないが, マニア入門書シリーズともいえる「別冊宝島」の方は,なかなか面白いタイトルを揃えていて人気がある。もっとも品切れが多く, 判型も災いしてか,きちんと揃えている書店が少ないのは残念に思っていた。
そんなわけで,かねてより文庫創刊を検討し,マーケット調査も行ってきた宝島社が,1998年7月24日に「Cの福音」(楡周平著) 初版12万部をもって創刊した「宝島社文庫」は,既に自社単行本ベストセラーと「別冊宝島」 シリーズを再編成したものなど80点ほどを刊行しており,品切れに悔しい思いをしていた人, もっぱら電車読書派の人にとっては歓迎すべきことだ。
最近刊行された文庫本としては,キワモノ的なタイトルの割には,造本もしっかりしており好感が持てる。
「王様文庫」とは巧いネーミングだと思うが,「知的生きかた文庫」
のシリーズを出していた三笠書房から2000年1月に創刊された新顔文庫。
「知的生きかた文庫」では取り上げてこなかったエンターテイメント性の高い企画,「遊び」
の感覚を大事にした企画を中心にラインアップを組んだとのことで,現在のカテゴリーは,カルチャー&情報,ライフスタイル,
エンターテイメント,文芸・エッセイ,男と女の5つ。同じく最近出た宝島社の文庫と路線を同じくするように見えるが,
それほどマニアックでも露悪趣味でもなく,いまのところ,執筆者,内容とも王様らしからぬごく平凡なものばかりなのが残念。
三笠書房はそもそも,海外文学の翻訳出版社として設立され,「風と共に去りぬ」本邦初訳を出版したことで知られる。その後, 「ヘミングウェイ全集」を出した頃まではまだ海外文学のイメージが強かったが,渡部昇一や木村治美,竹村健一などの訳によるビジネスマン, キャリアウーマン向け流行書中心に変わってからは,私には縁のない出版社となった。もっとも,「知的生きかた文庫」 は既刊点数が1000点を超えたということなので,その方面の需要は多いのだろう。
版元の社会思想社(創立昭和22年)は,戦時下,軍部ファシズムを批判したため東京帝国大学の教壇を追われ,戦後, リベラリストとして再評価された河合榮治郎の門下生によって設立された社会思想研究会出版部を前身とする。ベネディクト『菊と刀』 やトインビーの『歴史の研究』などの翻訳出版権をGHQのオークションで取得,出版活動の基礎を築いた。現代教養文庫は昭和26年創刊。 当時は,角川文庫創刊など,第2次文庫ブームの時期であった。しかしその後,文庫創刊ラッシュによる競合の激化や, コンピュータゲーム機の登場によるゲームブックシリーズの陰りなどによって業績が下降し, 出版不況のなかさらに厳しい運営を強いられるようになった。平成14年同社倒産により終刊。既刊約1800点。
社会・思想,科学史,文学紀行,美術,ミステリなどのほか,探偵小説,怪奇小説,幻想小説などに特徴があり,小栗虫太郎,香山 滋, 橘 外男,久生十蘭,夢野久作,日影丈吉,山田風太郎の各「傑作選」は,類書が少なかっただけに便利かつ貴重であった。
中学生たちにもう一度,本を読む喜びを知ってほしいー。子供の読書離れが言われる中で,東京の小出版社「フレア」が埋もれた内外の少年少女文学名作の文庫化を始めた。昨年12月に川端康成の作品など4点を出版,9月には第二弾としてロシアの作品など2点を刊行する。
「最近の中学生は,いじめとか,孤独とか,厳しい状況に置かれていると思う。そんな子供たちの心の支えになるような本があってもよい」と,フレアの鳥田みきさん。フリーの編集者を経て昨年1月,姉らとフレアを創立したが,「子供のころ読んだ少年少女向け文学全集には,良い作品がたくさん含まれていた。それらに再び光を当てたい」と,考見ていたと言う。
単なる復刻版ではなく,文庫にしたのは,「価格抑え,できるだけ多くの子供たちに読んでほしい」という気持ちから。「万葉姉妹・こまどり温泉」(川端康成),「イングランド童話集」(福原麟太郎訳),「なぞ物語」(W・デ・ラ・メア),「世界童謡集」(西條八十,野上 彰ほか編)の既刊4点は,520~670円の価格設定だ。
コミックスや学習参考書に押されて児童書が書店で占めるスペースは減りつつあるが,評価の定まった名作はいつでも手に入る。「子どもと本の出会いの会」事務局長の小西正保さんは「昭和30年代半ばから50年代初めにかけて盛んだった創作児童文学が,子供の活字離れや少子化の影響などで力を失い,発行点数が減っている」とした上で,「埋もれた名作を出版する意味はあるだろう」と話す。
フレア文庫は大手取り次ぎの扱いではないため,今のところ置かれているのは,東京と名古屋の一部の書店。それでも,「イングランド童話集」などが好評で,年配の読者を中心に手紙や電話で「次が出たらぜひ教えて」などの反響や励ましがあったという。
同文庫を入手したい場合は,書店で「地方・小出版流通センター扱い」と言うか,直接,フレア(電話03-5245-2671)へ注文する。(以上,神奈川新聞1997年8月5日付)
昭和20年に創立された角川書店が文庫を創刊したのは1949年(昭和24年)5月。もっとも最初はB6判という「リーダース・ダイジェスト」と同じヘンな判型で,これをやめて現在のA6の文庫判型で刊行しはじめたのは1950年5月から。
創業者の角川源義は元中学校教諭で,柳田國男,折口信夫の薫陶を受けた国文学者兼俳人。そういう人の出した文庫だから,初めのころは,日本文学に関しては独特の強みがあった。柳田國男の多くの著作をはじめ,北原白秋の「明治大正誌史概観」とか石川淳の「文学大概」とか三島由紀夫の「純白の夜」とか,さらには中里介山の「大菩薩峠」全27冊とか,他の文庫ではあまり見かけないような異色作をせっせと刊行していたものである。ただし体裁は岩波と新潮の後追いで,特に面白味はなかった。
それがコペルニクス的転回を見せたのは,昭和40年代前半,角川春樹が編集局長に就任してから。エリック・シーガルの「ラブ・ストーリー」,「八つ墓村」ほかの横溝正史ミステリーで大ヒットをかっとばし,映画とタイアップして徹底的に売りまくった。さらに名著主義を廃して大胆に現代物をセレクトし,カラフルなイラストのカバーをつけて若い読者をさらい,文庫をアメリカのペーパーバック型のものに変えてしまった。こういう行き方は"角川商法"と呼ばれ,日本の出版界そのものを変えてしまった。
その後,コカイン密輸事件で,春樹社長のワンマン体制に対する批判が噴出。曽野綾子は,「徹底して売れない作品を切り捨てる角川書店の商法には,もはや文学を育てる土壌の存在が感じられなかった」とし,「もうこの出版社とは『縁がないな』と感じていた。(地味な文学を)育てるという努力をせず,いいとこだけつまみ食いをする社長にイエスマンをし続け,いざとなると,それは社長の横暴のせいでした,と言う社員と改めて付き合うのは嫌になったため,版権を引き揚げることにした」,と角川書店への縁切り宣言。
それに対し,当時の見城徹・角川書店編集部長は,「個人的な見解だが,飛んでいっておわびしたうえで,曽野さんの意思を尊重したい。通知は曽野さんらしい主張で,仕方のないこととも思う」などと反省しきり。しかし,その見城氏も....。
※昭和59年には「ロシア革命史」,「実践論・矛盾論」などが「名著コレクション」として,平成元年には「舞姫タイス」,「マリオと魔術師」などが「リバイバル・コレクション」と名付けられ,復刊された。
徳間文庫の創刊は1980年10月。それでも既刊は1600点を越えたし、柿妹シリーズの「アニメージュ文庫」「パステルシリーズ」を加えるともうかなりの蓄積量である。
それもそのはず、総点数でなく毎月の生産点数では20点に近く、量産では上位五指に入る大手なのだ。徳間書店といぅ名前ではそれはど知られていなくても、系列会社には日刊新聞(東京タイムズ)、映画(大映)のはかレコード会社その他をもつメディア産業のコソツェルンだから相当なカをそなえているといえる。
「現代のエンターテインメント」が看板の徳間文庫は、いわゆる古典とか名著とは無縁な出発をした。内容的には春陽堂の春陽文庫と傾向を同じくするが、同文庫は作家の顔ぶれにひろがりがなく、次第にジャンルをせばめているからお株を奪った感じである。人気作者の評判作を文庫化しようとしている点では、戦前の春陽堂が出していた日本小説文庫に近い行き方だろう。
どんなシリーズにもライバルがあるもので、徳問文庫の場合は4年後に創刊された光文社文庫が強力なライバルとなった。ともに新書判の「ノベルス」ものを出し、ミステリー、ハードロマンといった傾向を同じくする社の文庫だから、ねらいも文庫の内容もかち合ってくる。こちらが出せばあちらも式に、今もはげしくせりあっているわけである。
アニメ映画の文庫化というアニメージュ文庫は、ノべライズで「となりのトトロ」を収録したりするが、本命は「宇宙戦艦ヤマト」やゴーショーグンシリーズ、「名探偵ホームズ」シリーズ、あるいは「風の谷のナウシカ」絵コンテ集など、宮崎駿の作品集の観がある。それだけ根強い人気があるようだ。パステルシリーズは1989年3月ティーン読者向け路線でスタートした。徳間文庫には以前「コスモス版」というやはりヤング向けシリーズがあったが、今度は本格的な刊行。文庫のローティーン化に拍車をかけている。
本論の方があとまわしになった。エンターテインメント路線は人気商品が大事。少し古くなると、品切れにせざるをえない。その点、物故作家は整理されやすいかも。あまり強くなかった翻訳ミステリーもサンダース、プロンジーニ等を入れて充実させているし、エッセイ類も評判で「バラエティ」部門が多くなった。大佛次郎、子母沢寛のものがふえたが、大佛の場合、「鞍馬天狗」シリーズはアナ場。朝日文庫などのシリーズには入っていない作を拾っている。
春陽文庫の歴史は古い。もとは春陽堂文庫といい,創刊はなんと1931(昭和6)年。現存する文庫では新潮・ 岩波に次ぐ三番日の老舗なのである。最初は文芸路線だったが,戦後の1950(昭和25)年に春陽文庫と改称, 戦前に同じ春陽堂から出ていた日本小説文庫の流れを引き継いで,時代小説中心の大衆文芸路線に方向転換した。
この文庫には,他の文庫では読むことの出来ない独特の人気作家,大ロソグセラー作家が並んでいる。たとえば,時代小説の次の御三家。
★山手樹一郎
『桃太郎侍』『恋凰街道』『遠山の金さん』『江戸名物からす堂』などじつに96冊。
これは角川文庫の赤川次郎や和久峻三を大きく凌ぐ数字であり,驚異というはかはない。
これらは<山手樹一郎長編小説全集><山手樹一郎短編小説全集>という形で特別扱いの収録。
★角田喜久雄
『妖棋伝』『風雲将棋谷』『どくろ銭』といった伝奇時代小説の名作から『半九郎闇日記』『盗っ人奉行』『舟姫潮姫』
など普通の時代小説も含めて47冊。なおこの作家は推理小説も『高木家の惨劇』『奇跡のボレロ』など6作が収録されている。
★陣出達朗
昭和8年から活躍している古い作家。『たつまき奉行』『火の玉奉行』などの「遠山の金さん」物を中心に48冊。『よさこい奉行』とか
『すっとび奉行』といった愉快な題名の作品もある。
他に早乙女貢が『うつせみ忍法帖』ほか27冊,颯手達治が『若さま隠密帳』はか48冊,江崎俊平が『消えた若殿』ほか41冊。 時代小説といえば,現在は歴史小説スタイルのものが主流だが,これらの作家の作品は昔ながらの大衆時代小説である。 それらが20年前と変ることなく,絶版にもならずに目録に並んでいるのだから,依然として根強いファンが存在するのだろう。
最近は書棚が書店の隅に追いやられてしまってあまり目立たないが,新刊もちやんと出ている。推理小説の充実ぶりも見逃してはなるまい。 角川が横溝正史を大々的に取り上げるまでは,彼の作品は春陽文庫でしか読めなかったのである。現在でもその時代の伝統は残っていて, <横溝正史長編全集>全20巻,<江戸川乱歩文庫>全30冊,という形で整理されている。島田一男,黒岩重吾,佐賀潜, 佐野洋らの旧作も沢山ある。ただし,装幀は相変らずで,あまりナウい雰囲気はない。
文庫は出版社の事業計画の中で,どのように立案され創刊されるのであろうか。「ちくま文庫」(筑摩書房)は1985年12月4日 「新しい教養の復権」をスローガンに念願の創刊を果たした。
文庫創刊の企画段階から現在まで,中心となって活動してきた副編集部長の柏原成光さんに,これまでの道のりを聞いてみた。
創刊時の文庫編集部のスタッフは柏原さんを含めて5人。他の仕事を抱えながらの作業が創刊まで1年以上続いた。 創刊を前に柏原さんたちがいちばん悩んだのが,文庫の性格付けだった。
「そのころは角川文庫を中心に,先行文庫はエンターテインメント路線の大合戦でした。筑摩としては,この分野の実績は皆無。 エンターテインメントの文芸がダメなら,教養と大古典しかないと考えました。これが筑摩の財産ですからね。 それと読者層を他の文庫より少し上げて,ヤングアダルトにしました」
現在では普通,文庫の初版部数というと5万部というのが相場だ。ちくま文庫は本の内容から,定価は少し高くなるが(450円前後), その半分以下の2万部でがんばれないかと考えたという。出版点数は創刊時に20点,以降は月6点のペースで出版することにした。 現在発刊総点数130点(昭和62年)。文庫としての陣容が整う300点が一応の目安だ。さて,これまでの結果はどうだったのか。
「周囲があまりにもエンターテインメントばっかりだったので,読者はちょっと新鮮な印象を受けたようです。他の文庫はダメだが, おたくなら出してもらえるだろうと,思想書,哲学書の文庫化を望む読者の声もあったりして,期待以上でした。 若い人が文庫を支えていると思ったら,実は中年層のビジネスマンが多いんですね」
文庫創刊当時,文庫のかかった資金を回収するには1年半はかかるとみていた。それが1年で達成することができた。
「地味で堅い単行本を出す筑摩ですが,こうした本を作るためにも,必ず売れる本を出す必要があります。 若い人の期待できる本も必要です。ちくま文庫はその辺を担っていると思っています」
(ダカーポ 昭和62年3月18日号)
1950年代の半ば,東京創元社が海外の推理小説に手を染めようとした時,積極的に賛成してその路線を押し進めたのは, 当時編集顧問だった小林秀雄であるという。世界推理小説全集,現代推理小説全集,世界大ロマン全集,クライム・クラブ,エラリー・ クイーン作品集,ディクスン・カー作品集などを刊行した後,1959年(昭和34年)5月に創元推理文庫を創刊。いきなりその年に55冊, 翌年には66冊を刊行した。
これは専門文庫としては破格の冊数であるばかりか,岩波,新潮,角川のメジャー文庫と比較してもさして遜色ない数字だったので, 読書界を驚かせた。以来,今日までほとんど海外ミステリのみで通し,多くのファンを獲得してきた功績は高く評価されよう。
新潮文庫は,一番歴史の古い文庫である。最初の刊行は1914年(大正3年)9月。これを含めて現在までに4度出されており, 1914年版は四六半裁(だいたいB7ぐらいで現在の文庫よりも小さめ;裁は代字),1928年版は新四六判(現在の文庫より縦長), 1933年版は菊判半裁(現在の文庫より少し大きめ),1947年版はA6(現在の文庫の大きさ)と, 新スタートのたびに判型が変化している。現在の新潮文庫は第4次の文庫で,戦前のものを絶版にしての再スタート。第1冊目は川端康成の 「雪国」だった。
1971年(昭和46年)7月の創刊。創刊時には一挙に70冊を刊行して話題になった。最大手の出版社が出す文庫ということで, その影響は出版界をゆさぶるだろうと早くから言われていたが, 果たせるかなこれに続いて大手出版社がつぎつぎに文庫を出すようになって今日に及んでいる。
講談社文庫はいくつもの姉妹シリーズを続刊しており,講談社英語文庫,X文庫,L文庫,特に,遠藤周作文庫,森村 桂文庫, 石坂洋次郎文庫,江戸川乱歩推理文庫,吉川英治文庫といった個人文庫が特徴的である。講談社文庫と個人文庫で収録作品の重複が見られたが, これは刊行を急いだ結果と思われる。
講談社の文庫グループのなかには失敗作もあったが,あらゆる分野に挑戦してきたので,文庫の歴史は浅いながら,いまや角川, 新潮につぐ刊行点数に達している。
ハヤカワ文庫は,1970年(昭和45),「さすらいのスターウルフ」(エドモンド・ハミルトン),
「征服王コナン」(R.E.ハワード)などのSFを皮切りにスタートした。
ハヤカワ文庫は,SF(サイエンスフィクション),FT(ファンタジー),JA(日本作家),NV(海外現代小説),NF (海外ノンフィクション),Jr(海外ジュニア小説)などからなる文庫で,ミステリは含まれていないのだ。ハヤカワ・ミステリ文庫は, 全く違う種類のものなのである。では,モダンホラー文庫というのはなんだい?と考える人もいるかもしれないが,あれはNVの中の 「モダンホラー・セレクション」という分類なのである。
これに,ミステリアス・プレス文庫という海外の出版社と提携した文庫も加え,早川書房からは3種類の文庫が刊行されていることになる。
ハヤカワ文庫の各シリーズの特徴は以下の通り。
ハヤカワ文庫SF
1970年~。すでに1000冊を越えた。 当初は日本人作品もハヤカワ文庫SFで出版されていた。ただし今はすべて絶版。品切れ, 絶版が少ない文庫といわれていたが, 最近は絶版になるのが早く、900番台でもすでに目録から消えている作品もある。 現在月4、 5冊ペース。
ハヤカワ文庫JA
1973年~。400冊を越えた。 現在月1、2冊ペース。
ハヤカワ文庫FT
1979年~。もうすぐ250冊。 現在月1冊(上下分冊の時は2冊)ペース。
ハヤカワ文庫HB
1991年~92年。HBとはHi!Booksのこと。 全18冊。Jr、YR、GBと同様に短命であった。
複雑に絡み合うハヤカワ・シリーズ
早川書房には,文庫のほかにいくつかのシリーズがある。まず昭和28年以来続くあの膨大なハヤカワ・ ミステリ。そのSF版ともいうべきハヤカワ・SFシリーズ。単行本のハヤカワ・ノヴェルズ,ハヤカワ・ノンフィクション。 さらには日本SFシリーズとか黒人文学全集とか,古くはハヤカワ・ライブラリなどなど。これらが文庫と複雑に絡み合っているのである。
たとえば,ハヤカワ文庫SFで刊行されている「火星の砂」,「脳波」,「虎よ,虎よ!」 といった作品はハヤカワSFシリーズを文庫化したものだし,ハヤカワミステリ文庫の「そして誰もいなくなった」,「ガラスの村」 ほか多くの作品はハヤカワミステリからの天下りである。では,ハヤカワSFシリーズ->文庫SF, ハヤカワミステリ->ミステリ文庫という図式が常に成り立つかといえば,そうとも限らない。SFシリーズのドル箱人気作だった 「太陽の黄金の林檎」,「刺青の男」,「火星年代記」はハヤカワ文庫NVに収録されている。同様の例はポケミスにもあって,「航空救難隊」, 「サイコ」などは,ミステリ文庫ではなく,やはり文庫NVに入っている。
シリーズ刊行ものからの天下りでなく,文庫で初めて訳出された作品も相当な数に上る。しかし, どういう作家のどういう小説が文庫オリジナルで登場するかについては,一定のパターンはない。
有名な「87分署」シリーズ。これは昔からハヤカワミステリで刊行されてきたものである。ところがある時,「われらがボス」 という新作がポコッとミステリ文庫で出た。以後は文庫で出続けるのかと思ったが,意外にもまたポケミスに復帰した。ディック・ フランシスの競馬スリラーはもっとややこしく,初期の「興奮」,「大穴」,「本命」などはハヤカワミステリ,「重賞」 がミステリ文庫オリジナル,後期の「反射」,「利腕」などはハードカバーのノヴェルズで刊行,という具合。
まあ,大体のところをいえば,海外で非常に話題を呼んだ作品(ジョン・ル・カレやレイ・デイトンのスパイ小説,カート・ ヴォネガットの新作などがその例)や,通好みで渋いミステリ(S・F・X・ディーンやS.T.ヘイモン)などは普通は文庫で訳出されない。シリーズものか,ちょっと軽いタッチの作品が文庫オリジナルになる,と思えばいいだろう。
ハヤカワ文庫FTについては,Alisato's Roomに全点リストと詳しい解説があります。
講談社学術文庫ほど物議をかもした文庫はほかに例がない。「学術をポケットに」
をうたい文句に人文社会自然科学の著作物を文庫化するという方針に,中小出版社がドル箱としているロングセラーを奪うものと一斉に反発した。
岩波文庫の"古典"とは定義を同じくしない,いわば評判のよい"現代の名著"が照準だったからである。
よく売れているものをさらに安い値段で出すというサービスなら読者は大歓迎のはずであり,
売れているものを文庫にするなという主張はちょっとおかしい。しかし,文庫を出すのが大手中の大手とあっては,
学問の寡占化と中小出版社が反発するのもわからぬではない。これは文庫戦争のもっともシリアスな一面の現れともいえた。
ともかくも,他社の出版物を無理に文庫化しないという妥協によって学術文庫は出発したが,1975年8月の創刊以降, 同文庫は何度かの曲折を重ねながら今日に至っている。一時期から定価がかなり高く設定されるようになり, そのことだけでも他の文庫とは一線を画するようになった。ポケットサイズにはなったが値段は必ずしも安くならなかったのは, やや志とは違っていただろう。
長く絶版になっている著作を収録した時期,辞典類を積極的に文庫化した時期,日本古典の注釈書を出した時期, などの目立つ傾向も見られたが,現在では比較的地味な研究書を入れるようになっており,書き下ろしというか, 文庫オリジナルのものも大分多くなっている。
絶版品切れ本が4割近くを占めるとどうしてもその方が気になるが,徳富蘇峰の「近世日本国民史」 を分冊収録してきたのに今はすべて品切れだし,「大日本人名辞書全5冊」もない。 売れ行きの思わしくないものは初版限りという感じがするのは残念だ。
1973年6月創刊。初めは講談社文庫の発刊に刺激された形で参入し,自社単行本の防衛策という色彩が濃く感じられたが,次第に岩波・
新潮・角川の間隙をぬってノンフィクションに独自の路線を開拓し始め,
中公文庫ファンとも呼ぶべき新しい読者層の獲得に成功する。
「日本の歴史」,「世界の歴史」,「日本の詩歌」,「折口信夫全集」などの自社刊行シリーズものの文庫化も多い。
中公文庫の背表紙は肌色で統一されているので,書棚に並べたときも綺麗に揃う....と思いきや, その色の濃淡はかなりバラバラである(日焼けしていない新しいものほど濃いとは限らない)。
それでも出版社別ではなく,書名や著者名で並べている書店での識別度は抜群といえる。
旺文社文庫は昭和40年6月創刊。グリーンの表紙に, それよりやや濃いめのグリーンの箱という上品な造りと,年譜や参考文献, 鑑賞のポイントなどを含む懇切丁寧な解説に特徴があった。
ラインナップは日本文学,外国文学,伝記,教養だが,同社の読者層を考えてか,教科書で親しんだ作家, 偉人伝といったものが選ばれており,すべて現代仮名遣い,注を巻末ではなく各奇数ページにおく,さしえや写真を入れる, 翻訳はすべて新訳とするなど,受験参考書出版社らしい, 親しみやすさや読みやすさを重視した編集方針であった。
しかし箱付きの文庫本はコスト的に苦しかったのか,昭和48年には箱を廃止。普通の色刷りカバーになってしまい,同時に, 内容の面でも生徒学生向きから,成人向けへと変わってきた。
なかでも,内田百問(代字)の阿房列車シリーズ(これのみ旧かな使用), 漫画家や落語家のエッセイ,歴史小説など, 他の文庫で手に入りにくい渋めのシリーズに人気があり,翻訳物でもマーク・ トゥエインのちょっと面白い話など,変わった作品を収めていた。
ちょっと古めかしいカバーデザインもそれなりに魅力があったが,他社のエンターテイメント路線に押されて,昭和62年, 1千点ほどを刊行し休刊となった。一部は光文社文庫などで復活したものの,ユニークな作品の多くが埋もれてしまったことは残念。
なお,箱入り本の他に,厚表紙の学校図書館向け特装本もつくられ, これは古書店等で現在でもときどき見かける。
1974年創刊。一見して紙質が安っぽく,表紙のデザインもそっけなく,新潮や角川などと比べて,
書店では地味な存在である。しかし内容をみれば,さすがに豊富な作家・作品を抱える文芸春秋ならではの,充実した書目を揃えている。
自社単行本中心ではあるが,芥川賞,直木賞作家,サントリーミステリー大賞作家などを擁しているうえに, 得意のノンフィクションを充実させてきているので,話題作や人気作にはこと欠かない。アンソロジーの類もまとめ方がうまい。 旺文社文庫がなくなった後,三國一郎編の「証言・私の昭和史」シリーズを編集したのなど慧眼といえる。
また,最近流行のビジュアル文庫も文春が先鞭をつけた。ただし,
マンガのアンソロジーはさほど感心できない。「懐かしのヒーローマンガ大全集」など売れ行きは抜群らしいけれども,あまり面白くはない。
「鉄腕アトム」「赤胴鈴之助」「まぼろし探偵」といった大長期連載マンガを細切れにして並べても,結局は「読み足りない」
という不満足感が残るだけなのである。
編者の姿勢も疑問。堀江卓の「矢車剣之助」が新しい描き下ろしとはガックリもいいところで,これでは"懐かしの"の意味がないではないか。
と企画がなまじっか嬉しいものだけに文句をつけたくなる。
ビジュアル版でいいのは,マンガではなく「お守り図鑑」とか「建築探偵術入門」とか「サンフランシスコがいちばん美しいとき」 といった面白い狙いの本である。とくに「サンフランシスコ....」は写真が美しく,文章も現代アメリカの一面を切り取っていて, とても結構。
もう一つ見逃してならないのは,海外ミステリ部門。この路線が並々ならぬ強みを発揮している。 優秀作品をずらりと取り揃えているというわけではない。中の下クラスからせいぜい上の下クラスまでの作品が多いのだが, サラリーマン層を中心によく売れるのである。
同程度の面白さの本ならば,ハヤカワ・ミステリ文庫や創元推理文庫よりアピール度が高いように思える。 ハヤカワや創元だといかにも本格派で専門的な雰囲気があるが,文春は一般向けの感じなので,付き合いやすいのであろう。
この文春海外ミステリー人気の密かな後ろ盾となっているのが,年末に「週刊文春」誌上で開催される<ミステリー・ベスト10>である。 このベストワンには往々にして,文春文庫の収録作品が選ばれる。選ばれない場合でも上位にくる。 数十万部の発行部数を誇る週刊誌がそれらを大きく取り上げるのだから,反響も大きい。
このベストテンごっこは,年末の行事として定着した。それは文春の海外ミステリー路線が, 読者の間で定着したということでもある
ただし,この海外ミステリー群も,すでに古いものは書棚から姿を消しつつある。中の下クラスのものは, うっかりしていると絶版になってしまう恐れもあるからご注意,ご注意。
一時期,あれだけ書店の棚を賑わせていたサンリオSF文庫が廃刊となって,早くも10年が過ぎました。
1978年,それまでの文庫とは一線を画した綺麗な表紙と洒落たデザインで登場したSF文庫は,ハヤカワや創元とはひと味違う, 目新しい作品を数多く収録し,注目を集めました。
本邦初訳も多かったせいか,一時は悪訳・迷訳の宝庫などと言われましたが,イギリスやフランスなど,それまで馴染みの薄かった作品, 作家を広く知らしめた功績は大きいでしょう。
私自身は,紙質の関係か,手に持ったときに妙に軽い文庫というのはどうも馴染めないのですが,SF文庫だけは,物珍しさに惹かれて( 「妖精物語からSFへ」や「ベスト・オブ・サキ」の表紙など,なかなか気に入っていました),いくつかを読みました。
1987年,197冊を出し終え廃刊となったSF文庫は,あっという間に書店から消えていきましたが, 今になって,そのユニークなラインナップが注目され,古書店で岩波文庫よりも高値が付くようになりました。廃刊を知ったとき,棚の前で 「もっと買っておこうか....」と思案した人は私だけではないと思いますが,今となっては無念の涙。まあ, SF音痴の人間が欲を出しても,しょうがないのですが^^;;。
ちなみに 村上春樹氏は,SF文庫をほとんど持っているそうです。
サンリオSF文庫の全刊行目録が「サンリオSF文庫パーフェクト・ インデックス」にあります
1997年12月,創業75周年を迎えた小学館より新たに「小学館文庫」
が登場した。シンボルマークは肥桶を担いだ男....ではなく,甲骨文字を図案化した,右手に知識,
左手に勇気を掲げた男である。
収録書目のジャンル分けは,文芸・学芸作品(赤),自然・アウトドア(緑),実用・ライフスタイル(黄)のシグナルカラー3色による。 ケイブンシャあたりで見たような背表紙だが,タイトルはハッキリしていて読みやすく,書店の棚でも探しやすいだろう。
発刊以来1ヶ月が過ぎて,最初の35冊中,増刷されたものが,西村雅彦「僕のこと,好きですか」,野田知佑「カヌー犬・ガク」, ドラえもんルーム「ド・ラ・カルト」など9冊。ちょっと見たところ,やはり文庫オリジナルや書き下ろしが売れているようである。
実際の本の造りは,扉や,カバーを外したときの表紙など,やや安普請の感じはするが,本文用紙は岩波文庫に対して赤みがかった色で, 手に持った感じも軽い。なんと,アタマも綺麗に揃っている。
価格は,とくに書き下ろしや文庫オリジナルものは,比較的抑えられていて,他社に比べて割安な印象。「ライカ通の本」など, ビジュアル重視の書目でも220頁で460円とちょっと買いたくなる値段である。岩波は同じくらいのページ数で600円はするから....。
ただ,分類番号(Y-つ-1-1など)が,カバーの背以外, 本体のどこにも書かれていないのはいかがなものか。将来,古書店などでカバーなしの小学館文庫を整理するとき, 頼りになるものがない。まあ,岩波文庫のように,リストを作りながら系統的に読んでいくような人は,出てきそうにない, ということか。
また,奥付に価格が記載されていないのも姑息な感じがしてイヤ,と思ったら,岩波文庫も最近,書いていない。 いつから価格は書誌的事項じゃなくなったのだろう。
ちなみに,「この種の本なら岩波文庫,というブランド・イメージは悪いことではない。小学館文庫とは考え方が違うので, 全体としてはぶつからないでしょう。本の選択の可能性が広がるのは結構なことで,住み分けしてやっていきたいですね」 と岩波文庫の塩尻親雄編集部課長は言っている。
小学館のホームページは,http://www.shogakukan.co.jp/。
| 年 | できごと |
| 1903(明36) | 袖珍名著文庫(冨山房)発刊 50冊 |
| 1910(明43) | 袖珍文庫(三教書院)発刊 80冊 |
| 1911(明44) | 立川文庫(立川文明堂)発刊 200冊 |
| 1914(大3) | アカギ叢書発刊 100冊 |
| 新潮文庫(新潮社)第1次発刊 40冊 | |
| 1927(昭2) | 岩波文庫(岩波書店)発刊 32冊 |
| 1929 | 改造文庫(改造社)発刊 23冊 |
| マルクス主義文庫(希望閣)発刊 | |
| 春秋文庫(春秋社)発刊 | |
| 昭和文庫(資文堂)発刊 | |
| 紅玉堂文庫(紅玉堂)発刊 | |
| 岩波文庫アルツィバーシェフ「サーニン」発禁 | |
| 万有文庫(文芸社)発刊 | |
| 新潮文庫(新潮社)第2次発刊 | |
| 1930 | 先進社大衆文庫(先進社)発刊 |
| 誠文堂十銭文庫(誠文堂)発刊 | |
| マルクス主義の旗の下に文庫(白揚社)発刊 | |
| 神の国文庫(文教書院)発刊 | |
| 1931 | 仏教文庫(東方書院)発刊 |
| 春陽堂文庫(春陽堂)発刊 | |
| 岩波文庫整理番号と帯分類開始 | |
| 1932 | 日本小説文庫(春陽堂)発刊 20冊 |
| 岩波文庫教科書判(岩波書店)発刊 国文学30冊 | |
| 玉川文庫(玉川学園)発刊 | |
| 世界名作文庫(春陽堂)発刊 | |
| 春陽堂少年文庫(春陽堂)発刊 | |
| 1933 | 有島武郎小全集(春陽堂) 全12巻 |
| 涙香全集(春陽堂) 全11巻 | |
| 一葉全集(春陽堂) 全5巻 | |
| 新潮文庫(新潮社)第3次発刊 24冊 | |
| 春秋文庫第3部(春秋社)発刊 | |
| 週刊朝日文庫(朝日新聞社)発刊 | |
| 1936 | 山本文庫(山本書店)発刊 |
| 岩波文庫福沢諭吉「文明論之概略」削除処分 | |
| 雄山閣文庫(雄山閣)発刊 | |
| 1937 | 改造文庫紙表紙となる |
| 新潮文庫ドルジュレス「木の十字架」発禁 | |
| 日本橋三越で文庫展開かれる | |
| 博文館文庫(博文館)発刊 | |
| 岩波文庫ジイド「ソヴェト旅行記」削除処分 | |
| 新潮文庫版独歩全集 全10巻 | |
| ニュース文庫(六人社)発刊 | |
| 1938 | 岩波文庫28点を自発的増刷中止 |
| 冨山房百科文庫(冨山房)発刊 | |
| 岩波文庫「アミエルの日記」削除処分 | |
| 1939 | 岩波文庫芥川龍之介「侏儒の言葉」改訂処分 |
| 教養文庫(弘文堂)発刊 | |
| 岩波文庫実篤「その妹」,蘆花「自然と人生」削除処分 | |
| 岩波文庫「ボヴァリー夫人」改訂処分 | |
| 岩波文庫「蕪村俳句集」改訂処分 | |
| 1940 | 世界文庫(弘文堂)発刊 |
| 1941 | 岩波文庫A6判へ。買い切り制実施 |
| 1942 | 新潮文庫A6判へ |
| 新文庫(春陽堂)発刊 | |
| 1947(昭22) | 春陽堂文庫復刊 |
| 世界古典文庫(日本評論社)発刊 | |
| 新潮文庫(新潮社)第4次再刊(戦前版は絶版) | |
| 1948 | アテネ文庫(弘文堂)発刊 |
| 1950 | 岩波文庫星1つ30円 |
| 角川文庫(角川書店)発刊 | |
| 春陽文庫(春陽堂)発刊 | |
| 音楽文庫(音楽之友社)発刊 | |
| 1951 | 市民文庫(河出書房)発刊 |
| 現代教養文庫(社会思想研究会)発刊 | |
| 岩波文庫星1つ40円 | |
| 創元文庫(創元社)発刊 | |
| 三笠文庫(三笠書房)発刊 | |
| 青木文庫(青木書店)発刊 | |
| 近代文庫(創芸社)発刊 | |
| 1952 | 国民文庫(国民文庫社)発刊 |
| 1954 | 市民文庫,河出文庫となる |
| 1959 | 創元推理文庫(東京創元社)発刊 |
| 1960 | 岩波文庫新字体・新かなに改訂開始 |
| 1961 | 山渓文庫(山と渓谷社)発刊 |
| 1962 | カラーブックス(保育社)発刊 |
| 岩波文庫星1つ50円 | |
| 1964 | 岡山文庫(日本文教出版)発刊 |
| 1965 | 旺文社文庫(旺文社)発刊・函入 |
| 1966 | 新潮文庫新字体・新かなに改訂開始 |
| 1969 | 潮文庫(潮出版社)発刊 |
| 1970 | ハヤカワ文庫 (早川書房) |
| 1971 | 聖教文庫(聖教新聞社)発刊 |
| 講談社文庫(講談社)発刊 70冊 | |
| 1972 | 新潮文庫コンピュータ組版開始 |
| 1973 | 旺文社文庫函からカバーへ |
| 中公文庫(中央公論社)発刊 | |
| 秋元文庫(秋元書房)発刊 | |
| 鳩の森文庫(鳩の森書房)発刊 | |
| 岩波文庫星1つ70円 | |
| 1974 |